【解説】 米民主党が盛り返し、重要なメッセージを手に入れた……注目の選挙から分かること

3人の男女の写真が横に並べられている。左側の女性は肩までのブロンドの髪で、赤いスーツに白いブラウスを着ている。中央の男性は黒い紙でひげを蓄え、濃い色のスーツに青いネクタイを着けている。右側の女性はブロンドの長髪で、青いす0つに白いカットソーを着ている。3人とも笑顔で手を振っている
画像説明, アメリカで4日にあった注目の選挙では、いずれも民主党候補が勝利した。(左から)アビゲイル・スパンバーガー次期ヴァージニア州知事、ゾーラン・マムダニ次期ニューヨーク市長、マイキー・シェリル次期ニュージャージー州知事

ドノヴァン・スラック記者、ギャレス・エヴァンズ記者

アメリカで4日に行われたニューヨーク市長選挙と、ヴァージニア州およびニュージャージー州の知事選挙で、民主党はきっぱりとした勝利を収めた。これにより、同党が大きく勢いづくことは明らかだ。

これは、昨年の大統領選挙の後とは大きく異なる光景だ。ドナルド・トランプ氏と共和党が圧倒的な勝利を収めた昨年11月には、民主党はなぜそうした結果になったのかの答えを模索していた。

今回の選挙はまた、重要な中間選挙まで残り1年というタイミングで行われた。今回の結果から何が分かるだろうか。

民主党が活気を取り戻した

民主党は、トランプ大統領の2期目における最初の主要選挙を制し、重要な勝利を収めた。

各候補者の選挙本部では歓喜の声が上がり、2024年の痛ましい敗北後の沈んだ光景とは対照的な様子となった。

ヴァージニア州ではアビゲイル・スパンバーガー氏が勝利し、知事職を共和党から奪還した。一方、ニュージャージー州ではマイキー・シェリル氏が知事に選出された。両者とも56%を超える得票率での、明確な勝利だった。

ニューヨーク市では、ゾーラン・マムダニ氏が無所属のアンドリュー・クオモ氏を破り、1969年以降で初めて100万票を超える得票を記録した候補者となった。

バラク・オバマ政権で国家安全保障担当副補佐官を務めたベン・ローズ氏はBBCに対し、マムダニ氏が若者や移民に投票を呼びかけることで「有権者層を変えた」と語った。

また、「何よりも重要なのは、彼がムーブメントを築き上げたことだ」と指摘した。

一連の勝利は、トランプ大統領が迅速に進めている政策課題に対抗するのに苦戦してきた民主党に活気をもたらし、2024年の敗北からの復活を後押しする可能性がある。

民主党全国委員会(DNC)のケン・マーティン委員長は5日、「民主党は復活し、勝利している」と述べた。「我々は中間選挙に向けて勢いを得ている」。

もっとも、2026年の選挙までには多くの変化が起こり得るため、4日に見られたような傾向が再び現れる保証はない。

勝利の鍵は「生活費」

マムダニ氏の左派的な選挙運動の核心には、住宅や食品、育児のコストを引き下げるという約束があった。そして、他地域のより穏健な民主党候補にとっても、この課題は勝利につながる争点となった。

ニュージャージー州のシェリル氏とヴァージニア州のスパンバーガー氏は共に、生活費の高騰への対処を最重要課題として掲げた。そして、この問題は有権者の関心の最上位にあったようだ。

アメリカの主要ネットワークによる出口調査のデータは、三つの選挙すべてにおいて、有権者にとって最も重要な争点が経済と価格の手頃さだったと示している。

さらに、BBCがアメリカで提携するCBSニュースの出口調査によると、経済を最重要課題とした有権者の過半数が、ニューヨーク市と、ニュージャージー、ヴァージニアの両州で民主党候補に投票したことも、注目すべき点だろう。

来年の重要な中間選挙を前に、民主党は結束すべきメッセージを手に入れたのかもしれない。同時に共和党にとっては、対抗すべき課題となる可能性がある。

共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は先に、米ニュースメディア「Semafor」に対し、「未来を見通すことはできないが、もしアメリカ国民が今後も給料から給料へとやりくりする生活を続けるなら、共和党は下院を失うことになるだろう」と語った。

一方、政治コミュニケーション専門家のアンドリュー・コネシュスキー氏はAFP通信に、「中間選挙に向けて、民主党はメッセージの中心に価格の手頃さを据えるべきだということが、これまでになく明確になった」と述べた。

「価格の手頃さというメッセージは、人口統計を超えて浸透し、共和党の大きな弱点を浮き彫りにする」

ラティーノ票に大きな変化

昨年の大統領選では、民主党候補のカマラ・ハリス氏を相手にはっきりした勝利を収めたトランプ氏は、ラティーノ(中南米系)有権者から大きな支持を獲得した。この層は長年にわたり、民主党の重要な支持基盤の一部だった。

出口調査によれば、トランプ氏は2020年の選挙と比較して、この層からの支持率を14ポイントも増加させた。大統領選の共和党候補で、ラティーノ有権者からこれほど高い支持率を得た人はいなかった。

しかし4日夜の選挙では、トランプ氏自身は候補者ではなかったものの、共和党にとって懸念される兆候がいくつか見られた。出口調査のデータによると、ヴァージニア州とニュージャージー州の知事選で勝利した民主党候補はともに、ラティーノ有権者の間で約30%の差をつけてリードしていた。

選挙結果をさらに詳しく分析すると、興味深い変化も見えてくる。

ニュージャージー州のパセイク郡は、国勢調査のデータで住民のほぼ半数がラティーノとされるため、トランプ氏がこの層からどれほどの支持を得ているかを測る指標として、アナリストらにしばしば引用される。トランプ氏は2024年、この郡で3ポイント差で勝利した。しかしシェリル氏は、今回の知事選で共和党候補に15ポイントの差をつけて勝利した。

ラティーノ有権者の投票傾向を専門とする共和党の政治顧問、マイク・マドリッド氏は、生活費と経済に関するメッセージが、再び重要な役割を果たしたと示唆した。

「過去1カ月間に実施された世論調査のいずれにおいても、ラティーノ有権者にとって、経済以上に重要な課題はなかった」と、同氏は述べた。

民主党内の相違が明確に

リベラル色の強いニューヨーク市では、マムダニ氏が民主社会主義者として立候補し、富裕層や企業に対して90億ドル(約1兆3800億円)の課税を行う方針を掲げた。これを財源に、無料の保育サービスやバス運行などの政策を実施する計画だ。

一方、ニュージャージー州とヴァージニア州の知事選では、状況は異なった。両州では、過去に共和党が選挙で大きな成功を収めてきた経緯がある。

両州で民主党から立候補した2人は、党主流派の支援を受けた穏健派であり、ニューヨーク市ほどリベラルではない有権者層に訴求する現実的な政策を強調した。

一連の選挙結果は、民主党内の左派と中道派の間に存在する大きな違いを浮き彫りにし、今後の選挙戦略や候補者選定の方針に関して疑問を投げかけるものとなった。

前出のコネシュスキー氏は、民主党は「画一的な対応」ではなく、各地域の有権者層に即した候補者を擁立する必要があると指摘した。

「場合によっては、進歩的な候補者の擁立が求められるだろう。でも別のケースでは、穏健派や中道派の候補者かもしれない」

ニューヨーク市の前財務監査官で、マムダニ氏の盟友でもあるブラッド・ランダー氏は、BBCのナダ・タウフィク北米特派員に対し、民主党指導部は地域ごとに異なる方策が有効であることを認識し、予備選のプロセスを尊重すべきだと語った。