【解説】 金正恩氏の娘も北京に 後継候補なのか、何がわかっているのか

キム・ジュエ氏は2023年2月8日、北朝鮮の平壌にある金日成広場で行われた北朝鮮軍創建75年記念軍事パレードに、父・金正恩氏と共に出席した。朝鮮中央通信(KCNA)が公開した写真

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画像説明, キム・ジュエ氏はここ数年、北朝鮮の軍事パレードで常に姿を見せている(2023年撮影)

フローラ・ドルリー、BBCニュース

北朝鮮最高指導者の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が、多国間の会合に初めて出席するために2日に中国に到着し、大見出しで報じられた。

しかし、朝鮮ウォッチャーらが注目したのは、装甲列車を降りた金氏のすぐ後ろに立っていたスマートな身なりの少女だった。金氏の娘、キム・ジュエ氏だ。

韓国の諜報機関によると、ジュエ氏は父親の後継者になる可能性が高いという。

しかし、正確な年齢を含め、彼女については詳しいことがほとんどわかっていない。どんなことがわかっているのか。

2025年9月2日に朝鮮中央通信が発表した写真で、金正恩氏が中国・北京に到着し、王毅外相に出迎えられている。近くに娘のキム・ジュエ氏が立っている

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画像説明, キム・ジュエ氏(右端)は父親に同行して初めて外国を訪れた(2日、北京)

ジュエ氏は、金氏と妻・李雪主(リ・ソルジュ)氏の間に3人いる子どもの2番目だと、長年信じられている。しかし、正確な子どもの人数や順番はわかっていない。金氏は家族のことはかなり秘密にしており、妻がいることも結婚後しばらくしてから明らかにした。

ジュエ氏は、北朝鮮の指導部が唯一存在を明らかにしている、金夫妻の子どもだ。他の子らは、公の場で姿が見られたことはない。

最初にジュエ氏の存在がわかったのは、意外なルートからだった。米バスケットボール選手のデニス・ロッドマン氏が、2013年に英紙ガーディアンに、秘密主義の北朝鮮を訪問中に「夫妻の赤ちゃんのジュエを抱いた」と明かしたのだった。

その後は、2022年11月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射式に父親とともに登場するまで、彼女の消息はほとんど聞かれていなかった。

その翌年の2月には、ジュエ氏は切手に登場し、金氏の「尊敬する」娘として、高官らの夕食会に出席するようになった。

「尊敬する」という形容詞は、北朝鮮で最も尊敬される人物にのみ与えられる。彼女の父親の場合は、将来の指導者としての地位が固まって初めて、「尊敬する同志」と呼ばれた。

北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)が発表した写真で、金正恩氏と娘のキム・ジュエ氏が、北朝鮮・元山(ウォンサン)のリゾート施設のオープニング式典で浜辺に立っている。2025年6月24日撮影

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画像説明, キム・ジュエ氏(白い服の人物)はこの夏、父親(写真中)とともに元山葛麻海岸観光地区のリゾート施設のオープニングで姿を見せた(6月)

AP通信によると、韓国の国家情報院(NIS)はこのころ、ジュエ氏に関する追加情報を議員らに提供した。

その情報によると、ジュエ氏は乗馬、スキー、水泳を楽しみ、首都・平壌で家庭教育を受けた。年齢は10歳前後だとされた。

2024年1月には、NISは新たな結論に至った。ジュエ氏が金氏の後継者になる可能性が「最も高い」というものだった。ただ、金氏が若いことをはじめ、「多くの変数」がまだあるとした。

それ以来、ジュエ氏は何度も父のそばに姿を現すようになっている。ICBMの発射や軍事パレードで父の隣に立ち、ステージ中央で軍の上級司令官らから敬礼を受けている。

2日は、ジュエ氏が北朝鮮の外で姿を見せる初めての日となった。今回の訪中で、彼女が父の後を継ぐとの観測は一段と熱を帯びるとみられる。

金一族は、1948年から北朝鮮を支配し続けてきた。国民に向け、自分たちは神聖な血統の出身であり、唯一、国を率いることができる存在だと語っている。

一方、金氏がこの時点で娘を広く紹介しているのは、家父長制の根強い国での偏見を克服するためではないかとの憶測もある。北朝鮮ではこれまで、女性が指導者になったことはない。