日本政界の性差別に立ち向かう……東京・杉並の女性区長
シャイマ・ハリル東京特派員

画像提供, Mayor of Suginami YouTube channel
岸本聡子氏(48)は、東京23区の区長は孤独な仕事だと感じている。
岸本氏は昨年6月、杉並区で初の女性区長となった。元環境活動家で民主派の岸本氏は、わずか200票差で保守派の現職を破った。政治経験のない独立候補の勝利は衝撃的だった。
それ以来、岸本氏は日本の男性優位の政界に挑戦する姿勢を鮮明にしている。東京23区の女性区長は現在、岸本氏を含め3人しかいない。
「政界に女性が少ないことを国家の危機と捉えなくてはなりません」と岸本氏は言う。
「女性の政治家の割合は、75年前とほぼ一緒です。これはおかしい」
日本は世界3位の経済大国だが、ジェンダーギャップ指数では散々な結果が出ている。世界経済フォーラムが2022年7月に発表した最新の報告書では、日本は146カ国中116位だった。
主要7カ国(G7)に絞ると、日本はジェンダー格差問題への取り組みで最下位にいる。女性が首相になったことはなく、現在の内閣にはたった2人しか女性がいない。
私が初めて岸本氏を見かけたのは、区役所に自転車で通勤していた姿だった。平均的な日本の政治家はしないことだ。


岸本氏は、区長になって最初の数カ月間は荒波のようだったと話した。
「比較的若い女性にとって(この仕事は)自然と難しいものになりました」
「私は公務員出身でもなく、政治家でもありません。みんな私の話を聞いてはくれますが、簡単には納得してくれません」
「みんな」というのは、一緒に働く男性たちのことだ。杉並区では、区長の下の幹部職のほとんどを男性が占めている。
「気候変動や多様性、ジェンダー平等といった問題への取り組みが、古い政治、男性限定の会員クラブによる政治に阻まれています」
そのために自分やスタッフはもどかしい思いをしていると、岸本氏は述べた。
「私は政策について議論がしたいのに、区議会では多くの時間が、批判や個人攻撃で無駄にされてしまうのです」
<関連記事>

攻撃の大半は岸本氏のジェンダーに対するものだが、区長としての資質や、経験のなさにも及ぶ。何より、過去20年間ヨーロッパに住んでいたことを、外国に長くいすぎたと指摘されるという。
だが、岸本氏自身が最初に、自分は部外者だと認めている。そしてそれが彼女の強さだ。「私には他にない素質があります。日本社会を遠くから見てきました」。その上で、この「国際的な目」があるからこそ、日本の困難を、特に日本が抱えるあからさまな矛盾を、客観的に見られるのだと語った。
しかし、区長という仕事に燃え、物事を変える力を持っていても、後悔の念がよぎることがあると岸本氏は話した。「時折、『ここで何をしているんだろう?』と自問することがあります」。
今なお、女性は家事や育児、介護をすべきだという伝統的な社会通念が、女性の政界進出を非常に難しくしていると、岸本氏は付け加えた。
勇敢にも政治の道を選んだ別の女性も、ひんぱんにミソジニー(女性嫌悪)とハラスメント(嫌がらせ)に対処しなければならないと語る。
東京都町田市の東友美市議は、最近再選を果たし、2期目を務めている。
「身体的なハラスメントにまず一番びっくりしました」と、東氏は話した。選挙活動の初期には、不適切に体を触られることが多かったという。「ショックでした」。


「おじさんたちが罵声を浴びせてきたり、すごく近づいてきて街頭演説を邪魔されたりとか 。夜中に電話をかけてきて、今飲み会してるからすぐ来いって、夜中の12時とかに言われたりもしました。本当に男尊女卑っていうのがあるんだなって実感しました」
東氏はその後、女性の政治家や弁護士、研究員などが集う「女性議員のハラスメント相談センター」に参加した。
このセンターは非公開のオンラインセッションを開催しており、政治の道に進む女性たちのセーフティーネットを作りたいと考えている。
共同創設者で政治研究者の濵田真里氏は、多くの調査で女性政治家に対するハラスメントの蔓延(まんえん)が指摘されているものの、ほとんどの女性が声を上げるのに消極的なため、正確な数字を把握することは非常に困難だと話した。
「議員は公人というふうに日本では言われていて、人の前に立つ仕事なんだからハラスメントなんて我慢しろというふうに言われることが多いのです」と、濱田氏は述べた。
もう1人の共同創設者、田村真菜氏は、2022年の参院選で東京選挙区から立候補した。選挙活動中、3歳の息子を同行させてはいけないと言われたという。
「ベビーカーを押して歩いたり、手をつないで歩いたりするといけないというような状況もありました」。そうした行為はルール違反だと、田村氏は注意されたという。
「街頭に立っていて、『お前子供は産んでいるのか』とか、『3人とか産んでから出たらどうだ』みたいに男性から言われたこともありました」
「うまく付き合えばいいのにみたいなことを言われるので、私がだめなのかなと思うようになりました」


共同通信が今年1月に行った調査では、女性の政治家や指導者は、ジェンダー格差や性的嫌がらせを受ける可能性が男性よりも高いことが分かっている。
日本政府は常々、女性の政治参画促進に積極的ではないと批判を受けている。男性ばかりの内閣や与党・自由民主党がその一因だと指摘する声もある。
1955年から政権をほぼ握り続けている自民党は、2021年に党の主要会議に女性議員を招き入れる方針を示した。ただし発言は認めないという条件付きだった。
この直前には、自民党所属の森喜朗氏が、性差別発言をきっかけに東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長職を辞任した。首相経験者でもある森氏は、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」などと発言した。その後、発言について謝罪している。
杉並区長の岸本氏は、「自民党は日本のジェンダー不平等の現状について責任があります」と指摘した。「自民党はこの問題を優先しない。政治的意思がない。とても恥ずかしいことです」
岸本氏は自民党だけでなく、同党をながく政権にとどめてきた有権者にも責任はあるとする。
だが岸本氏は、こうした困難があっても、いつか日本に女性首相が誕生すると、前向きに考えていると話す。
「それが近い将来かはわかりませんが、希望をもっています。これ以上は悪くなりようがない。よくなっていくだけです」と、岸本氏は笑った。









