FIFA、スペイン連盟会長に暫定的な資格停止処分 選手へのキスめぐり

画像提供, EPA
スペインサッカー連盟(RFEF)のルイス・ルビアレス会長が、サッカーの女子ワールドカップ(W杯)で優勝したジェニファー・エルモソ・フエンテス選手の唇にキスした問題で、国際サッカー連盟(FIFA)は26日、ルビアレス会長に対して90日間の暫定的な資格停止処分を発表した。RFEFは争う構え。会長は続投する意向を示しており、RFEFは同日、キスに同意していなかったとするエルモソ選手の主張を「うそ」と呼び、法的措置に出ると表明した。
(編集部注:この記事には、ルビアレス会長がエルモソ選手にキスした際の写真が含まれます)
ルビアレス会長に対してFIFA規律委員会は24日から、懲戒手続きを開始していた。26日には、同日から当初90日間の資格停止処分を科すと発表。「この間ルビアレス氏は、国内レベルでも国際レベルでも、サッカーに関する活動を停止」するよう命じた。懲戒手続きは続行するという。
これに対してRFEFは、ルビアレス会長が法的手段で自分の立場を守ると反応。「会長はFIFAを全面的に信頼している。真実が勝ち、完全な無実が証明されるよう、会長は自分の弁護を開始する機会がこれで与えられた」との認識を示した。
RFEFは、ペドロ・ロハ・ユンコ副会長が暫定的に会長職を代行すると明らかにした。
FIFAはこの日さらに、ルビアレス氏をはじめRFEFの代理人がエルモソ選手に連絡を取ろうとすることを禁止した。RFEFはこれに先立ち、エルモソ選手にたびたび連絡しようとしたが「毎回うまくいかなかった」とコメントしていた。
FIFAの発表に先立ち、RFEFのラファエル・デル・アモ副会長が辞任を表明。「ルイス・ルビアレスが引き続きスペイン連盟のトップであり続けることがわかり、辞表を提出した」、「ルイスにはいろいろと恩があるが、決勝戦で起きたことは容認できない」と述べた。
代表監督も会長批判
サッカー女子スペイン代表のホルヘ・ビルダ監督は同日夜、エルモソ選手に対するルビアレス会長の行動は「不適切で容認できない」と批判した。
ビルダ監督は声明で、「これまで我々のトップだったルイス・ルビアレスによる不適切な行動のため、スペイン・サッカーの女子代表による勝利に傷がついてしまったことを、深く残念に思う。自分の行動は不適切だったと、ルビアレス自身が認めている」と述べた。
「容認できない行動なのは疑いようもない。私が人生において、スポーツ全般において、特にサッカーにおいて、守ってきた原理原則や価値観とはまったく裏腹なものだ」
「スペインのスポーツと女性のスポーツにとって素晴らしいお祝いだったはずが、それとはかけ離れて、明らかに望ましくない空気が生まれてしまった」と監督は続け、「私たちの社会における平等と尊重の手本となるよう、スポーツを推進していくことに、私は引き続き注力していく」と述べた。
スペイン女子代表チームのコーチ陣は全員、会長に抗議して辞任している。ビルダ監督は辞任していない。
女子代表チームでは昨年9月、選手15人がビルダ監督のチーム運営手法を批判し、自分たちの精神状態と健康に悪影響を与えているとRFEFに抗議していた。15人のうち代表チームに復帰したのは3人だけだった。
FCバルセロナを率いるシャビ・エルナンデス監督は、「私はジェニファー・エルモソとほかの選手たちを無条件で支持する。スペインサッカー連盟会長の振る舞いを、私は非難する」とソーシャルメディアで書いた。
26日のFIFAの決定を受けて、かつてスペインのFCバルセロナでプレーしたギャリー・リネカー元イングランド代表主将は、「スペイン女子代表の素晴らしい功績」が、ルビアレス会長によって「すっかりかすんでしまったことは、本当に情けないことだ」とBBCのサッカー番組「マッチ・オブ・ザ・デイ」で述べた。
同番組のレギュラーで元イングランド代表フォワードのイアン・ライト氏は、ルビアレス氏が副会長を務める欧州サッカー連盟(UEFA)が沈黙していることを批判した。
「(FIFAの対応は)よかった。でもUEFAは沈黙している。連帯していない。自分たちの副会長の振る舞いについてコメントしていない」とライト氏は指摘。さらに、「同じUEFAの会長は、女子W杯の決勝で対戦したのが共に欧州の代表チームだったのに、当日出席しなかった。女子サッカーの未来を推進する、その先頭に立つ責任者はこの人たちなのに」と述べた。
これまでの経緯
ルビアレス会長は20日に行われた決勝戦後のトロフィー授与式で、エルモソ選手の唇にキスした。エルモソ選手はスペイン代表とバルセロナの歴代最多得点者。
エルモソ選手はその後、インスタグラムに「いやだった」と書いたが、RFEFを通して自身の名前で出した声明では、ルビアレス会長を擁護した。
ルビアレス会長は21日に「私は完全に間違っていた。それを認めざるを得ない」と述べたが、問題を協議するため25日に開かれたスペインサッカー連盟の緊急総会では、大方の予想と異なり、「辞任しない、辞任しない」と強調し、「いま行われているのは、社会的な暗殺だ」と主張した。
これを受けてエルモソ選手は25日、自分はキスに同意していなかったと発言し、会長の説明はまったく事実と異なっていると述べた。この事態にスペインの女子選手81人が、ルビアレス氏が解任されない限り、自分たちは代表チームに参加しないと表明した。これに対して連盟は26日、会長はうそをついていないと反論し、エルモソ選手に対して法的措置をとると表明した。

画像提供, RFEF

会長は総会で、「このように追い込まれるようなことを、したわけではない」として、当時の状況について「私を持ち上げたのはジェニの方だ。私は(イングランドのGKメアリー・アープスが阻止した)ペナルティーのことは忘れようと言い、彼女に『軽くチュッてしようか?』と言うと、彼女は『OK』と答えた」のだと説明。
「その場の勢いでの自発的なキスだった。双方からの、感極まった状況での、お互いに同意してのことだ。同意していたというのがポイントだ。それで『軽くチュッ』としただけで、こんなことになってしまうのか?」と会長は述べた。
これを受けてエルモソ選手は25日にインスタグラムで、「あの残念な出来事に関するルイス・ルビアレス氏の説明は、完全に事実と異なり、彼自身が作り出した他人を懐柔し操ろうとする風潮の一部だ」と反論。
「明確にしておきたい。会長が(総会で)述べたようなやりとりは、一切なかった」と、選手は太字で強調。「何より、彼からのキスに同意したこともない。前にも書いたように、私にはいやな一件だった」と書いた。
「お祝いの最中だったこともありショックだった。時間がたち、自分の当時の気持ちを深く探った結果、この件を報告する必要があると思うようになった。職場だろうがスポーツだろうが社交の場だろうが、誰もこのような同意のない行動の被害者になってはいけないと思う」
「私は、自分がまったく同意していない、衝動的で性差別的で場違いな行動の被害者になった、自分は弱者になってしまったと感じた。簡単に言えば、私は尊重されなかった」
エルモソ選手はこう続けたうえでさらに、「会長へのプレッシャーをやわらげるため、共同声明を出すよう求められた」とも書いた。

画像提供, EPA

スペイン女子サッカー選手会FUTPROは25日、「女子ワールドカップの表彰式で起きたことを受け、この手紙に署名する選手全員は、現在の指導部が留任するなら代表チームには参加しない」と発表した。署名した選手には、ワールドカップ優勝チームの23人が全員含まれている。
スペイン代表の次の試合は9月22日。UEFAネーションズリーグでスウェーデンと対戦する予定。
RFEFは反論
こうした中でスペインサッカー連盟は26日、エルモソ選手に反論。同選手を代表するスペイン女子サッカー選手会FUTPROが、トロフィー授与式で「私は会長を持ち上げようなどとは一切していない」というエルモソ選手の主張を公表したのに対し、決勝戦後のトロフィー授与式壇上での2人の写真4枚と合わせて、選手が会長を持ち上げたのだと主張した。
そのうえで連盟は、「証拠は決定的だ。会長はうそをついていない」、「連盟と会長は、選手の代わりに、あるいは選手自身によって拡散されているうそを、ひとつひとつうそだと示していく」、「連盟と会長は、FUTPROが発表した報道資料の深刻な内容にかんがみ、相応の法的措置を開始する」と述べた。

画像提供, RFEF

RFEFはさらに、女子選手81人が現状のままでは代表チームに参加しないと表明したことについて、選ばれた選手は代表チームでプレーする「義務」があると反論した。
イングランド代表や男子代表も会長を批判
決勝戦でスペインと戦ったイングランド代表は25日、「性差別的で家父長制的な組織によって、受け入れられない行動が起きてしまった。加害は加害で、私たちは全員、真実を目にした」と声明を出した。
「自分は無敵だと思う人たちの振る舞いを受け入れてはならないし、どのようなものだろうといやがらせに対して行動を起こすために、誰かを説得する必要などないはずだ。ジェニ・エルモソ、私たちはあなたとスペイン代表の選手たちを支持する」
スペインサッカーの男子代表で、レアル・ベティスに所属するFWボルハ・イグレシアス選手は25日、ルビアレス会長が辞任するまではスペイン代表でプレーしないと表明した。

画像提供, Eurasia Sport Images









