【東京五輪】 メダルレースの尺度を変えると……アメリカは15位に
ロビン・レヴィンソン=キング、BBCニュース(トロント)

画像提供, Getty Images
東京オリンピックのメダル獲得レースは今回も、アメリカや中国といった大国が上位を占め、1位はアメリカだった。しかし、各国の人口や経済力を変数として考慮した場合、順位はどうなるのだろうか。
オリンピックが終わり各国が獲得したメダルを数えるたびに、そこには強い既視感がつきものだ。特定の国が決まって大量にメダルをとる。アメリカ、中国、ロシアだ。東京オリンピックも同じだった。
アメリカは、金メダル39個を含むメダル総数113個で、トップだった。
順位

では、アメリカなど一部の国がメダルを独占する一方で、それ以外の国は下位になってしまうのは、何が理由なのか。エコノミストやデータ・オタクの間では諸説ある。
「大事なのは人口と収入レベルと政治体制だというのは、今でも明々白々だ」と、五輪予想を研究する英リヴァプール大学のエコノミスト、デイヴィッド・フォレスト教授は言う。
国の人口が大事なのは、競技人口が多いほど優れた選手が出る率が高くなるからだと、フォレスト教授は説明する。
「世界的なアスリートになる資質を持って生まれる人はとても少ない。それは明らかだ」
たとえば、人口63万3622人のルクセンブルクを見てみる。7種目に選手12人を送り込み、メダルは取れなかった。
一方で世界3位の人口規模(約3億2800万人)のアメリカは、35種目に選手613人を送り込み、メダル獲得数はトップだった。
人口規模よりもはるかに好成績を出す国もある。BBCは、国の人口100万人あたりのメダル獲得数を比べた、従来とは違うメダル・ランキングを作ってみた。
この数え方でいくと、人口わずか3万3000人超の欧州の小国サンマリノが、獲得したメダルわずか3個でも、ランキング1位になる。一方のアメリカは、この尺度では20位以内にも入らず、60位になる。

ただし、人口が多いというただそれだけでは、メダルレースに必ずしも勝てるわけではない。
「とても貧しい国の場合、人口という潜在能力を、国際舞台での実際の競争力に転換することができない」と、フォレスト教授は言う。
「そもそも国民がスポーツに参加できなければならない。たとえば、競泳の素晴らしい才能を生まれつき持つ人がいて、あとはその能力を引き出すだけだったとしても、国が貧しければプールがない」
貧しい国が勝つのは、たとえばレスリングなど低コストの競技になりがちだと、教授は言う。一方で、裕福な国は人口規模にかかわらず、馬術やセーリングなどで活躍する。
国民の平均所得を検討要素に加えると、(メダルレースで2位と3位だった)中国とロシアは、実はアメリカの成績を上回ったことになる。この別バージョンの順位では、1位は中国、2位はロシア、3位はケニアだ。
そして、いつもならメダル順位1位のアメリカは、この指標を使うと15位になる。

文化的、そして政治的要因も影響する。フォレスト教授によると、旧ソ連圏の諸国は、かつての共産党政権が構築した強固なスポーツインフラが残っているため、有利な傾向にある。
英連邦の国々も、国の規模や経済力に対して比較的、好成績を残しがちだ。これはおそらく、イギリスが現代スポーツ発展の先駆者だったからだろうと、フォレスト教授は言う。イギリスは現代のスポーツ競技を開発すると共に、スポーツ競技への熱意を世界中にもたらした。
ほとんど常にメダル数でトップテンに入るオーストラリアが、その典型例だ。
国がどの競技に選手を送り込むかも関係する。
インドではクリケットが国民的スポーツだが、クリケットはオリンピック競技ではない。インドではオリンピック競技でもあるホッケーもさかんだが、それだけでは男子チームに1つ、女子チームに1つと、最大2個のメダルしかとれない。一方、体操や競泳や陸上など個人種目が多い競技なら、選手1人につき複数のメダル獲得が可能だ。
「一般論として、チーム競技に熱心でもメダル数という意味ではあまり役に立たない」と、フォレスト教授は言う。
データ分析会社ニールセン・グレースノートのスポーツ分析責任者、サイモン・グリーヴ氏は、オリンピックのメダル個数予測が厄介なのは、こうした様々な要因がからみあうからだと話す。人口や人口当たりの国内総生産(GDP)などといった変数だけを使うと、その国のトップアスリートの活躍を過小評価してしまいがちだ。
どの選手が好成績を残すかを予測するには、過去の成績の方が判断材料としてはるかに有益だ。とは言えそれも、大ざっぱな見積もりにしか過ぎない。
「どの国が急成長しているか、あるいは急速に衰退しているかが、拾えないし、それがこの分析で特に面白い部分だと思う」と、グリーヴ氏はBBCに話した。
誰がオリンピックで勝つのか的確に予測するため、グリーヴ氏は選手の過去の成績だけでなく、どの国が前回五輪から他の国際大会でどういう成績を残したかも参考にする。
そうすることでグリーヴ氏は、実はインドが自己ベストの記録を実現すると予測していたし、その通りになった。獲得メダル数の順位で、インドのこれまでの最高記録は、2008年大会の51位だった。それが東京では、インドは33位を達成したのだ。







