イスラエル、ガザ南部の地上作戦を強化 地図示し避難指示

ガザ地区南部の主要都市ハンユニスの、イスラエル軍の空爆があったとされる場所(4日)

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画像説明, ガザ地区南部の主要都市ハンユニスでは、イスラエル軍の空爆があったとされる場所で炎と煙が上がった(4日)

イスラエル軍は4日、パレスチナ自治区ガザ地区で空爆や地上作戦を続け、南部での攻撃を強めた。南部の主要都市ハンユニスの2割にあたる地域の人々に「安全のため」として避難を命じた。

目撃者や現地メディアによると、ハンユニスではイスラエル軍の戦車が、同市東端のイスラエルとの境界付近まで到達した。

市内の病院は次々やって来る人々であふれ返っているという。

イスラム組織ハマスが運営するガザ当局は、3日夜から4日朝にかけてガザ全域であった約200回のイスラエルの空爆のうち、6割がハンユニスに集中していたとした。

ハマスによると、ハンユニス市内と周辺の15〜20カ所が標的となった。ガザ中部ディール・アル・バラフも激しい空爆を受けたという。

こうしたなか、イスラエル軍はソーシャルメディアに地図を投稿し、ハンユニスの北部と中部から「安全のため」去るよう住民に告げた。対象は6地域で、合わせて推定16万7000人が暮らしている。

同軍はまた、ガザの北部と南部を結ぶ道路について、一部が「戦場」と化し「極めて危険」なため通行しないよう警告した。

ガザ地区のイスラエルとの境界付近を走行するイスラエル軍の戦車(4日)

画像提供, Reuters

画像説明, ガザ地区のイスラエルとの境界付近を走行するイスラエル軍の戦車(4日)

ガザ北部を8週間にわたって破壊してきたイスラエル軍は、南部でも「最大限の力」でハマスの「テロリストとインフラに対する」作戦を実行すると表明している。

南部では、北部からの避難を迫られた人々を含め、ガザの全住民230万人の多くが生活している。

国連によると、ガザの避難者はここ3週間足らずのうちにほぼ倍増し、190万人に上っている。これはガザの人口の85%以上にあたる。

ハンユニスには戦闘が始まる前、11万7000人が暮らしていた。現在はそれに加え、避難者約5万人が21カ所の避難所で生活しているという。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は4日、ガザでの戦闘が1日に再開されたことを「極めて憂慮している」とし、ガザには「安全な場所はどこにもない」と述べた。この主張はパレスチナ側がよく訴えるものだ。

ガザ地区の地図

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QRコード付きのビラで誘導

イスラエルに対しては、戦闘に多数の民間人を巻き込んでいるとの非難が出ている。

これに対しイスラエル政府高官は、民間人を標的にしておらず、「指定の安全区域」を設定していると反論。

イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官も、「地図が出てくるQRコード付きのビラを投下し、ガザの人々をより安全な地域に誘導している」と主張した。

同軍がこの取り組みを始めたのは、民間人の保護についてアメリカから強い圧力を受けているためとされる。

しかし、BBCのガザ特派員によると、住民らはこの地図のことを知らなかったり、インターネットにつながらないため見られなかったりしているという。ハンユニスの避難者は、「どこに行けばいいのかわからないのだから、これは地図ではなくジョークだ」と話しているという。

アメリカ政府は、イスラエルの民間人保護の取り組みが十分か判断するには時期尚早だとしている。

負傷者であふれ返る病院

ハンユニスのナセル病院で治療を受ける子どもたち(4日)

画像提供, Reuters

画像説明, ハンユニスのナセル病院で治療を受ける子どもたち(4日)

ガザの病院では困難な状況が続いている。

ハンユニスのヨーロッパ病院の整形外科医ポール・レイ氏は、けが人が何百人も到着し、対応し切れないとBBCに説明。「手術リストには360人以上の名前があるが、対応は不可能だ」と述べた。

レイ氏によると、同病院の廊下や敷地は6000~7000人の避難者でいっぱいで、北部から逃れてきた医療関係者もいるという。

「麻酔薬と鎮痛剤が大きな問題だ。少しずつ不足しているため、安全基準を下げている。私たちが病院を離れることはない。私たちがここにいることはイスラエル側に伝えてあるが、砲弾の破片が病院にも届いている」とレイ氏は話した。

国際医療NGO「国境なき医師団」は、ガザ中部ディール・アル・バラフのアル・アクサ病院で、直近48時間で死者100人以上、負傷者400人超がの救急室に運び込まれたと説明。さらなる受け入れ場所はないと警告した。

国連は4日、ガザ北部の4病院が部分的に稼動し、患者を受け入れているが、提供できる医療は限定されていると発表した。南部の12病院も部分的に機能しているが、病床数は戦闘前の半分に減っており、複雑な手術ができるのは1カ所だけだとした。

WHOがイスラエルに「命令撤回」要求

こうしたなか、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、ガザ南部の医療品倉庫2カ所が「地上作戦によって使えなくなる」ため物資を撤去するようイスラエル軍から通告を受けたと、X(旧ツイッター)に投稿。「命令の撤回」を求めた。

これに対しイスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、WHOの説明は不正確だとXで主張。「現実には倉庫からの避難は求めておらず、関係する国連代表らにも(文書で)はっきり伝えてある」、「国連職員には、少なくとももう少し正確であってほしい」とした。

他方、ガザの大手通信会社パルテルは、インターネットと電話がまったく使えなくなっていると発表した。主な光ファイバーの経路が遮断されたためだとしている。

ハマスが運営するガザ保健当局は、イスラエルが10月7日のハマスの襲撃への報復攻撃を始めて以降、ガザで約1万5900人が殺害されたとしている。

ハマスのイスラエル襲撃では、少なくとも1200人が殺され、約240人が人質に取られたとされる。

双方の合意によって1日朝まで7日間続いた戦闘休止では、人質105人が解放された。イスラエルの刑務所に収監されていたパレスチナ人240人も釈放された。