【解説】 レアアース、ノーベル賞推薦、賛辞……トランプ氏が訪日終える

画像提供, Reuters
アンソニー・ザーカー北米特派員、シャイマ・ハリル東京特派員
賛辞、ノーベル平和賞への推薦、そしてアメリカへの外国投資の約束——。日本の新首相である高市早苗氏は28日、ドナルド・トランプ米大統領をレッドカーペットを敷いて歓迎した。
トランプ氏もこれに応じて高市氏を称賛し、「欲しいもの、頼みごと、日本のためにできることがあれば何でも、私たちはあなたの役に立つ」と述べた。
両首脳は、レアアース(希土類)に関する合意文書に署名したほか、日米関係の新たな「黄金時代」を告げる文書にも署名した。この文書では、両国の交渉でまとまった15%の関税合意を含む、これまでに締結された協定の履行を改めて確認している。
式典と会場は、トランプ氏に合わせて特別にしつらえられたようにも見えた。
トランプ氏はこの日、金箔(きんぱく)が施された壁とアーチ型の天井を持つ豪華な東京・元赤坂の迎賓館で、自衛隊の特別儀仗(ぎじょう)隊による栄誉礼を受けた。迎賓館の装飾は、トランプ氏がホワイトハウスで新設している宴会場に望んでいるものと似ているとされている。
ワーキング・ランチの席でトランプ氏は、高市氏が日本初の女性首相となったことを祝福した。
特筆すべきは、この昼食の献立が「アメリカ産の米とアメリカ産の牛肉を、日本の食材で美味しく調理したもの」(ホワイトハウス)だったことだ。日本にアメリカ産の米を購入するよう長年求めてきたトランプ氏を喜ばせたことは間違いない。
高市氏はまた、米海軍横須賀基地に停泊中の米原子力空母「ジョージ・ワシントン」にトランプ氏と共に乗艦し、歓声を上げる数千人のアメリカ兵の歓迎を受けた。高市氏は壇上に立ち、日米関係を「世界で最も偉大な同盟」と称賛し、防衛費の増額を約束した。
トランプ氏はこれまで、日本の防衛費の少なさを批判してきた。今年4月には、日米安全保障条約を「一方的なもの」と非難し、「我々は日本を守るために数十億ドルを支払っているが、彼らは何も支払っていない」と述べていた。
28日の会談を前にトランプ氏は、高市氏との関係が「素晴らしいものになると確信している」と語っていた。高市氏は、トランプ氏が親しかった故・安倍晋三元首相と強いつながりを持つ人物である。
トランプ氏は27日、マレーシアから日本へ向かう機中で記者団に対し、「彼女(高市氏)は安倍氏の偉大な支持者であり友人だった。安倍氏は私の友人だった。彼は最高の人物の一人だった。その二人が非常に親しかったことを知っているし、思想的にも近かったと思う。それは非常に良いことだ」と語った。
トランプ氏は現在、1週間かけてアジアを訪問している。29日には日本を離れて韓国へ向かった。30日には、中国の習近平国家主席との会談が予定されている。

画像提供, Getty Images
自民党総裁選に勝ち、国会で首相に選出された高市氏にとって、トランプ氏との会談は、最初の重要な試金石と見なされていた。
日米は長年にわたって同盟関係にあるが、過去に日本への関与をためらう姿勢を見せたこともある気まぐれなトランプ氏とどう関係を築くかは、日本の外交政策の中核となっている。
高市氏は28日、「日米同盟の新たな黄金時代を大統領と共につくり上げたい」と述べるとともに、中東に平和をもたらしたとしてトランプ氏の功績を称賛した。また、日本としてトランプ氏をノーベル平和賞に推薦する方針だと明らかにした。
アメリカのマーゴ・マーティン大統領特別補佐官兼広報顧問によると、高市氏はトランプ氏にゴルフ関連の贈り物をしたという。
その中には、男子ゴルフのメジャー大会で日本人選手として初めて優勝した松山英樹氏のサイン入りゴルフバッグや、安倍元首相が使用していたパターが含まれていた。両首脳は、「Japan is back(日本が戻ってきた)」という文字が印刷された帽子にも署名した。
これに対し、トランプ氏は高市氏を「親しい友人」と呼び、アメリカと日本の同盟関係を「ひどい戦争の灰の中から生まれた(中略)美しい友情」と表現した。また、日本が長らく待っていた自衛隊の戦闘機F35向けのアメリカ製ミサイルの初回納入を承認したと発表した。納入は今週中に行われる予定だという。
一連の会談では、丁寧なやり取りが前向きな雰囲気をかもし出していた。しかし笑顔と華やかな演出の裏には、日本に対する現実的な圧力が存在している。
ワーキング・ランチの席で高市氏はトランプ氏に対し、日本企業がアメリカに行ってきた投資を示す地図を提示した。また、空母「ジョージ・ワシントン」での演説の中でトランプ氏は、高市氏から、トヨタ自動車が米国内に複数の工場を建設するために100億ドルを投資する計画について聞いたと語った。
しかしトランプ氏は、日本に対してさらなる市場開放を求めている。アメリカ産の米だけでなく、大豆の購入や、アメリカ製自動車の市場参入も要求している。

画像提供, Getty Images
一方で、高市氏は国内産業を保護する必要がある。国内の重要な利害関係者、特に強力な農業団体を怒らせたくないと考えている。
日本経済は輸出に大きく依存しており、特に自動車産業に関しては、関税をめぐって対立している余裕はない。アメリカへの最大の輸出業者である自動車メーカーは、24%の関税と数十億ドル規模の損失に直面してきた。
現在、関税は15%に引き下げられている。これは、韓国などアジアの競合国と横並びの税率だ。
安倍政権で内閣官房参与を務めた谷口智彦氏は、高市氏が安倍氏とトランプ氏の関係から学べる点があると述べた。
谷口氏は、高市氏が「率直に日本の国益を明確に伝え、両国の国益がどこで重なるかを見極めること、そして常に日本の安全は日本自身の手に委ねられるべきだという意識を持つこと」が重要だと語った。
しかし、高市氏がバランスを取らなければならないのは、日本の国益とアメリカとの同盟関係だけではない。中国との重要な貿易関係を維持しながら、それを両立させる必要がある。
コンサルティング会社「アジア・グループ」の上級アソシエイト、西村凜太郎氏は、「高市氏は非常に微妙なバランスを取らなければならない。中国に対する強硬姿勢を少し抑える必要があるかもしれない。(中略)同時に、日米関係が最も重要なのだと、トランプ氏に確信させなければならない」と述べた。












