マクロン仏大統領が国賓訪英、初日は華やかな歓迎ムードに チャールズ国王も深い関係を強調

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フランスのエマニュエル・マクロン大統領は8日、3日間のイギリス国賓訪問を開始した。欧州首脳が国賓としてイギリスを訪れるのは、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)以降で初めて。フランス大統領の国賓訪英は17年ぶり。
マクロン大統領は、防衛や原子力エネルギー、移民問題において、「具体的で効果的かつ持続可能な」協力を約束すると表明した。
初日のこの日は、イギリス王室から手厚い歓迎を受けた。
マクロン夫妻は王立空軍(RAF)ノーソルト基地に到着すると、ウェールズ公ウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃に迎えられた。
その後、ウィンザーでチャールズ国王とカミラ王妃の出迎えを受けた。マクロン大統領は、国王と同じ馬車に乗り、ウィンザー城へと向かった。
その馬車の後には、カミラ王妃とブリジット氏が乗った場所が続き、さらにその後方にはウィリアム皇太子夫妻が乗る馬車が続いた。
現地で取材したダニエル・ウィッテンバーグ記者によると、ウィンザー城前の大通りでは、チャールズ国王とマクロン大統領の馬車に対して歓声が上がり、「ヴィヴ・ラ・フランス(フランス万歳)」と叫ぶ声も聞かれたという。
ウィンザー城に到着すると、マクロン大統領は儀仗(ぎじょう)兵による栄誉礼を受けた。

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フランス大統領が国賓待遇でイギリスを訪問するのは17年ぶり。前回の訪問は2008年3月で、当時のニコラ・サルコジ大統領が、故エリザベス女王の招待を受けてイギリスを訪れた。
また、国賓がウィンザーで迎えられたのも、10年以上ぶりとなる。
今回の国賓訪問は、今年初めにドナルド・トランプ米大統領に対して追加の招待が行われる前から計画されていたとされており、今年は王室の国際的な行事が相次ぐ多忙な年となっている。
フランスには、2023年に即位直後のチャールズ国王とカミラ王妃が国賓として訪問している。これは、ブレグジット後の関係修復に向けた外交的成功と評価された。
演説では移民問題や国際秩序の維持に言及

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マクロン大統領はその後、ロンドンに向かい、イギリス議会で演説した。
上下両院議員で満員の議場でマクロン氏は、英仏海峡を小型ボートでわたる移民の問題に言及した。この問題については、9日以降のキア・スターマー首相との首脳会談で協議される予定。
移民問題についてマクロン大統領は「ギャングや人々が規則を無視することは許されない」と述べ、イギリスとフランスが協力して取り組むべき課題だとした。また、出発国や経由国にも責任があると強調した。
貿易については、イギリスのEU離脱は「残念だ」としつつも、「貿易はブレグジット前の水準を超えている」と述べ、新たな関係の基盤が築かれているとした。学生、研究者、芸術家の交流を促進する「ユース・モビリティー・スキーム」にも言及した。
国際情勢に関しては、パレスチナ国家の承認こそが平和構築の唯一の道だと述べた。イラン問題では、イギリス、フランス、ドイツが厳格な交渉で連携すべきだと訴えた。
ウクライナについては、「国際秩序を守り、ウクライナを決して見捨てない」と語った。
一方で、「我々は王室が大好きです。とりわけ国外の王室は」と、冗談を飛ばす場面もあった。
最後には、英仏の長い歴史と戦争における相互支援を振り返り、チャールズ国王の招待に対して感謝の意を表した上で、「イギリス万歳、フランス万歳」と演説を締めくくった。

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この演説に先立ち、マクロン大統領はウェストミンスター寺院を訪問し、第1次世界大戦で戦死した無名戦士の墓に献花した。特に身元不明の戦没者を追悼する記念碑とされているこの墓には、フランスの土が納められている。
演説後には、キア・スターマー首相と共に、ロンドン中心部のパーラメント・スクエアにあるウィンストン・チャーチル像に献花した。
カールトン・ガーデンズでは、フランスのシャルル・ド・ゴール元大統領の像にも献花を行い、式典では退役軍人らと面会した。
また、最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首と自由民主党党首のサー・エド・デイヴィーとも面会した。
「複雑な脅威」にともに立ち向かうと国王

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その後、ウィンザー城で開かれた公式夕食会でチャールズ国王は、イギリスとフランスは「これまで以上に緊密な関係にある」と語った。
また、両国は「多方面から発せられる複雑な脅威」に直面しているが、「友人として、同盟国として」共に立ち向かうことができると述べた。
国王はさらに、防衛、技術、気候変動に関する分野での協力関係を強調し、両国が「共に果たすべき重要な役割」があると述べた。
マクロン大統領も英仏関係への自信を表明した一方、両国は「常に警戒を怠ってはならない」と語った。
さらに、イギリスとフランスが「一つのテーブルを囲めば、すべてが可能になる」と述べ、「仏英友好」に乾杯した。
「バイユーのタペストリー」がイギリスへ

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今回の公式訪問に合わせ、1066年にノルマンディー公ギヨーム2世(後のウィリアム征服王)がイングランドを征服した「ノルマン・コンクエスト」を描いた「バイユーのタペストリー」が、2026年9月から2027年7月まで大英博物館で展示されると発表された。
バイユーのタペストリーは11世紀に制作されて以降、主にフランスで保管・展示されてきた。現在はバイユー・タペストリー美術館が所蔵している。
大英博物館のニコラス・カリナン館長は、1066年のヘイスティングズの戦いなどを記録したこのタペストリーについて、「世界で最も重要かつ独自の文化遺産の一つだ」と述べた。
イギリス側は代わりに、アングロ・サクソン時代のサットン・フー遺跡で見つかった埋葬物や、12世紀の「ルイス島のチェス駒」などをフランスに貸し出す予定。
こうした取り組みは、両国間の信頼関係を象徴しているとされる。
<解説> ショーン・コクラン王室担当編集委員

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国賓訪問は、華やかな儀式と、真面目なビジネスおよび政治が交錯する場だ。
マクロン大統領による3日間の訪英初日は、まさに儀礼色の強い一日となった。ウィンザーでは晴天の下、多くの市民が馬車行列を楽しむ姿が見られた。
中でも、ウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃に対する市民の歓迎は特に温かった。キャサリン皇太子妃はがん治療からの段階的な公務復帰の一環として、今回の行事に積極的に参加する姿を見せた。
公式訪問の目玉の一つである夕食会にはサー・ミック・ジャガーやサー・エルトン・ジョンといった著名人も出席した。英仏関係を祝して、イギリス産のスパークリングワインと、フランス産のシャンパンが振る舞われた。
チャールズ国王のスピーチでは、今後2日間にわたって繰り返し強調されるであろうメッセージが示された。それは、予測困難で不安定さを増す国際情勢の中で、イギリスとフランスのパートナーシップがいかに重要かという点だ。
英仏間には、英仏海峡を渡る小型ボートの問題など、解決すべき課題も存在する。しかし、チャールズ国王とマクロン大統領の発言からは、両国の歴史的同盟関係が、分断の進む世界においてこれまで以上に不可欠であるという強いメッセージが伝わってきた。











