ジョコヴィッチ選手、他の大会には出られるのか 大記録の樹立が目前

ジョナサン・ジュレイコ、BBCスポーツ(豪メルボルンパーク)

Novak Djokovic

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画像説明, ジョコヴィッチ選手は昨年の全豪オープン男子シングルスで、史上最多9回目の優勝を果たした

テニスのノヴァク・ジョコヴィッチ選手(34、セルビア)は、4大大会(グランドスラム)男子最多優勝回数の記録を残して選手生活を終えたいという強い希望を、明確にしてきた。

17日開幕の全豪オープンでは史上最多21回目の優勝がかかっていたが、オーストラリア政府はジョコヴィッチ選手の査証(ビザ)を取り消し、記録樹立の可能性はなくなった。

今回の騒動は記録以外に、新型コロナウイルスのワクチン接種に消極的なジョコヴィッチ選手などが今シーズン、どうなるのかという問題も生んでいる。

ワクチン未接種のままなら、オーストラリア以外の国もジョコヴィッチ選手の入国を認めないのか? 他のグランドスラムでも彼はプレーできないのか? その状態はいつまで続くのか?

全豪オープンを9回制しているジョコヴィッチ選手の将来は、どうなっていくのか?

他の国でもプレーできなくなる?

世界ランキング1位のジョコヴィッチ選手はこれまでグランドスラムで20回優勝しており、ロジャー・フェデラー選手(40、スイス)、ラファエル・ナダル選手(35、スペイン)と並んで男子最多となっている。

豪メルボルンパークで開かれる全豪オープンで10回目の優勝を果たし、長年のライバルたちに差をつけることを狙っていたが、それは不可能になった。

ただ、今後ほかのグランドスラムでもプレーしない可能性は極めて低い。

ナダル選手が今回の全豪オープンで2009年以来の優勝を果たし、一歩先に出ることもありうる。一方、フェデラー選手は長期にわたる膝のけがで全豪を欠場している。

では、ジョコヴィッチ選手はオーストラリア以外の国に問題なく入国できるのだろうか。

ナダル選手が指摘するとおり、ジョコヴィッチ選手はワクチンを接種すれば、何の問題もなくなる。

国によっては、入国する外国人にワクチン接種を義務づけている。ワクチン検査の陰性結果を提示し、到着直後に一定期間の隔離に入ることを条件に、未接種者の入国を認めている国もある。

ジョコヴィッチ選手は例年、全豪オープンが終わると数週間の休養を取り、3月に米インディアンウェルズとマイアミで開かれるATPマスターズ大会でツアーに復帰してきた。

米国務省によると、同国に入国する米国民以外に対しては、ワクチン接種の完了が義務付けられている。

同省は、「アメリカに航空機で入る外国籍の人は、一部の例外を除き、アメリカ行きの航空機に搭乗する前にワクチン接種を完了し、接種証明を提示する必要がある」としている。

一部の例外には、「COVID-19のワクチン接種が医療上の禁忌だと確認されている」人や、入国がアメリカの国益にかなう人が含まれる。

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マイアミの大会が終わると、ヨーロッパのクレーコートシーズンが始まる。最初の主要大会はモナコ・モンテカルロで開かれる。ジョコヴィッチ選手は昨年、全豪オープンを制覇した2カ月後に、モンテカルロでシーズンを再開した。

モナコの現在の規定は、ワクチン未接種者について、入国の11日~6カ月前にPCR検査で陽性となったことが証明できれば入国できるとしている。しかし証明できない場合は、一定期間の隔離を満了しなければならないとしている。

モンテカルロの後は、イタリア・ローマとスペイン・マドリードのマスターズ大会を経て、5月下旬にフランス・パリで開かれる全仏オープンで、クレーシーズンは最高潮を迎える。

イタリア、スペイン、フランスには、ワクチン未接種者はさまざまな事情で入国が可能だ。PCR検査や抗原検査によって入国は可能になるが、隔離は期間いっぱい実施される可能性がある。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は最近、国内のワクチン未接種者の生活を困難なものにしたいと、下品な言葉を使って表明した

この発言は、渡航規制よりもフランス国内での日常生活におけるルールに関連したものだ。だが、今年2つ目のグランドスラムである全仏オープンに出場するうえで、ジョコヴィッチ選手が直面する可能性のある問題を示唆していると言える。

ただ、フランスのロクサナ・マラシネアヌ・スポーツ相は最近、同国のスポーツ選手に対してワクチン接種を義務付ける新たな法律は、外国人には適用されないとの考えを示した

ウィンブルドンには出場する?

ジョコヴィッチ選手は昨年、英オール・イングランド・クラブで開かれたウィンブルドンで6回目の優勝を飾った。

今年のウィンブルドンで参加選手に規制が実施されるとして、それがどのようなものになるのか、開幕まで6カ月を切ったばかりのいま正確に言うことはできない。

パンデミックはまだまだ変化し、その影響は渡航や大規模なスポーツ大会に及ぶだろう。

全豪オープン主催者は、参加選手にワクチン接種を義務付けた。ただ、接種免除を申請し認められればその限りではないとした。ウィンブルドンでは、英政府の関連ガイドラインに沿って、規制が設けられるとみられている。

イングランドには現在、外国からのワクチン未接種者も入れるが、10日間の隔離を完了する必要がある。さらに、出発前の検査での陰性とされ、到着後2日目と8日目のPCR検査でも陰性と判定されなくてはならない。

隔離期間を短縮したい人にとって、検査結果によって解放されるこの仕組みは、なおも選択肢の1つとなっている。

ボリス・ジョンソン英首相は、ジョコヴィッチ選手が今夏、ウィンブルドンでのプレーが認められるかと問われると、「オーストラリア当局が自ら解決するのが重要だ」、「私がノヴァク・ジョコヴィッチについて言えるのは、私はワクチンを信じており、(ワクチン接種は)素晴らしいことだと思っているということだ」と述べた。

再びオーストラリアでプレーする?

ジョコヴィッチ選手は以前から、オーストラリアと、「ハッピースラム」の呼び名を掲げる全豪オープンへの愛情を表明してきた。

9回優勝という相性の良さが大きな理由だ。ジョコヴィッチ選手は昨年、会場のメルボルンパークについて「地元のように感じている」と述べた。同パークには毎年、セルビアから多数の応援者が訪れる。

ビザ取り消しが10日にいったん覆ると、ジョコヴィッチ選手はオーストラリアでプレーすることについて、「いつだろうと光栄であり名誉だ」と話した。

しかし今回の出来事により、今後オーストラリアで再びプレーできるか、不透明となっている。

ジョコヴィッチ選手は理屈の上では、ビザ取り消しから3年間、入国禁止となりうる。3年後、彼は37歳になっている。

一方でオーストラリアのスコット・モリソン首相は17日、ラジオ番組に出演した際、「正しい状況のもとであれば」、法律が定める3年後より早くジョコヴィッチ選手の入国が許可される可能性があると語った。これは、同選手が来年にも全豪オープンへの出場が認められる可能性があることを意味している。

豪との関係はどうなる?

ジョコヴィッチ選手は昨年の全豪オープンで優勝後、センターコートで観客に向かい、「みなさんのことを毎年、ますます大好きになっている。この恋愛は続く」とスピーチした。

ジョコヴィッチ選手が国外退去を免れ、17日にコートに立っていたら、メルボルンパークのファンの反応はどのようなものだったのか、興味深いところだった。

世界的にもかなり厳格なロックダウンに耐えてきたオーストラリア国民には、怒りが広がっている。

厳しい批判の矛先は、全豪オープン主催者と政治家にも向けられている。

オーストラリアテニス協会のクレイグ・タイリー最高経営責任者(CEO)は、ジョコヴィッチ選手と強固な関係を築いてきた。今回の件では、同協会としてジョコヴィッチ選手のワクチン免除の資格獲得を助けたことはないと、同選手がメルボルンに到着する前に述べていた。

同協会をめぐっては、豪政府から昨年11月に、過去の新型ウイルス感染はワクチン免除の要件には当たらないと言われていたとする疑惑が浮上した。

Craig Tiley and Novak Djokovic after the Serb won the 2021 Australian Open

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画像説明, オーストラリアテニス協会のタイリー最高経営責任者(左)とジョコヴィッチ選手

豪ヴィクトリア州のジャシンタ・アラン州首相代理は先週、オーストラリアテニス協会とタイリーCEOが連邦政府の見解について、州政府に伝えていなかったと主張した。

批判を浴びたタイリーCEOは、「変化する環境」の中で「食い違う情報」が出て、混乱が起きたと述べた。そして、オーストラリアテニス協会がワクチン免除を求める選手たちを意図的に惑わしたことはないと訴えた。

同国で移民問題に取り組むデイヴィッド・プリンス弁護士は、今回の件で当局が「面目丸つぶれ」になったと述べた。

「オーストラリアテニス協会、ヴィクトリア州政府、オーストラリア連邦政府の対応は、総体として非常にまずく見える」