【解説】 イギリス王室と人種、イベントでの会話から気まずい問題があらためて
ショーン・コクラン、BBC王室担当編集委員

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2人の間の気まずい会話だったものが、たちまち英王室にとって非常に恥ずかしい公の失態となった。
バッキンガム宮殿がこれほど素早く対応したことは、いかに事態を深刻視しているかのあらわれだ。
黒人の慈善団体代表がバッキンガム宮殿で、「本当は」どこから来たのかしつこく質問されたと、ソーシャルメディアにその内容を投稿してから数時間もしないうちに、王室側の当人は辞任し、王室は謝罪した。
会話が交わされたイベントは本来、前向きな集まりだったはずだ。家庭内暴力対策をテーマとして掲げるカミラ王妃は、バッキンガム宮殿に約300人を招待し、自分の取り組みへの支援を呼びかけた。
問題の会話をその場で聞いていた人によると、招待客のンゴジ・フラニ氏と、王室で働く女性(後にレディ・スーザン・ハッシーと確認された)とのやり取りは当初、気楽な「おしゃべり」で始まったのだという。
なぜ気楽な「おしゃべり」がこれほどの問題になってしまったのか。それは、黒人女性が自分はイギリスだと答えたにもかかわらず、質問した側が、その答えを受け入れようとしなかったように見えることからきているようだ。相手が「本当」は、イギリス以外のどこかから来たに違いないという思い込みが、質問する側にあったように見える。
黒人女性が、「本当」にイギリス出身だなどあり得ないという誤解が、根底にあったようだ。
そしてなぜこれがひどく悪質かというと、またしてもイギリス王室について難しい疑問が出来してしまうからだ。この王室が、多様な現代イギリスを反映することができるのかと。
人の帰属やアイデンティティーについて、このやりとりは痛いところを突いてくる。バッキンガム宮殿が堅苦しくてよそよそしい場所のような印象を与える。

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人種と人種差別、インクルージョン(包摂<ほうせつ>性)と多様性は、王室にとって扱いが難しいテーマになってしまっている。ハリー王子の妻、サセックス公爵夫人メガン妃が、王族や王室職員には偏見があったと指摘するようになって以来、とりわけそうだ。
そして、今回の問題のタイミングはかなり最悪だ。
レディ・スーザン・ハッシーは、ウィリアム皇太子のゴッドマザー(後見人、実の親に次いで親に代わり子供の面倒を見る人の意味)でもある。そのウィリアム皇太子は米ボストンに到着したばかりだ。環境関連の賞授与のため渡米した皇太子は、現代的で共感力に優れたイギリス王室の代表として、国際舞台での役割を確立しようとしている、まさにその矢先なのだ。
今回の旅は皇太子となって初の外国訪問で、人種問題が話題の中心になってしまうのは避けたいはずだ。皇太子の広報担当は、問題となった発言を皇太子が容認しないことを強調した。
そして王室もこの間、自分たちは多様性と包摂性を支持すると、つとめて公の発言を繰り返している。
チャールズ国王は、「さまざまなコミュニティーが集まるコミュニティー」としてのイギリスを反映した治世を目指し、多様性から力を得たいと発言している。
最近では、その功績をたたえる「メリット勲章」を与えられたほとんどが、イギリスでは人種的マイノリティーにあたる人たちだった。
ハッシー氏は長年にわたり故エリザベス女王の側近だったが、カミラ王妃の王室改革で「lady-in-waiting」と呼ばれたその役職は廃止され、代わりに王妃は「Queen's companions」と呼ばれる「コンパニオン」の補佐を受けることになった。この中でハッシー氏は、「lady of the household(王室付きの婦人)」という肩書を得ていた。

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ハリー王子とメガン妃のドキュメンタリー・シリーズは来週にも、米配信大手ネットフリックスで公開される。王室内の人種差別について議論再燃のきっかけになるのか、大いに注目されるだろう。
昨年3月に放送された米人気司会者オプラ・ウィンフリー氏によるインタビューで、王子夫妻は自分たちの子供が生まれる前、肌の色はどうなるのか疑問を口にした王族がいると述べた。これが誰だったのかは、多くの憶測を呼んでいる。
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ハリー王子とメガン妃は、人種差別と闘う取り組みが評価され、来週にもニューヨークで賞を得ることになってる。
メガン妃は今年夏のインタビューで、公務につく王族の一員として自分が何を経験したか、まだまだ明らかにしていないことがあると示唆する発言をした。
米サイト「The Cut」に対してメガン妃は、「許すことは本当に大切だと思う。ずっと許さないでいる方が、エネルギーがたくさんいる」と述べた上で、「それでも許すにもたくさんの努力がいる。私は本当に自分から努力をしてきた。特に自分は何を言ってもかまわないのだと承知しているだけに」と話した。
チャールズ国王は、自分が引き継いだ王室という制度を刷新しようとしている。今回の宮殿での出来事から、その取り組みは緊急を要することが、あらためて明らかになった。










