ジェニン難民キャンプ現地ルポ イスラエル軍が街を破壊、住民はさらなる攻撃におびえる
トム・ベイトマン中東特派員、パレスチナ・ジェニン

パレスチナ自治区のジェニン難民キャンプの雰囲気は、私が別の場所で感じたものと似ている。イスラエルと戦争をした後のガザ地区で感じたものだ。
しかし、ここはイスラエルが占領するヨルダン川西岸地区だ。力学は大きく違う。そして今、はるかに危険なものへと急速に悪化しているように思える。
イスラエル軍はこの難民キャンプに、ここ20年間で最大の攻撃を加えた。破壊の規模は甚大だ。
何百人ものイスラエル兵が3日朝、難民キャンプに入り、空からはドローン(無人機)によるミサイル攻撃を行った。ヨルダン川西岸で空爆を実施したのは20年ぶりだった。道路に仕掛けた爆弾を除去するためとして、道路を掘り起こした。
イスラエル軍とパレスチナ武装勢力との間で、激しい銃撃戦も発生。イスラエル軍が撤退した4日夜まで続いた。
そしてようやく、2日以降で初めて安全な状況が訪れた。多くの住民たちは通りに出て、破壊の状況を自分たちの目で確認している。
住民らはがれきの上によじ登り、携帯電話で残骸を撮影している。そして、どの家が襲撃され、誰の息子が拘束され、死者はどこで倒れたのかなど、互いの経験を語り合っている。私に近づいて来た男性は、今年大地震に見舞われたトルコとシリアの写真を見ているようだと言った。


イスラエルのD9装甲ブルドーザーが通った道路の脇には、押しつぶされた車が放置されている。道路の舗装ははがされ、大きな塊となって至るところに転がっている。私たちは、がれきや砂、ほこりなど、道路の下にあったものを踏みしめながら歩いていく。
多くの家は水も電気もない。救援ボランティアが、ペットボトルの水を箱で運んでくる。数少ない掘削機を動かしている復旧作業員らもいる。住宅の屋上から倒れた木を撤去する作業では、木が1階の店のファサードの一部を切り取るように落下し、もう少しで私たちに当たるところだった。
イスラエル軍の機甲部隊は、パレスチナ武装勢力との激しい銃撃戦のさなか、一夜のうちに撤退した。5日は平穏が訪れているが、誰もがさらなる攻撃を恐れている。イスラエルは今回のような作戦を「テロ根絶に必要な限り」続けると宣言。一方、パレスチナ武装勢力は「勝利」を収めたと主張するとともに、報復を誓っている。
難民キャンプ内を進んでいくうち、葬列が動き出した。多くの人々が、3日以降に殺されたパレスチナ人12人の遺体を乗せた担架を担ぎながら、声を張り上げている。死者のうち4人は18歳未満だった。イスラエル側は、作戦では武装勢力を狙ったと説明した。

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葬列に次々と人が集まってくる。行進する人の中には、顔を覆った人もいれば、銃を手にした人、武装勢力「イスラム聖戦(PIJ)」のヘッドバンドをつけた人もいる。近くの建物では、ガザを支配する武装勢力「ハマス」の旗がはためいている。死者の母親や妻が待つ家に向かって葬列が進むなか、群衆に怒りが広がる。
しかし、銃器の誇示は、少なくとも堂々と人目にさらすものは、これまでの葬儀よりは弱い。
私はこの1年半、何度もジェニンに足を運んできた。若い世代の武装勢力が形成され、高齢化したパレスチナ指導層を拒絶する動きが出てきた。イスラエル軍によるジェニン襲撃が増えるなか、イスラエル軍を銃撃することもある。
この世代は、パレスチナ自治政府(PA)が自分たちの未来を売り渡し、イスラエルの軍事占領における警備会社のようなものになったと考えている。軍事占領を続けるイスラエルは、ヨルダン川西岸で入植地を拡大。パレスチナが将来国家を樹立するとしている土地に、国際法に違反して建物を建てている。


5日は銃声は減った。だが、フラストレーションは高まるばかりだ。パレスチナの若者らは夜間、PAの正式な治安部隊とも衝突した。ジェニンはすでに、限定的ながらも存在していた統制がすっかりなくなった都市となっている。
そしていま、ヨルダン川西岸における30年来の和平プロセスの制度的な残骸が、破滅の試練を迎えている。
イスラエルは、「テロが潜む都市」のジェニンで掃討を続けるとしている。一方、パレスチナ武装勢力は、活動の強化を宣言している。イスラエルのテル・アヴィヴでは4日、車を突入させ刃物で刺す襲撃事件が発生し、イスラエル人7人が負傷した。PIJは、ジェニンで起きていることへの「最初の反応」だとした。
暴力の拡大は、政治的地平が崩壊するさらなる兆候だ。ヨルダン川西岸地区のパレスチナの都市では、イスラエル軍がより激しい攻撃や治安取り締まりを行うのではないかと恐れる人々もいる。ハマスが統治し、イスラエルが封鎖しているガザ地区の住民らの苦境に似た状況が訪れるのではないかと、人々は心配している。
パレスチナ人の中には、国際的に承認されたパレスチナ指導部を拒絶し、武装抵抗を支持する人が増えている。一方イスラエルでは、史上最も過激な政権が続いている。その政権は、ユダヤ人の「排他的権利」を全土に拡大すると誓っている。










