英バンド「The 1975」、マレーシアの反同性愛法を批判し演奏禁止に 他のアジア公演も中止

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イギリスのポップ・ロックバンド「The 1975」が、インドネシアと台湾で予定されていたコンサートをキャンセルすると発表した。先に出演したマレーシアでの音楽フェスで、同国の反LGBTQ(性的マイノリティー)法を批判し、公演が即時中止となっていた。
ボーカルのマッティー・ヒーリーさんは21日のマレーシア公演で、同国の反LGBTQ法を批判。ステージ上でベーシストのロス・マクドナルドさんにキスした。その直後、「The 1975」はマレーシアでの演奏を禁止された。
マレーシアでは同性愛は違法とされており、最長20年の禁錮刑となる。
イスラム教徒が多数のインドネシアでは、同性愛は違法ではないものの忌避されている。また、保守層の多いアチェ州では禁止されている。
一方、台湾はLGBTQコミュニティーに寛容な場所とみられている。台湾は2019年、アジアで初めて同性婚を合法化した。
「The 1975」は、インドネシアと台湾の公演は「現状を踏まえて」キャンセルすることになったと発表。詳細については明らかにしていない。
また、23日に「The 1975」が出演する予定だったジャカルタの音楽フェス「We the Fest」は声明で、現在の状況の影響で「予定されていたコンサートができなくなった」とバンドが表明したと説明した。
マレーシアのLGBTーコミュニティーからは、20日の出来事にいらだちの声も上がっている。自分たちのコミュニティーにスポットライトが当たることで、スティグマ(烙印=らくいん)や差別が助長されるのではないかという懸念だ。
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クアラルンプールで行われた音楽フェスでヒーリーさんは、「The 1975を呼んでおいて、そのあとで僕たちに、誰とセックスしていいか指示するなんて、そんなのは全く理解できない」と語った。
「残念ながら、盛り上がる曲だらけのセットをみんなは聴けない。僕はものすごく怒っているので」
「みんなには不公平だ。みんなは政府の代表じゃないから。若者だし、たくさんのゲイや先進的な考えの人、クールな人がいると知っている」
ヒーリーさんはその後、メンバーのマクドナルドさんにキスし、「I Like America & America Likes Me」を演奏した。
キスの直後にヒーリーさんを含むバンドメンバーはステージから降りた。演奏時間は30分ほどだった。ヒーリーさんは観客に対し、「さて、僕たちはクアラルンプールから(演奏を)禁止された。また今度」と告げた。
フェスの主催者は翌22日、予定されていた他の出演者の演奏も全てキャンセルすると発表した。
主催者は声明で、マレーシアの通信・デジタル省が「同国の法律に異議を唱えたり、嘲笑したり、違反したりするいかなる当事者に断固たる姿勢を示す」一環として「即時取り消し命令」を出した後に、この決定を行ったと説明した。
マレーシアの当事者からは批判の声も
マレーシアのドラァグクイーン、カーメン・ローズさんは、ヒーリーさんの反同性愛法批判は「見せかけ」で「手に負えない」ものだと述べた。
BBCワールドサービスの「ニューズアワー」に出演したローズさんは、「あれは、いかにも白人が『君たちを救ってあげるよ』とやりたがる上から目線の態度そのもので、私たちのコミュニティーのためにやったわけじゃない」と指摘した。
「もし私たちのコミュニティーのことを思ってやったのなら、私たちがその後どういう影響を受けるか知っているはずだ」
また、地方選挙が近づく中で、マレーシアの政治家はこの出来事を「スケープゴート」に使うだろうと話した。
「今回のことは、(保守派の)政治家に同性愛嫌悪的な指針が票を稼ぐための格好の武器を与える」
ローズさんは、マレーシアでのLGBTQコミュニティーの人々の暮らしについて、「政府は私たちの味方ではない」と述べた。ローズさん自身も、マレーシアでは自由にドラァグクイーンとしての活動ができないため、シンガポールに赴いているという。
その上で、LGBTコミュニティーのメンタルヘルス(こころの健康)は、政府や社会からの絶え間ない監視や批判によってひどい影響を受けていると話した。
一方、「The 1975」の関係者は21日、「マッティーは長年にわたりLGBTQ+コミュニティーを擁護してきた実績があり、バンドもLGBTQ+のファンやコミュニティーのために立ち上がりたいと考えていた」と語った。
ヒーリーさんは過去にも、ステージ上で反LGBT法を批判している。
2019年には、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイでのコンサート中に男性の観客にキスをした。同性愛行為が最長10年の禁錮刑となる同国で、この出来事は批判を浴びた。
ヒーリーさんはこの公演後、ツイッターで「ありがとうドバイ、素晴らしかった。僕の『ふるまい』のせいで戻って来られるとは思わないけど、皆さんを愛しているし、もう一度チャンスがあったら同じことをするつもりだ」と話していた。







