英首相、戦闘機供与の「可能性は排除しない」 ゼレンスキー氏の要請受け

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イギリスのリシ・スーナク首相は8日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が訪英し、戦闘機の供与を求めたことを受けて、「どんな可能性も排除していない」と語った。
ゼレンスキー大統領は、昨年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降で初めてイギリスを訪れた。スーナク首相と会談し、議会で演説した。
ゼレンスキー氏は、これまでの支援に感謝すると述べた一方で、供給が「底をつき始めて」おり、紛争の「膠着(こうちゃく)につながるかもしれないと警告した。また、戦闘機の供与を求めた。
これを受けスーナク氏は、ウクライナへの戦闘機の提供方法を検討するようベン・ウォレス国防相に命じたと、BBCのジョナサン・ビール防衛担当編集委員は伝えた。
英首相官邸によると、ウォレス氏は供与可能な戦闘機について調査しているという。ただ、「長期的な解決策」であり、パイロットの訓練には何年もかかる可能性があると、官邸は強調している。
イギリスは今回、ウクライナのパイロットが将来的に北大西洋条約機構(NATO)水準の戦闘機を操縦できるよう、訓練を提供すると発表した。
ゼレンスキー氏が英議会で戦闘機を要望
ゼレンスキー氏はこの日、首相官邸でスーナク氏と会談した後、議事堂のウェストミンスター・ホールで上下両院の議員らを前に英語で演説。「自由は勝利する」、「ロシアが負けるのは明らかだ」と述べ、イギリスはウクライナと共に「生涯で最も重要な勝利」の行進をしていると語った。
また、イギリスの「勇気」をたたえ、ウクライナへの支援によって「偉大な島国の精神と理想」を失っていないことが分かったと話した。
さらに、ボリス・ジョンソン元首相を名指しし、「ボリス、あなたは絶対に、絶対に無理だと思われていた時に、諸外国を団結させた。ありがとう」と語りかけた。
ゼレンスキー氏はまた、演説の途中で、リンジー・ホイル下院議長にウクライナの戦闘機パイロットのヘルメットを贈った。
ヘルメットには「私たちには自由がある。それを守るための翼を与えてください」と書かれていた。
その上で、「私はきょうこの議会を去りますが、強力なイギリスの戦闘機について、先にお礼を述べておきます」と締めくくった。
ジョンソン元首相はこの演説を受け、声明で「(ロシアの)プーチンを倒し、ウクライナに平和を取り戻すために必要な装備をウクライナに与えるべき時が来た。つまり、より射程の長いミサイルや大砲、もっと多くの戦車、もっと多くの戦闘機だ」と訴えた。

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ロシアの侵攻開始から1年がたとうとする中、西側諸国はウクライナへの支援をどう増強するか検討している。
イギリスはかねて、戦闘機の供与は「現実的ではない」としていた。しかし、訓練プログラムの拡大は、イギリスの対応の変化を示唆している。
イギリスはすでに、主力戦車「チャレンジャー2」を14台供与すると発表している。ゼレンスキー氏は演説の中で、「防衛面でのこの強力な一歩について、感謝しています、リシ」とスーナク氏に語りかけた。
英政府はこの日、ロシアへの新たな制裁を発表。IT企業や、ドローンやヘリコプターの部品などの軍事機器を製造する企業などを対象にした。
ゼレンスキー氏は演説で、「ロシアが戦争資金を調達する可能性がなくなるまで」制裁を続けるよう、イギリスと西側諸国に求めた。
下院議長のサー・リンジーはBBCのニュース番組に出演し、ゼレンスキー氏の演説中、ウェストミンスター宮殿は「非常に、非常に感動的な」空気に包まれていたと語った。
「ピンが落ちる音が聞こえるほどだった」、「みんなが涙を流していた(中略)あるベテラン議員と話をしたら、『涙が止まらなかった 』と言っていた」とも付け加えた。

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ゼレンスキー氏は議会での演説後、バッキンガム宮殿でチャールズ国王と会見した。
ゼレンスキーはその後、仏パリに移動。エマニュエル・マクロン大統領、ドイツのオラフ・ショルツ首相と会談する。
9日には欧州連合(EU)首脳会合に参加する予定。引き続き軍事支援の拡大を求め、ウクライナのEU加盟を要請するとみられている。

<解説>ジョナサン・ビール防衛担当編集委員

この日は、イギリスがウクライナのパイロットの訓練を支援するという約束から始まった。
しかし、ゼレンスキー大統領が戦闘機そのものを熱烈に要望した後、その約束は徐々に変わっていった。
スーナク首相は今やウォレス国防相に対し、イギリスがウクライナに戦闘機を提供する方法を検討するよう命じている。
英王立空軍(RAF)が持つ戦闘機のうち、理論的にウクライナに供与できるものは限られている。これには、旧型の戦闘機「タイフーン」20機も含まれる。
一方でイギリスにとってこれは、現金化に苦労する小切手を書くリスクでもある。
RAFは自軍内でも戦闘機パイロットの訓練が遅れている。また、古い戦闘機の保守の難しさなど問題は多い。
たとえ首相が戦闘機の供与を認めたとしても、実現には時間がかかるだろう。











