【解説】 トランプ氏起訴、「34件の重罪」で何が明らかになったのか

アンソニー・ザーカー北米担当編集委員

Donald Trump arriving at court

画像提供, Reuters

画像説明, マンハッタン地区検察事務所前に到着したトランプ氏(4日午後、ニューヨーク)

ドナルド・トランプ前米大統領が刑事責任を問われることは、周知の事実だった。そして今回、彼が事業記録の改ざんをめぐる34件の重罪に問われていることが明らかになった。

ニューヨーク州で事業記録の改ざんは通常は軽罪の扱いだが、他の犯罪の隠蔽(いんぺい)を目的としたことから重罪の扱いにしたと検察は説明している。有罪となれば、刑務所で服役する可能性がある。

ニューヨーク・マンハッタン地区検察のアルヴィン・ブラッグ検事は、前大統領の起訴について、「この事件は、多くのホワイトカラー事件と同様に、疑惑に満ちている」、「誰かが自分の利益を守るために何度も何度もうそをつき、私たち全員に適用される法律から逃れようとしているという、疑惑に満ちている」と述べた。

トランプ氏はすべての罪状について否認している。罪状認否を終えて裁判所を後にしたトランプ氏は、応じるべき事件など何もないと主張。「違法なことは何もしていない!」と、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。

しかし、違法行為の有無を決めるのは陪審員だ。以下、史上初の大統領経験者の起訴について、その内容を説明する。

全罪状が口止め料の支払い関連

トランプ氏は34件の第1級事業記録改ざん罪に問われている。

トランプ氏をめぐっては、2016年大統領選まで2週間を切った時期に、「弁護士A」に指示して「女性2」に13万ドルを支払い、同氏との不倫とされる関係について発言させないようにした疑惑が持ち上がり、捜査が進められていた。こうした事案での金銭の支払い自体は合法だが、トランプ氏はそれを事業費として計上したとされる。

トランプ氏に対する罪状はすべて、この事業記録の改ざんに関係するもの。

起訴状では身元は伏せられているが、「弁護士A」はトランプ氏の当時の顧問弁護士マイケル・コーエン氏で、「女性2」は元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏(本名ステファニー・グレゴリー・クリフォード)のこと。

起訴状に添付された陳述書(Statement of Facts)の1行目には、検察側の主張が記されており、「被告人ドナルド・J・トランプは2016年米大統領選期間中、選挙権を持つ国民から不利な情報を隠すという犯罪行為を隠ぺいするため、ニューヨークでの事業記録を繰り返し不正に改ざんした」とある。

大統領在任中に改ざんした疑い

ニューヨーク州の大陪審による起訴は、コーエン氏が支払った口止め料が、どのように同氏に補填(ほてん)されたのかが焦点となっている。

トランプ氏は大統領就任後の2017年、ホワイトハウスでコーエン氏と面会した。その後まもない時期から10カ月にわたり、トランプ氏は自身の資産を扱う信託や、後には自分自身の銀行口座から、コーエン氏に小切手を振り出した。

これらの小切手は「弁護士費用」として記録されていた。しかし、コーエン氏によれば、実際は口止め料の補填だった。

検察側は、「トランプ・オーガナイゼーションが保管・管理していた支払記録は、偽のニューヨークでの事業記録だった。実際には委任契約は存在せず、弁護士Aは2017年に提供した法的サービスに対して報酬を受けていなかった。被告は自分や他人の犯罪行為を偽装するために、自身の事業の記録を改ざんした」としている。

軽罪から重罪へ

ブラッグ検事は、小切手による支払いが犯罪行為を支えるためのものだったため、トランプ氏がこれらの支払いの本質を偽ったのだと指摘している。口止め料の支払い自体は違法ではないが、大統領選の選挙運動に役立てるための支払いを公表しないでおくことは、連邦選挙資金法違反となる。

コーエン氏はダニエルズ氏への支払いを公表しなかったため、2018年12月、選挙資金法違反を含む複数の罪状で有罪となり、禁錮3年の実刑判決を受けた(すでに刑期終了)。

ブラッグ検事は、トランプ氏がコーエン氏に口止め料の補填をしていることから、トランプ氏はその犯罪行為に関与していると指摘。そのため、事業記録の改ざんはより重大な犯罪行為になるとしている。

トランプ氏の支持者たちは、これは法の拡大解釈であり、政治的な動機による起訴だと主張している。

「違法な計画を実行するため」

ブラッグ検事は大統領選期間中の口止め料の支払いについて、他に二つの例を挙げている。 これらの支払いは、トランプ氏がコーエン氏への支払いが2016年大統領選に影響を与えるための違法な試みの一環であることを認識していたという、検察側の訴えを裏付けるものだと検事は言う。

起訴状の添付文書では、「被告は、2016年大統領選に影響を与えるため、自分に関するネガティブな情報を特定し、口止め料を支払うことでその情報が公にならないようにし、被告の選挙戦での勝算を高めることを他者と画策した」と主張。「違法な計画を実行するために、関与した人物たちは選挙法に違反し、ニューヨークでのさまざまな事業体の事業記録に虚偽の内容を記載した」としている。

二つの例のうちの一つは、トランプ氏に婚外子がいると知っていたとするドアマンが3万ドルを受け取っていたというもの。もう一つでは、トランプ氏と不倫関係にあったと主張する2番目の女性が15万ドルを受け取ったとされる。トランプ氏は不倫関係を否定している。

ブラッグ検事によると、これらの支払いは、タブロイド紙「ナショナル・エンクワイアラー」および当時の発行人デイヴィッド・ペッカー氏によるものだった。ペッカー氏はトランプ氏に協力し、潜在的に同氏に不利にはたらく情報が表に出ないようにしていたという。起訴状では、ペッカー氏は報酬として、トランプ氏から大統領就任式への招待を受けたとされている。