ナチスが略奪した絵画、アルゼンチン当局が回収 不動産広告に写り込み発見

第2次世界大戦時にナチス・ドイツによって略奪されたイタリア人画家ジュゼッペ・ギスランディ氏の作品「婦人の肖像」。アルゼンチン当局によって回収された後、アルゼンチンのマル・デル・プラタでの記者会見で公開された。絵画の隣にはアルゼンチン国旗が置かれている

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画像説明, 第2次世界大戦時にナチス・ドイツによって略奪されたイタリア人画家ジュゼッペ・ギスランディ氏の作品「婦人の肖像」。アルゼンチン当局によって回収された後、アルゼンチンのマル・デル・プラタでの記者会見で公開された

アルゼンチン当局は3日、第2次世界大戦時にナチス・ドイツによって略奪され、80年以上行方がわからなくなっていたイタリアの名画を回収したと発表した。この絵画は先月、アルゼンチンの住宅販売のウェブ広告に写り込んでいるのが見つかっていた。

回収されたのは、イタリア人画家ジュゼッペ・ギスランディ作の「婦人の肖像」。大戦中、オランダのアムステルダムでユダヤ人の美術商からナチスが奪い去った。戦時中に失われた美術品のデータベースに掲載されている

絵画が写っていたのは、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス近郊の住宅を紹介する写真。ソファの後ろの壁に掛けられていた。この家は一時期、戦後に南米に移住した元ナチス高官が所有していた。

オランダ紙ADによると、元高官の娘がこの家を売りに出したことで、広告写真が掲載されたという。

現在この家を所有するパトリシア・カドギエン氏の父フリードリヒ・カドギエン氏(故人)は、ナチス指導者アドルフ・ヒトラーの副官ヘルマン・ゲーリング国家元帥の最高顧問を務めた。ゲーリング国家元帥は、欧州各地から数千点の美術品を略奪した人物だった。

検察によると絵画は、現在自宅で軟禁されているパトリシア・カドギエン氏の弁護人から返還された。当局が以前、同氏の自宅を捜索した際には絵画は見つからなかった。

この事案を担当した美術専門家アリエル・バッサーノ氏は、「1710年の作品としては状態がいい」と記者団に語った。

「婦人の肖像」は推定5万ドル(約740万円)の価値があるとバッサーノ氏が述べたと、地元紙ラ・カピタル・マル・デル・プラタは報じている。

リビングルームの白い壁に女性の肖像画が掛けられている。壁の前には緑色のソファが置かれ、両側にはランプが一つずつ置かれている

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画像説明, 「婦人の肖像」は元ナチス高官の娘が所有する家の広告に写り込んでいた

検察は以前、カドギエン一家に関連するほかの物件を捜索した際、大戦中に盗まれた可能性のある別の美術品も見つかったとしていた。

報道によると、パトリシア・カドギエン氏とその夫は今月1日から3日間の自宅軟禁を命じられている。地元メディアは司法当局者の話として、2人が絵画の所在を特定するための捜査を妨害したとして事情聴取を受けていると伝えている。

当局者はまた、2人は4日に出廷予定で、「ジェノサイド(集団虐殺)に関連する窃盗の隠匿罪」で起訴される可能性が高いとしている。

夫婦は、自分たちは相続した絵画の正当な所有者だと主張していると、アルゼンチン紙ラ・ナシオンは報じている。

パトリシア・カドギエン氏の弁護人カルロス・ムリアス氏は、地元紙ラ・カピタルに対し、夫妻は当局に協力する意向だと語った。

検察は、絵画を見つけるため、ほかに四つの物件を捜索したという。

パトリシア・カドギエン氏の姉妹の家からは、19世紀の絵画2点と、一連の素描や彫刻が見つかったと、ラ・カピタルは伝えている。当局は今後これらを分析し、大戦中に盗まれたものかどうかを特定するという。

ウェブ広告の中で見つかった「婦人の肖像」は、オランダ・アムステルダムの美術商ジャック・グードスティッカー氏のコレクションの一つとされる。グードスティッカー氏の死後、コレクションの大半はナチスによって強制的に売却されたとされる。

「婦人の肖像」の発見を最初に報じたオランダ紙ADのペーター・スハウテン氏は、「この絵画が見つかったとメディアが報じて間もなく、絵画が撤去されていたことを示す」証拠があるとしている。

「現在は、(絵画があった場所に)馬や自然の風景が描かれた大きなじゅうたんが掛けられている。以前はそこに別のものが飾られていたように見えると、警察は指摘している」

戦後、グードスティッカー氏のコレクションの一部はドイツで回収され、オランダのコレクションの一部としてアムステルダムの国立美術館に展示された。ADによると、グードスティッカー氏の唯一の相続人で義理の娘に当たるマレイ・フォン・サハー氏が、2006年時点で202点を所有していたという。

義理の娘は、「ジャックのコレクションから略奪された芸術作品をすべて取り戻し、彼の遺産を回復すること」が家族の「目標」だとしている。