米中の合意で株価回復、「トランプ関税」発表前の水準に

米ニューヨーク株式市場の職員が、ほほ笑みながら端末を見ている

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アメリカと中国が先週末に貿易協議を行い、関税の大幅引き下げなどが決定されたことを受け、12日の株式市場は急騰した。この動きは、両国間で続いていた緊張状態の緩和に向けた一歩とみられている。ドナルド・トランプ米大統領は、両国の貿易条件が「完全にリセットされた」と述べた。

スイスで行われた協議では、今年1月以降に両国がお互いに課してきた報復関税の大幅な引き下げが決定された。アメリカは中国製品への関税率を145%から30%に、中国もアメリカ製品に対する報復関税を125%から10%に、それぞれ引き下げる。

投資家は今回の緊張緩和を歓迎。アメリカの主要500社を追跡するS&P500種は12日に3.2%超上昇した。ダウ工業株30種平均は2.8%上がり、ハイテク株比率が高いナスダックは終日で4.3%の急騰となった。

これにより、各指数は年初の水準まで回復し、4月2日の関税発表後に被った損失を完全に取り戻した。関税発表は、トランプ政権によって「解放の日」と名付けられていた。

米ウォール街では、ターゲットやホーム・デポ、ナイキといった企業が、今回の発表を受けて株価を大きく上昇させた。テクノロジー関連では、エヌビディア、アマゾン、アップル、そしてフェイスブックの親会社メタも大幅に値を上げた。

ヨーロッパの株式市場も12日に軒並み上昇。アジア市場では13日午前、日経平均株価が一時800円超の上げ幅を記録した。

今回の合意は海運関連株にも追い風となり、デンマークのマースクは12%超の上昇、ドイツのハパック=ロイドは14%の急騰を記録した。

マースクは英BBCに対し、米中合意は「正しい方向への一歩」であり、「顧客が必要とする長期的な予見性をもたらす恒久的な合意」への期待を示した。

一方、ここ数週間、関税による混乱を背景に安全資産として買われていた金価格は3.1%下落し、1オンスあたり3,223.57ドルとなった。

90日間の一時停止措置

トランプ政権は4月、国際貿易において自国により公平な取引条件を提供することを目的に、すべての輸入品に対して一律10%の基準税率を導入した。

さらに、ホワイトハウスが「最悪の違反国」と表現した約60カ国には、他国よりも高い関税率が適用され、中国もその中に含まれていた。

これに対し、中国は独自の関税措置で報復し、双方で関税の応酬が激化。各種株価指数が急落する展開となっていた。

新しい合意の下でアメリカは、「解放の日」に発表した中国製品への「相互」関税を10%に引き下げる。ただし、この高率関税の撤廃は恒久的なものではなく、90日間の一時停止措置とされている。

アメリカはまた、合成麻薬フェンタニルの違法取引を抑制するため、中国にいっそうの対応を求める圧力として導入した、追加の20%関税を維持する方針を示している。

一方の中国も、トランプ氏の「解放の日」発表に対する報復措置として導入した関税を10%まで引き下げるが、こちらも3カ月間の一時停止措置としている。

中国はさらに、アメリカに対するすべての非関税措置を「停止または撤廃する」ことにも同意した。

ただし、鉄鋼や自動車など、特定の産業に対して既に導入されている高率の関税は引き続き適用される。

一方、後から追加された報復関税については、双方ともに完全に撤廃された。

一連の緩和は、関税戦争の初期的な影響が現れ始めたタイミングで行われた。アメリカの港湾では、中国から到着予定の船舶数が急減していると報告されている。

中国では工場生産が減速し、アメリカからの注文が途絶えたことにより、企業が労働者を解雇しているとの報道もある。

中国商務省は今回の合意について、「意見の相違を解決するための重要な一歩」で、「協力の深化」を助けるものだと評価した。

トランプ大統領は12日、記者団に対し、一部の関税は完全に撤廃されたわけではなく、一時的に停止されているに過ぎないと述べた。そのため、今後3カ月以内に進展が見られなければ、再び関税が引き上げられる可能性があると警告した。

ただしトランプ氏は、関税が以前の145%という水準に戻ることはないとの見通しを示した。

合意発表後、トランプ氏は「中国を傷つけようとしているわけではない」と語り、中国が「非常に深刻な打撃を受けている」と付け加えた。

「工場を閉鎖し、不安が広がっていた。だからこそ、我々と何かしら協力できることを(中国は)とても喜んでいた」

また、中国の習近平国家主席と「今週末あたりに」会談する可能性があると述べた。

企業や業界団体の反応は

工場で木製品を組み立てている男性

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アメリカ向けにパーソナルケア家電を輸出する中国のタット・ケイ氏は、今回の発表を歓迎しつつも、今後の展開に対する不安を口にした。

中国・深圳の工場で200人を雇用するケイ氏は、「トランプ大統領は今後3年半は政権にとどまる。この件がこれで終わるとは思えない(中略)これで終わりだとはまったく思わない」と語った。

中国企業のグローバル展開を支援するアトラス・ウェイズの大中華圏統括責任者、エレイン・リー氏も、多くの企業が今回の猶予措置を一時的なものと見なしていると述べた。

「企業にとって最善策は、次の関税発動に備えて、自社の周囲に堀を築くことだ」

アメリカでは、全米小売業協会(NRF)が今回の「建設的な」交渉に対して前向きな評価を示した。

NRFのマシュー・シェイ会長は、「この一時的な停止措置は、歳末商戦に向けた商品発注のタイミングで、小売業者やその他の企業に短期的な救済をもたらす重要な第一歩だ」と述べた。

国際商業会議所(ICC)も、アメリカと中国の双方が「強硬なデカップリング(切り離し)」を回避したいと、明確に意思表示した結果だと評価した。

ICCのアンドリュー・ウィルソン副事務総長は、「最終的には、今回の週末の合意が、世界中の投資、雇用、需要に重くのしかかっている貿易政策の不確実性という暗雲を取り除く、その土台となることを期待している」と話した。