ジーンズをはいたから……インドで17歳少女が死亡 親族が殴った疑い
ギータ・パンディ、BBCニュース(インド・デリー)

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インドでは最近、少女や若い女性が家族から残忍な暴行を受けたという事件が複数報じられ、大きな注目を集めている。これらの事件は、少女や女性にとって自宅がいかに危険な場所かを浮き彫りにしている。
インド北部ウッタルプラデシュ州で7月半ば、17歳のネハ・パスワンさんが親族に殴打されて死亡したようだという報道があった。ネハさんがジーンズをはいているのが気にくわないというのが理由だったという。
母親のシャクンタラ・デヴィ・パスワンさんは、自宅でネハさんが服装をめぐり口論となり、祖父やおじから棒で激しく殴られたと、BBCヒンディー語に語った。ネハさん一家が暮らすデオリア地区サブレジ・カルグ村は、ウッタルプラデシュ州で最も開発が遅れている地域の1つ。
「娘は丸一日、宗教的な断食をして、夜になるとジーンズをはいて儀式を行いました。祖父母が娘の服装を指摘すると、ネハは『ジーンズははくために作られたものだから、私ははいてるの』と言い返したんです」
その後、口論がエスカレートして暴力に発展したと、母親は主張している。
ネハさんが意識を失って倒れていると、義理の両親が電動三輪車を手配してネハさんを病院へ連れていくと申し出たという。
「私は同行させてもらえなかった。なので、自分の親類に知らせて、この地区の病院を探してもらいました。でも娘は見つからなかった」
翌朝になると、同地域を流れるガンダック川に架かる橋に少女の遺体が吊るされているという情報が入った。身元を調べたところ、ネハさんの遺体だと判明した。
警察はネハさんの祖父母、おじ、おば、いとこ、車の運転手ら10人を、殺人と証拠隠滅の容疑で訴追した。容疑者側の言い分は明らかになっていない。

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警察幹部のシュリヤシュ・トリパティ氏がBBCヒンディー語に語ったところによると、ネハさんの祖父母とおじ、車の運転手を含む4人が逮捕され、取り調べを受けている。残りの容疑者についても行方を捜しているという。
パンジャブ州ルディアナの建設現場で日雇い労働者として働く、ネハさんの父親アマナート・パスワンさんは、事件を知り、自宅に戻った。父親は、ネハさんら子供たちを学校に通わせるために懸命に働いていたと語った。
母親のシャクンタラ・デヴィさんは、ネハさんは警官になりたがっていたが、「娘の夢はもうかなわない」と述べた。
また、義理の両親がネハさんに対し、地元の学校で勉強するのをやめさせようとしたり、インドの伝統服ではない服装を頻繁に叱っていたと主張した。
ネハさんはモダンな装いが好きだったという。家族がBBCに見せてくれた2枚の写真には、ロングドレス姿のネハさんと、ジーンズにジャケットを着たネハさんが写っていた。
活動家たちは、家父長制が根付いた社会では、家庭内での女性や少女に対する暴力が深くはびこり、家の年長者が暴力を容認していることが多いと話す。
働き手や跡継ぎとして男児の誕生が好まれるインドでは、胎児の性別が女と分かると堕胎されたり、差別やネグレクトの被害を受けるなど、少女や女性は深刻な脅威に直面している。家庭内暴力が蔓延(まんえん)しているほか、1日に平均20人の女性が結婚持参金が不足していることを理由に殺害されている。

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インドの小さな町や田舎では、女性や少女は厳しい制約の中で生活している。村のトップや一族の家長が女性たちが何を着て、どこへ出かけるのか、あるいは誰と話していいのかを指示する。そして、指示を守らなかったとされれば、挑発的だと罰を受けることになる。
家族による少女や若い女性に対する数多くの残忍な仕打ちが報じられ、インドに衝撃が走っている。こうした事件の中に、ネハさんのような服装が理由になった事件があっても不思議なことではない。
先月には、ウッタルプラデシュ州で20歳の部族の女性が、父親と3人のいとこに殴られている様子をとらえた衝撃的な動画が浮上した。
怒りの声を受け、警察は4人を起訴した。女性は「虐待」を受けていた嫁ぎ先から逃げ出し、「罰を受けていた」という。
この事件の1週間前には、隣のダール地区で、男性のいとこと電話で話したとして少女2人が家族から容赦なく殴られたと報じられた。
この事件をとらえた複数動画には、少女が髪をつかまれて引きずられ、地面に投げつけられる様子や、家族から棒や木の板で殴られる様子が映っていた。この動画が拡散されると、警察は7人を逮捕した。
先月にも同様の事件が起きた。グジャラート州で10代の少女2人が携帯電話で話していたことを理由に、親族を含む15人の男に殴られたと警察が公表した。
ジェンダー問題の活動家ローリー・シヴァレ氏は、「21世紀に、ジーンズをはいたり携帯電話で話したりしただけで少女を殺害したり暴行を加えたりするなんて衝撃的」だと話す。
そして、家父長制は「インド最大の問題の1つ」とした上で、政治家や指導者、インフルエンサーが性差別的な発言をして悪例となることが多く、男女平等のメッセージがコミュニティや家庭にまで浸透していないと指摘する。
「政府は少女の立場を優先すると言い、彼女たちの福祉のための壮大な計画を発表しているが、現場では何も変わっていない」
欧米では、家庭内で危険にさらされる子どもや女性はシェルターに移されたり、里親に引き渡される。
「インド国内にはシェルターや危機管理センターがほとんどないし、その大半の運営状況はかなりひどく、誰もそこに住みたいとは思えない状況です。政府はもっと資金を投入して、施設の環境を改善する必要があります」と、シヴァレ氏は言う。
「ただし、少女たちにもっと自分自身の権利を自覚させることが、唯一の長期的な解決策だ」
(取材:インド・デオリアから、ラジェシュ・クマール・アーリャ、BBCヒンディー語)










