サウジ記者殺害事件、容疑者をフランスで逮捕

Saudi dissident Jamal Khashoggi speaks at an event hosted by Middle East Monitor in London Britain

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画像説明, ジャーナリストのジャマル・カショジ氏はサウジアラビア政府に批判的だった

フランスの警察は7日、2018年にトルコでサウジアラビア人記者ジャマル・カショジ氏(当時59)の殺害に関わった容疑で、サウジアラビア人の男性を逮捕したと発表した。トルコ当局が追ってきた26人の容疑者のうちの1人で、パリのシャルル・ド・ゴール空港で拘束したという。

RTLラジオによると、逮捕されたハリド・エド・アルオタイビ容疑者(33)は元王室警備隊の一員。本名のパスポートで渡航しようとしていた。現在は勾留されている。

サウジアラビア当局は、この件は誤認逮捕だとする声明を発表し、カショジ氏殺害の関係者はすでにサウジアラビアで有罪判決を受けているとしている。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は4日にサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談したばかり。西側諸国の国家元首が同皇太子と面会するのは、カショジ氏殺害事件以降で初だった。

マクロン氏はその後の記者会見で、「私たちはあらゆることについて話した。タブーを作らず、人権についての疑問にも触れた」と語っていた。

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サウジアラビア出身で、同国政府に批判的だったカショジ記者は2018年10月、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺され、遺体を切断された。

サウジアラビア当局は、カショジ氏を帰国させようとした工作員らによる「勝手な作戦」だったとしている。しかしトルコは、工作員らはサウジ政府の最上層部からの命令で動いていたとみている。

サウジアラビアはこの事件で国際的な非難を浴び、同国の実質的な支配者とされるサルマン皇太子のイメージも傷ついた。

サルマン皇太子は事件への関与を否定している。

同国の裁判所は2019年、匿名の8人をこの件で起訴。そのうち殺害に関わった5人に死刑判決を言い渡したが、その後、禁錮20年に減刑した。残りの3人は事件の隠蔽(いんぺい)に関わったとして禁錮7~10年が言い渡された。

国連のアニエス・カラマール特別報告者(当時)は、この裁判を「正義と正反対」のものだと批判した。2019年には、サウジアラビアが国家としてカショジ氏を「意図的に計画的に処刑」したとする調査報告を発表した。

アルオタイビ容疑者とは

カラマール氏の報告によると、サウジアラビアの検察当局は、カショジ氏殺害事件の捜査の一環でアルオタイビ容疑者を逮捕したものの、最終的には不起訴とした。

報告書では、アルオタイビ容疑者はサウジ軍の王室警備隊の一員だったと述べられている。2017年にサルマン皇太子が訪米した際にも同行していたという。

アルオタイビ容疑者は2018年10月2日にイスタンブールに到着。カショジ氏殺害の際には総領事館ではなく、領事の住居にいたとされている。

Istanbul airport CCTV footage purportedly showing Khalid Aedh G Alotaibi on 2 October 2018

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画像説明, 2018年10月2日、イスタンブール空港の監視カメラに写っていたアルオタイビ容疑者

トルコ当局はアルオタイビ容疑者を殺人容疑で起訴し、欠席裁判にかけていた。サウジ側は、同容疑者の身柄引き渡しを拒否していた。

しかし警察関係者は7日、フランス当局がトルコの逮捕状を執行したと認めた。アルオタイビ容疑者は、サウジアラビアの首都リヤド行きの飛行機に登場するところを逮捕された。

現在は人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルの局長を務めているカラマール氏はツイッターで、今回の逮捕は「正義の追求において大きな突破口になるかもしれない」と述べた。

カショジ氏の婚約者だったハテイチェ・チェンギスさんも逮捕を歓迎するとツイート。フランスが「容疑者を裁判にかけるか、それができる国へ引き渡してくれる」ことを願っていると語った。

カショジ氏殺害事件とは

サウジアラビア政権に批判的なことで知られていたカショジ氏は、2017年にアメリカに亡命。米紙ワシントン・ポストなどに寄稿していた。

2018年10月、トルコ人のチェンギスさんとの結婚に必要な書類を入手するため、イスタンブールのサウジアラビア総領事館に出向いた。

チェンギスさんは総領事館の前でカショジ氏を待っていたが、10時間たっても現れなかったという。

カラマール氏の報告書によると、カショジ氏はこの日に総領事館内で「残酷に殺害された」。この報告書は、トルコの情報機関が持っていた、サウジアラビア総領事館内で録音された会話記録に基づいている。

Saudi Crown Prince Mohammed bin Salman gives a speech from his office in Riyadh, Saudi Arabia (23 October 2021)

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画像説明, ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はカショジ氏殺害への関与が取り沙汰された

一方サウジアラビア検察局は、カショジ氏の殺害指示を出したのは、同国情報機関がイスタンブールに派遣した「交渉部隊」の部隊長だったとの見解を示している。この交渉部隊は、サウジアラビアから脱出したカショジ氏を「説得によって」、それが失敗した場合は「力ずくで」帰国させるのが任務だったという。

検察は、カショジ氏がもみ合いの末に拘束され、注射によって薬物を過剰摂取させられ死亡したと結論付けている。遺体は総領事館内で切断され、敷地外にいる現地の「協力者」に渡されたという。遺体は見つかっていない。

一方、トルコの検察当局は、カショジ氏は総領事館に入ってすぐに絞殺され、遺体が切断されたと結論付けている。