欧州のワクチン接種、何がうまくいっていないのか

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欧州で新型コロナウイルスのワクチン接種が遅れ、不満が噴出している。欧州連合(EU)加盟国は、批判の矛先をEUへと向けている。欧州で一体、何が起きているのか?
欧州ではワクチン接種をめぐり、遅れや供給トラブル、EUと英製薬大手アストラゼネカとの対立が生じている。
こうした状況を受け、EUは域内で製造されたワクチンについて、域外への輸出規制を強化する可能性があると警告。「加盟国の人々を守るために必要な行動は何でもする」と表明している。
EUのワクチン計画
EUは加盟27カ国すべてに行き渡るよう、ワクチンの購入を調整している。国の規模や購入力に関係なく、同じ条件でワクチンを入手できるようにする。
EUの行政執行機関である欧州委員会は、この方法によって加盟国間の競争を防止できるとしている。また、大量購入の交渉を通してコスト削減を実現できると説明している。
購入したワクチンは、人口に応じて各国に配布する。
アストラゼネカとの対立
ワクチン製造会社のひとつであるアストラゼネカはこのほど、供給に問題が生じていると発表した。EUは受け取る量が減ると知り、同社を批判した。
イギリスとスウェーデンの企業が合併してできたアストラゼネカは、ベルギーとオランダにある工場で製造面の問題が発生したことが、供給に影響していると説明している。
欧州医薬品庁(EMA)は今月、英オックスフォード大学が共同で開発したアストラゼネカのワクチンを認可する見通しだ。EUは昨年8月に同社と、3億回分の供給を受ける契約を結んでいる。

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アストラゼネカのパスカル・ソリオ最高経営責任者(CEO)は、ワクチン生産について、「想定より2カ月遅れている」と説明。EUが契約の決断を遅らせたことで、ワクチンのサプライチェーンの不具合を解決する時間が短くなったと付け加えた。
ソリオ氏はまた、イギリスとの契約はEUより3カ月早く結ばれたため、問題解決の時間が多かったと述べた。
欧州委員会のステラ・キリアキデス保健担当委員は、EUとアストラゼネカの契約について、「どの国も、イギリスも、先に締結したからといって優先されるとは明示していない」と主張。イギリスにあるアストラゼネカの2工場も、ワクチンを「供給しなければならない」と訴えた。
EUは、域内で製造されたワクチンの輸出規制を強化する可能性をちらつかせている。イギリスに供給されている米ファイザーのワクチンはベルギーで製造されているため、この動きはイギリスにも影響が及びかねない。
EUは昨年3月から約2カ月、新型ウイルス対策の個人用防護具の輸出を規制した。加盟国が十分な量を確保できるよう、域外への販売には許可が必要だとした。
ファイザーのワクチンは?
EUは昨年12月、ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンを3億回分購入することを承認した。しかし製造会社側は、サプライチェーンに問題が発生し、昨年末までに約束した1250万回分を供給できなかった。
ビオンテックのウグル・サヒン最高経営責任者(CEO)は、独誌シュピーゲルに、EUが誤って数種類のワクチンがすぐにも完成すると考え、指示を出したことで遅れが生じたと説明。ビオンテックは製造能力をアップさせているところだと話した。
多くの国民にワクチン接種を進めている国々は、米モデルナやアストラゼネカのワクチンも認可している。
EUは最近、モデルナのワクチンも認可。ファイザー/ビオンテックのワクチンについても、注文を6億回分に倍増させている。
しかし、ファイザーはベルギーの工場の製造能力を高めるため、一時的に供給量を減少。ヨーロッパの一部では、ワクチン接種をストップせざるを得なくなった。
そうしたなか、フランスの製薬会社サノフィは今年夏から、ファイザー/ビオンテックがEU向けに1億2500万回分を製造するのを支援すると発表した。
これまで何人が接種?
ウェブサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によると、EU域内の4億4800万人のうち、これまで約840万人がワクチンを接種している。
ドイツでは今月25日までに155万人がワクチンを接種。同国政府は、ビオンテックがドイツ企業であるにもかかわらず、ファイザー/ビオンテックのワクチン確保において他国に遅れをとっているとして批判を浴びている。
フランスでは、接種を受けた人が100万人を超えたところだ。

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EUで最後に予防接種を始めたのはオランダだった。最初の1人が接種を受けたのは1月6日。これは欧州各国で予防接種が始まってから10日後のことだった。イギリスには1カ月近く遅れをとったかたちだ。
22日までにオランダでは13万5000人が接種を受けた。
一方イタリアでは129万回分が、スペインでは115万回分の接種が、これまでに行われている。
欧州委員会の広報担当者はBBCニュースに対し、EUでのワクチンをめぐる最大の問題は生産面でのボトルネックだと説明。EUはワクチンが開発される前に1億ユーロ(約126億1200万円)を投資していたと指摘した。
また、複数のワクチン供給者にリスクを分散させる戦略は「基本的には健全」であり、EUの多様なワクチン・ポートフォリオは、「安全性と有効性が証明されれば、欧州市民のために20億回分近くの接種量を確保できる」とした。
EUは他にもワクチンを購入?
欧州委員会は他の製薬会社5社との間で、臨床試験が成功した場合に数億回分のワクチンを購入することで合意に達しているとしている。内訳は次の通り。
- アストラゼネカ:4億回分
- サノフィ/グラクソ・スミスクライン:3億回分
- ジョンソン・エンド・ジョンソン:4億回分
- キュアヴァック:4億500万回分
- モデルナ:1億6000万回分
欧州委員会はノヴァヴァックスとも初期交渉で、最大2億回分のワクチン購入で合意した。
英国内の状況は
イギリスはEUのワクチン接種計画には参加しなかったが、(ブレグジット移行期間が終了する2020年末までは)参加可能だった。
英政府は当時、ワクチンを提供してくれる可能性のある供給元との独自交渉を継続することや、価格や納入量、納入時期について発言権が認められないと感じたため、この接種計画から外れると表明した。
イギリスはファイザー/ビオンテックのワクチンの使用を世界で初めて認可した(そしてEUよりも数週間早くワクチン接種を始めた)。
イギリスではオックスフォード/アストラゼネカとモデルナのワクチンも認可されている。同国では25日までに680万人が1回目の接種を終えている。


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