カーク氏殺害事件めぐる「不適切」な発言で停職や解雇相次ぐ ヴァンス米副大統領も報告を奨励

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アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領は15日、保守系インフルエンサーのチャーリー・カーク氏殺害を称賛する人々は責任を問われるべきだと述べた。
ヴァンス副大統領はこの日、カーク氏が生前、毎日配信していたポッドキャスト番組「チャーリー・カーク・ショー」のゲスト司会を務めた。その中で、「彼ら(事件を称賛する人々)を非難すべきだ。雇用主にも連絡すべきだ」と語った。
「我々は政治的暴力を信じていないが、礼節は信じている」
カーク氏殺害事件のあと、ソーシャルメディアで不適切な投稿を行ったとして、パイロット、医療従事者、教員、シークレットサービス(大統領警護隊)の職員といった人々が停職または解雇されている。
アメリカでは、従業員を解雇する広範な裁量が企業側に認められているが、こうした解雇が言論の自由や労働者の保護を脅かすとの批判も出ている。
右翼活動家でドナルド・トランプ大統領の熱烈な支持者だったカーク氏は10日、共同設立した団体「ターニング・ポイントUSA」がユタ・ヴァレー大学で開催した野外イベントで演説中に銃撃され、死亡した。
15日の「チャーリー・カーク・ショー」は追悼特別回として、ホワイトハウスから放送された。保守系の著名人やトランプ政権の関係者が出演し、31歳で亡くなったカーク氏をしのんだ。
ヴァンス氏はその中で、左派のアメリカ人は「政治的暴力を擁護し、称賛する傾向がはるかに強い」、「政治的暗殺を称賛する行為には礼節が存在しない」と主張。次のように述べた。
「私は、この国全体が一致団結し、私の友人を殺した行為と思想を非難することを切望している」
「チャーリー・カークの暗殺を称賛する者たち、そしてそのようなテロリストの共感者に給料を支払っている者たちとは、団結などあり得ない」
調査会社ユーガヴによる最新の世論調査では、リベラル系のアメリカ人は、保守系の人々よりも、政治的な対立相手の死に対して喜びを感じることを擁護する傾向が強いことが明らかになっている。
カーク氏の死を公然と称賛する人物に対して処罰を求める声は、他の共和党所属の議員からも上がっている。ランディー・ファイン下院議員(フロリダ州)は、「私は彼らの解雇、資金停止、そして免許剥奪を要求する」とソーシャルメディアに投稿。そうした人物を「市民社会から追放すべきだ」と主張した。
ナンシー・メイス下院議員(サウスカロライナ州)は、カーク氏に関する無神経な投稿を行った職員に対して報復措置を取ることを拒否する学校や大学に対し、教育省が「一切の資金提供を停止すべきだ」と訴えた。
敬虔(けいけん)なキリスト教徒だったカーク氏は、ジェンダーや人種、人工妊娠中絶に関する見解を公言しており、特に講演で訪れた大学キャンパスにおいて、多くのリベラル派から反発を受けていた。
官民で停職や解雇の流れ
こうしたなか、カーク氏の死をあざける投稿や、不快感を与えるコメントをソーシャルメディアに投稿した人物が、雇用主によって解雇または停職処分を受けている。
これには、シークレットサービスの職員アンソニー・ポウ氏も含まれている。同氏はフェイスブックに、カーク氏は「自分の番組で憎悪と人種差別をまき散らしていた。(中略)最終的には神の前に立ち、自分の言葉を現実のものにするのだ」と投稿していた。
同氏は現在、機密情報へのアクセス権限を剥奪(はくだつ)されている。
シークレットサービスのショーン・カラン長官は職員向けのメモの中で、政治的動機による攻撃が増加していると指摘。警護部門の職員はこの問題を悪化させるべきではないと述べた。
「シークレットサービスの職員は、問題を悪化させるのではなく、解決の一助となることに集中しなければならない」と、カラン長官は記している。

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民間企業の従業員も厳しい視線にさらされている。オフィス・デポは、ミシガン州の支店に勤務する従業員が、カーク氏の追悼集会用ポスターの印刷を拒否する様子を捉えた動画が拡散したことを受け、当該従業員を解雇したと、BBCに対して声明で認めた。
オフィス・デポの広報担当者は、この従業員の行動について「完全に容認できず、無神経なものであり、当社の方針に違反している」と述べている。
教授やジャーナリストも、自身の発言を理由に処分を受けており、いわゆる「キャンセル・カルチャー(特定の対象を全否定する風潮)」をめぐる議論を呼んでいる。
米紙ワシントン・ポストの長年のコラムニストであるカレン・アティア氏は、カーク氏の死後にソーシャルメディア「Bluesky」に投稿した一連の内容を受けて、同紙から解雇されたと明らかにした。
また、サウスカロライナ州のクレムソン大学は15日に声明で、カーク氏の殺害に関連する「不適切な」ソーシャルメディア投稿を理由に、職員1人を解雇し、教授2人を停職処分にしたと発表した。
こうした影響は、アメリカ国内にとどまらず、国外にも及んでいる。
カナダでは、トロント大学のルース・マーシャル教授が、ソーシャルメディアへの投稿で「正直な話、銃撃なんて、多くのお前らファシストには甘すぎる」と書いたとされ、停職処分を受けた。
アメリカでは、ほとんどの従業員が「随意」雇用契約に基づいて雇われているため、雇用主は原則として、理由を問わず解雇する広範な裁量を持っている。
テキサス大学オースティン校のスティーブン・コリス教授(法学)は、アメリカ合衆国憲法に基づく言論の自由の権利は、民間企業には適用されないと述べている。
同教授によると、この権利は、政府による市民の言論制限に対して適用されるものだという。
一方、コーネル大学労働者研究所のリサ・リーバーウィッツ所長は、カーク氏に関する投稿に対して責任を求める声を上げる公人が、言論の自由を侵害している可能性があると指摘している。
同氏は、現在のアメリカにおける政治的な言説の過熱状況を踏まえれば、こうした一連の解雇は驚くべきことではないと述べている。
「これは、現在アメリカに存在している、トランプ政権の政治的方針に従わないことへの報復に対する恐怖を反映していると思う」と、リーバーウィッツ氏は語った。
こうした解雇に対しては批判の声も上がっている。アメリカ大学教授協会(AAUP)は15日に声明を発表し、学問の自由は保護されるべきであり、「政治的圧力のもとで制限されるべきではない」と述べている。











