【解説】 トランプ氏の性的暴行認めた評決、政治的にどう影響するのか

アンソニー・ザーカー北米担当編集委員

Donald Trump

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画像説明, ドナルド・トランプ前米大統領

米ニューヨークの裁判所の陪審がドナルド・トランプ前大統領について、E・ジーン・キャロル氏に性的暴行をし、名誉を毀損(きそん)した可能性が高いと結論づけた。この評決は彼にとって、今後続くであろう政治的および法的な打撃の最初なのかもしれない。

今回の評決は、共和党内のトランプ氏の支持基盤に影響を及ぼさないかもしれない。彼の支持者らはアメリカの法制度に懐疑的で、どんな逆境でもトランプ氏を支えてきた。それでも、長期的には痛手となる可能性がある。

ある共和党上院議員2人の反応は、来年の大統領選でホワイトハウス復帰を目指すトランプ氏にとってのリスクを浮き彫りにしている。

ジョン・スーン上院議員(サウスダコタ州)は、今回の評決を「蓄積的な効果がある」とした。「人々はこうしたドラマに付き合うのか決断を求められる」。

ジョン・コーニン上院議員(テキサス州)は、「彼が当選できるとは思わない」と厳しい見方を示した。「個人的な支持基盤だけで大統領選の本選挙で勝てない」。

結局のところ、今回の訴訟では、トランプ氏の最大の敵は自分自身だったのかもしれない。

裁判で中心的な役割を果たしたのは、トランプ氏の宣誓証言だった。その中で彼は、卑下しているようにも、守りに入っているようにも見えた。女性の性器をつかんだという悪名高い自慢話(テレビ番組「アクセス・ハリウッド」で報じられた)については、有名人の権力をめぐる歴史的真実を「幸か不幸か」反映していると説明した。

「幸か」?

トランプ氏は、キャロル氏のことも、トランプ氏から性的暴行を受けたと証言した別の女性のことも、「好みではない」としていた。彼はこの説明を、女性弁護士による宣誓証言の収録でも繰り返した。

このことは、トランプ氏が性的暴行を犯し得る人物なのか、または少なくとも告発者より信用できる人物なのかを判断するよう求められている陪審に、まさに間違った態度を見せることとなった。

E Jean Carrol

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画像説明, E・ジーン・キャロル氏

加えてトランプ氏は、「好みではない」という自らの主張を自分で真っ向から否定することになった。写真に写ったキャロル氏を、前妻のマーラ・メイプルズ氏と取り違えたのだ。

2020年大統領選では、郊外に暮らす有権者、特に女性たちが、トランプ氏の特徴である威勢のいい政治を嫌った。今回の陪審の評決は、それらの有権者をトランプ氏からいっそう遠ざけることにしかならない。

トランプ氏は今回の評決に対し、自身のソーシャルメディアで反発している。恥ずべき評決だと批判し、「この女性」は誰なのまったく知らないと主張した。彼の弁護士は、彼が控訴する方針だと裁判所の外で記者団に語った。

大統領選への影響

トランプ氏はこれまで、来年の大統領選でのホワイトハウス奪還に向け、かなり統制のとれた運動を展開してきた。予備選の主要州で、草の根の支持を計画的に積み上げてきた。ライバルのロン・デサンティス・フロリダ州知事には、激しい集中攻撃を加えている。ニューヨーク州での起訴も、名誉なことだとうまく支持層に売り込んでいる。

だが、性的暴行と名誉毀損を認めた評決は、共和党内の対立候補に攻撃材料を与えた可能性がある。トランプ氏のライバルたちが、キャロル氏の弁護士がしたように、トランプ氏を動揺させ、発信力を削ぎ、守勢に追いやることができれば、党を支配しているように思えても、自滅へと追い込めるかもしれない。

少なくとも今回のことは、大統領経験者をめぐる、また新たな前代未聞の事態となった。トランプ氏はすでに1度、起訴を経験しているが、今後もさらに続くかもしれない。

トランプ氏はこれまで、法的な懸念が持ち上がっても軽くあしらってきた。しかし、今回のニューヨークの陪審の決定は、単なる「捜査」にはできない方法でトランプ氏に打撃を与えた。一般のアメリカ国民で構成された陪審は、証拠を検討し、トランプ氏が間違いを犯したと判断した。

これは、トランプ氏が抱える他の法的な頭痛の種にとって、よい兆候とはいえない。連邦議会襲撃事件をめぐっては、ジャック・スミス特別検察官がトランプ氏の関与について調べている。トランプ氏がホワイトハウスを去った後の機密文書の取り扱いや、2020年大統領選でジョージア州の選挙結果を覆そうとした疑惑についても、調査が進められている。

それらの捜査が起訴へとつながっても、トランプ氏が証言台に立つ可能性は極めて小さい。同じことは、ニューヨーク州で起訴された事件についても言える。それでも検察は、キャロル氏の弁護士がしたように、トランプ氏の発言や過去の証言を最大限活用しようとするだろう。