山上被告が殺人罪認める、安倍氏殺害事件の公判開始

白と黒の鯨幕の前に安倍晋三氏の遺影と献花台が置かれている。献花台には花束が山積みになっている。制帽をかぶった2人が献花台の前を歩く姿が、影になっている

画像提供, Reuters

画像説明, 安倍晋三元首相の国葬は東京の日本武道館で開かれた(2022年9月撮影)

2022年7月22日に安倍晋三元首相を殺害した罪などに問われている山上徹也被告の初公判が28日午後、奈良地裁で始まった。日本のメディアによると、山上被告は罪状認否で「私がしたことに間違いありません」と、殺人罪について有罪を認めた。

山上被告は、殺人罪のほか銃刀法違反の罪にも問われている事件では、奈良市で街頭演説をしていた安倍元首相を、山上被告が手製銃で撃ったとされる。

安倍元首相は複数回撃たれ、事件当日に病院で死亡した。強硬な外交政策と「アベノミクス」と呼ばれた経済戦略などで知られていた元首相に対するこの事件は、世界中に衝撃を与えた。

この暗殺事件によって、安倍氏がかつて率いた自民党と、欧米では「ムーニーズ」として広く知られる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が注目を集めることとなった。

旧統一教会は韓国で設立され、1960年代に日本に進出。何千組ものカップルが参加する合同結婚式で知られる。

報道によると、山上被告は捜査当局に対し、自分の母親が破産したのは信仰している旧統一教会のせいだと述べ、安倍氏が同団体を推進していたとして非難する供述をしている。

山上被告はさらに、母親が信仰の証として教会に対してしたとされる献金の総額が、約1億円に上ると供述しているという。

複数報道によると、公判の冒頭陳述で検察側は、被告の母親が旧統一教会に入信し多額の献金をするようになったと説明。兄が自殺したのを機に被告は同団体への恨みを募らせ、当初は教会幹部の襲撃を計画し、手製銃を製造したものの、新型コロナウイルス流行で幹部の来日が不透明になったことから、教会に親和的な政治家を襲撃することを考えるようになったこと、安倍元首相を襲撃すれば旧統一教会の実態が注目を浴びると考えたことなどを指摘した。

弁護側は、被告の生い立ちや、母親の多額の献金のため一家が困窮したことなどを語り、兄の死をきっかけに被告が教団に復讐(ふくしゅう)心をもつようになったと説明した。

一方で弁護側は、銃刀法の発射罪については、被告の手製の銃は銃刀法の規制対象には当てはまらず成立しないとして、「妥当な量刑が科されるべきだ」と主張した。

銃規制が厳しく、銃犯罪の発生件数が極めて少ない日本では、安倍氏の殺害を受けて、手製の銃に関する法律がさらに強化された。

旧統一教会に解散命令

旧統一教会に対するさまざまな疑惑や、政治家とのつながりを問題視する世論の高まりを受けて、2022年秋には当時の岸田文雄首相が宗教法人法に基づく「質問権」を行使して調査するよう指示した。旧統一教会との接点や「政治とカネ」をめぐる問題などで、同年末までに閣僚4人が辞任する事態になった。

その後、今年3月に東京地裁は同教会に対して解散命令を出した。命令が確定すれば、宗教法人としての非課税資格が剥奪(はくだつ)され、清算手続きが始まる。

山上被告に対する奈良地裁での公判には、母親も証人として出廷する見通しだが、信仰は揺らいでいないと報じられている。日本のメディアによるインタビューでは、事件の後に信仰心がより強くなったと話している。

山上被告の裁判は、来年1月まで続く見込み。