ウクライナ軍ヘリの戦闘、BBCが取材 コックピットにカメラ
オーラ・ゲリン、BBCニュース
戦場から生きて戻る最善の方法は、低空飛行を続け、地面に近づき、木の上ぎりぎりを飛ぶことだ。低すぎれば機関銃で撃ち落とされるし、高すぎれば敵の防空システムに捕捉されてしまう。
戦時下のウクライナのヘリコプター操縦士にとって、エラーは許されない。
ロマンさんに話を聞こう。
ロマンさんはシコルスキー旅団の数えきれないほどの戦闘作戦でヘリコプターを操縦し、その勇敢さで勲章を受けた。現在34歳だと教えてくれたが、名字は明かさなかった。
「標的に近いほど、低く飛ぶ。地面から1~2メートルほどの高さだ」と、ロマンさんはBBCの取材に答えた。
「標的を攻撃するだけでは足りない。安全に帰還しなくては、次の作戦のために搭乗員とヘリコプターを安全に戻さなくてはならない」
この1年、ロマンさんの操縦士仲間の中には、帰って来られなかった人もいた。
BBCは特別に、開けた場所にある小さな飛行場への立ち入りを認められ、ウクライナの空での戦いを取材した。ロシアがこの飛行場を特定すれば、主要な目標になってしまうため、取材地は明かせない。

我々はロマンさんがウクライナ東部の前線に出撃する際、カメラをコックピットに載せてもらった。ロマンさんのヘリコプターの後に2機が続き、灰色の空の下を移動し始めた。
眼下には、ジグザグに設置されたウクライナ軍の塹壕(ざんごう)と、放棄された村がある。
さらに、凍った湖の上をスケートしているように飛び、30分後には、80発ほどのミサイルを撃って戻ってきた。
ロマンさんは着陸する際、我々の頭上で、窓から手を振っているのが見えるほど低い位置を飛んでいた。ロマンさんは旅団の仲間の間で、難しい操縦をこなすことで有名だ。ソ連時代の古い航空機を乗りこなす、ウクライナのトップガンだ。
ロマンさんが操縦する「Mi-8」は、彼が生まれたころに製造された。重装甲や向かってくるミサイルを感知する現代の警告システムなどがない。毎回の作戦が、ロマンさんにとって最後となる可能性がある。
着陸のあと、ロマンさんは「もちろんリスクはある程度ある」と話した。
「私はただ、それについて考えていない。もし何かあっても私の問題ではなく、私の親族の問題だろうから」
冗談のようにも聞こえたが、ロマンさんの表情は目出し帽に隠れていた。

ロマンさんは我々に標的を明かさなかったものの、ロシア軍が包囲している東部の街バフムートの可能性がある。
「普通の作戦だ。タスクに100%集中するだけだ」とロマンさんは語る。「地上に自分を待っている仲間がいる。航空隊を呼ぶということは、本当に奮闘しているということだ」
ロマンさんは、攻撃を受ける側のロシア軍のことも考えないという。
「ロシア軍が戦争と共にやってきたなら、自分たちはウクライナを守るだけだ。我々は侵略者ではなく被害者だ。この戦争に勝つにはロシア兵を殺さなければならない。全員を殺す覚悟はできている」
ヘリコプターが着陸するとすぐに保守点検が入る。燃料や装備を補充し、次の飛行に備える。
ミサイルは人力で装弾される。その一つには、ロシア軍への乱暴なメッセージが刻まれていた。
数分後には、ロマンさんは新たな標的に座標を合わせ、飛び立った。
ウクライナが現在保有しているソ連時代の装備ではこの戦争に勝てないと、ロマンさんは語る。

シコルスキー旅団の報道官が、その意味を教えてくれた。
「運航設備の整った新しいヘリコプターや精密兵器、そして弾薬が必要だ。すべてが必要だ」
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はすでに、それらの設備から戦闘機に至るまでの供与を西側諸国に要請している。長引くかもしれない戦争で、求めるもののリストは長くなっている。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が1年前にウクライナ侵攻を始めた時、ロマンさんはコンゴ民主共和国の平和維持活動に従事していた。その元平和維持隊員は今、ロシアとの終わることのない紛争の危険を語った。
「我々の歴史を振り返るだけでも、常に隣国(ロシア)との問題を抱えてきた。ウクライナがこの戦いに勝っても、ロシアが変わらなければ、数年か数十年後かにまた攻撃してくるだろう」









