サウジ記者殺害事件、妻がアメリカへの政治亡命を勝ち取る

トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺害された、サウジアラビア人記者ジャマル・カショジ氏の妻ハナン・エラトル氏

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画像説明, トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺害された、サウジアラビア人記者ジャマル・カショジ氏の妻ハナン・エラトル氏は、アメリカに来てから3年以上にわたり政治亡命を求めていた

2018年にトルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺害された、サウジアラビア人記者ジャマル・カショジ氏(当時59)の妻が、アメリカへの政治亡命を認められたことが、21日までに分かった。

サウジアラビア政府に批判的だったカショジ記者は2018年10月、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺され、遺体を切断された。アメリカの情報当局はカショジ氏殺害にサウジアラビア政府が関わっていたとみている。

2018年にトルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺害された、サウジアラビア人記者ジャマル・カショジ氏(2012年5月8日撮影)

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画像説明, 2018年にトルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺害された、サウジアラビア人記者ジャマル・カショジ氏(2012年5月8日撮影)

カショジ氏の妻ハナン・エラトル氏は身の危険を恐れ、2020年8月に渡米し、亡命を申請した。

BBCは、エラトル氏が11月28日に無期限の亡命を認められたことを示す書類を確認した。

「私たちは勝った」と、エラトル氏はBBCに語った。「(サウジアラビア政府は)ジャマルの命を奪い、私の人生を破壊した。でも私たちは勝った」。

エラトル氏がアメリカへの政治亡命を初めて申請してから、3年以上がたっている。同氏は出身国のエジプトや、25年以上居住していたアラブ首長国連邦(UAE)に戻れば、命の危険があると主張してきた。

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UAEエミレーツ航空の客室乗務員だったエラトル氏は、仕事も生活も捨ててアメリカに渡り、メリーランド州で長らく身の安全を懸念しながら暮らしていたと、ランダ・ファーミー弁護士はインタビューで語った。

エラトル氏は結局、2021年10月に労働許可証を取得し、アメリカで新しい生活を始めた。現在は仕事とアパートを確保できているものの、生活費を稼ぐのに苦労している。

3年もの「長いプロセス」

「長いプロセスだった」とファーミー弁護士は述べた。

政治亡命が認められるまで長い時間がかかったものの、エラトル氏は「私のために扉を開いてくれた」としてジョー・バイデン米大統領と米政権に感謝した。そして、「恐怖から解放された」と述べた。

エラトル氏と米移民当局との面接は、今年3月にようやく実現した。弁護士は面接について、詳しい説明を求められ、かつ何度も繰り返されるため、「かなりトラウマ的な」ものだったとした。

エラトル氏と弁護士は、面接から60~90日以内に移民当局から回答が得られるはずと予想していた。それが11月末までかかったのは、アメリカとサウジアラビア、イスラエルの間で進行中の交渉が影響したためだと、同弁護士は考えている。

2人は様々な米議員の助けを借りたが、とりわけドン・バイヤー下院議員(民主党)とティム・ケイン上院議員(同)を、自分たちのために連邦議会で尽力してくれた支援者だとたたえた。

両議員はBBCに対して、エラトル氏を喜んで支援したのだとして、今回の知らせを聞いてほっとしたと話した。バイヤー議員は、「これほど明確に政治亡命を認めるべき事案は、めったにない」とした。

「彼女と彼女の家族のこれまでの経験を思えば、亡命が認められ、それによって安全が確保されるのは、喜ばしいことだ」とバイヤー氏は声明で述べた。「自分の夫を殺され、その責任の所在を追及するカショジさんを、私は支え続ける。(カショジ記者殺害という)ひどい不正を、私は決して忘れない」。

政治亡命が認められたことは、「ジャマルのため正義を確保するため、私たちの訴えを推進する」足がかりになると、エラトル氏と弁護士は述べた。

エラトル氏側は、カショジ氏の死に対する補償をサウジアラビア政府に求めている。また、カショジ氏の電子機器をトルコ政府から入手しようとしている。

動画説明, 失踪の記者、サウジ総領事館に入る映像

イスラエルのスパイウェア企業NSOグループに対しても、法的措置をとる方針。NSOグループは、同社開発のペガサス・ソフトウェアを世界中の強権的政府が購入・使用していると、多方面から非難されている。

BBCはNSOグループにコメントを求めている。同社は以前、不正行為を否定していた。

「私たちはジャマルのために正義を、ハナンのために心の平穏と正義を獲得すると決意している」と、ファーミー弁護士は述べた。