「ホロコーストで盗まれた」エゴン・シーレの作品、元の所有者の遺族に返還=米検察

画像提供, Manhattan DA
アメリカの検察当局は20日、第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人などの大虐殺(ホロコースト)の際に盗まれたとされる、オーストリアの画家エゴン・シーレの作品7点を、元の所有者の相続人に返還したと発表した。
これらの作品はアメリカの複数の美術館で展示されていた。ユダヤ系オーストリア人のフリッツ・グリュンバウム氏が、1941年にナチスに殺害される以前に所有していたとされ、同氏の遺族は20年以上にわたって作品の返還を求めていた。
返還が決まった作品は1点あたり78万ドル(約1億1600万円)から275万ドル(約4億790万円)の価値があるという。
作品を所蔵していたニューヨーク近代美術館(MoMA)とモルガン・ライブラリー・アンド・ミュージアム(いずれもニューヨーク)、そしてカリフォルニア州にあるサンタバーバラ美術館は、盗品であることを知り、検察に自主的に引き渡すことに同意した。
いくつかの作品は、世界ユダヤ人会議のロナルド・ローダー会長や有名な美術品コレクターのセルジュ・サバルスキー氏が所有していた。両者とも返還に同意した。
グリュンバウム氏の遺族のこうした主張は、複数の訴訟につながった。
2018年の民事裁判では、グリュンバウム氏によって作品が売却または引き渡された事実はないと判断された。
今回の作品とは別に、複数の米美術館が所有してきた作品3点についても、ホロコーストの際に盗まれたものだとの主張がなされている。ニューヨークのマンハッタン地区検事事務所は今月、各作品を押収した。
ニューヨーク州最高裁判所は令状で、これらの美術品が盗品であると「信じるに足る合理的な理由がある」としている。
作品3点は当面、それぞれの美術館で保管される。美術館関係者らは、自分たちに法的所有権があると自信を持っていると話している。作品の所有者をめぐる裁判はいまも続いている。
「歴史的な」返還
ニューヨークのマンハッタン地区検事事務所は、今回の返還を「歴史的」だとしている。
1941年にダッハウ強制収容所で死亡したグリュンバウム氏は、シーレの作品を81点所有していた。
妻エリザベート氏は、1938年に夫が逮捕された後、夫の美術コレクションをナチスに引き渡さざるを得なくなった。妻は1942年に強制収容所で亡くなった。
ナチス・ドイツの指導者アドルフ・ヒトラーはシーレの作品を「退廃芸術」とみなし、作品はナチ党の資金調達のために売却された。
そのうちの一部は、オットー・カリアという名のディーラーが所有し、別の買い手に売却されていた。
自発的に手放した可能性は低いと判断
グリュンバウム氏の相続人は2018年、英ロンドンを拠点とするリチャード・ナギーというコレクターからシーレ作品2点を返還してもらうため、ニューヨーク州の裁判所に提訴した。
この裁判を担当したチャールズ・V・ラモス判事は、グリュンバウム氏がダッハウ強制収容所に収容された際に自発的に作品を手放した可能性は低いとの判断を示した。
これを受け、相続人はかつてグリュンバウム氏が所有していた別のシーレ作品がニューヨーク州の法律で盗品とみなされるかどうかを調べるため、マンハッタン地区検事事務所に訴えたと、検察は説明している。
検察は返還が決まった7点について、どのようにしてニューヨークを経由し、さまざまなコレクションの一部として所蔵されるようになったのかを追跡できた。
グリュンバウム氏の親族ティモシー・リーフ氏は、美術品を正当な所有者に返還する役割を果たしたとしてニューヨークの検察当局を称賛した。
リーフ氏は18日、作品が返還されることで、「殺人と強盗の犠牲者に対する正義の措置が達成された」と述べた。
「これらの美術品を見て、フリッツとエリザベートが(オーストリアの首都)ウィーンの活気あるアパートで歌って踊り、ジョークを飛ばしている姿を想像してほしい」
7点の中には、「I Love Antithesis」(アンチテーゼが好き)と題された作品(275万ドル相当)や、以前MoMAに展示されていた「Standing Woman」(スタンディング・ウーマン)という作品(150万ドル相当)が含まれる。







