ギリシャ沖で沈没の移民船、子ども100人近く乗船か 全体で750人との証言も

ニック・ビーク(ギリシャ・カラマタ)、ジョージ・ライト(ロンドン)、BBCニュース

Boat before it sank

画像提供, Hellenic Coast Guard

画像説明, ギリシャの沿岸警備隊が公表した、転覆する前の漁船の写真

地中海のギリシャ南部沖で移民を乗せた漁船が沈没した事故で、船内には最大100人近くの子どもが乗っていた可能性があると、生存者が話している。この事故は、ヨーロッパで起きた移民が絡んだ惨事で、過去最悪レベルのものとなっている。

15日までに少なくとも78人の死亡が確認されている。104人が救助され、全員男性だという。

漁船には最大750人が乗っていたとも報じられており、多数が行方不明になっているとみられる。

ギリシャのテレビは、エジプト人数人を含む9人が人身売買の疑いで逮捕されたと伝えている。

ギリシャの沿岸警備隊には、早期に介入しなかったとの批判が出ている。これに対し当局は、救助の申し出が拒否されたとしている。

生存者発見の望みが薄れる中、ギリシャ南西の海岸から約50カイリ(約92キロ)の海域で捜索活動が続けられている。

ギリシャのメディアによると、船はエジプトを空の状態で出港し、リビア・トブルク港でイタリアに向かう移民を乗せたという。

船の画像では、デッキが人で埋め尽くされている。主に男性生存者らの治療に当たった医療関係者らは、船倉に多数の女性や子どもがいたとする話を聞いたとしている。

ギリシャのカラマタ総合病院のマノリス・マカリス医師は、「(生存者たちは)船底に子どもたちがいたと言っていた。子どもと女性たちのようだ」とBBCに説明。「(生存者の)一人は子どもが約100人いたとし、もう一人は約50人だったと話した」とした。

同医師はまた、「正確な全乗船者数は750人だ。全員、私にそう言った」とし、死者は600人近くに上る可能性があるとの見方を示した。

そのうえで、「ヨーロッパの誰も、この状況を受け入れてはならない。二度とこのようなことが起こらないよう、皆が何かをしなければならない」と訴えた。

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生存者の一人は、ギリシャメディアANT1から船内に子ども100人がいたのかと聞かれ、「そうだ」と答えた。

BBCはこうした人数を独自に確認できていない。ただ、慈善団体「セーブ・ザ・チルドレン」も生存者の証言を基に、同様の人数を挙げている。

ギリシャ政府のイリアス・シアカンタリス報道官は、船倉に何人いたかは不明だと説明。「ただ、密航業者らが統制を保つため、大勢を閉じ込めるのは承知している」と述べた。

Photo of boat at night

画像提供, Hellenic Coast Guard

画像説明, ギリシャ沿岸警備隊が15日に公表した漁船の写真。沈没の数時間前とされる
Presentational white space

ギリシャ南部カラマタには、行方不明者の家族らが集まっている。

イギリスから来たアフタブさんは、パキスタンの親族の少なくとも4人が行方不明だとBBCに話した。

オランダに住むシリア人男性カサーム・アボジードさんは、妻と義理のきょうだいが行方不明だと言って泣き崩れた。

Syrian Kassam Abozeed, 34, who says his wife Israa and brother-in-law were onboard a boat with migrants that capsized at open sea off Greece, demonstrates a photo of him and his wife, at the port of Kalamata, Greece, June 15, 2023

画像提供, Kassam Abozeed

画像説明, カサーム・アボジードさん(左)は、妻(右)と義理のきょうだいが乗船していたと話した
Presentational white space

漁船が危険な状態だと13日朝に最初に訴えたのは、船内の人から連絡を受けた活動家のナワル・ソウフィさんだった。

ギリシャ沿岸警備隊によると、同日午後2時に漁船と最初に連絡を取ったが、救助要請はなかった。海運当局が繰り返し連絡したが、船からはイタリアを目指しているとの説明だけがあったという。

夕方以降、商業船2隻が水を届けた。ソウフィさんのフェイスブックへの投稿によると、1隻が漁船に近づいてロープで連結し、水の入ったボトルを船に投げ入れたとき、状況が「複雑」になったという。

当時、ロープや、水をめぐる争いが原因となって、漁船が転覆するかもしれないと「極度の危険」を感じていた人もいたという。その後、漁船は離れていったという。

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沿岸警備隊によると、14日未明に漁船のエンジンが故障。船内で人々が動き回り、船が転覆したという。

海でトラブルに見舞われた移民の緊急連絡先となっている「アラーム・フォン」は、「救助隊が派遣される何時間も前から(沿岸警備隊は)漁船の遭難を認識していた」と主張。当局について、「さまざまな情報源から情報を得ていた」とした。

動画説明, 生存者の救助活動
Presentational white space

しかし、沿岸警備隊の報道官は、漁船に対して助けを求めるよう呼びかけていたとし、「救助が必要になる時に備えてそばにいた」と述べた。

ギリシャのアレクシス・チプラス元首相は15日、カラマタを訪問。何が間違っていたのか、生存者に話を聞いた。

通訳は、「ギリシャ沿岸警備隊は、船についてくるよう言ったが、できなかった」、「沿岸警備隊はその後ロープを投げたが、ロープの引き方が分からず、船は右へ左へ揺れ始めた」と説明。

「沿岸警備隊の船は速すぎた。船はすでに左に揺れていて、そして沈んだ」と述べた。

今回の事故を受け、ギリシャは3日間の喪に服している。首都アテネや第2の都市テッサロニキなどでは15日夕、抗議のデモ行進が行われた。

ギリシャは、中東、アジア、アフリカからの難民や移民が欧州連合(EU)に入る主要ルートの1つとなっている。

先月には、海で漂流した移民を強制的に追い出したとされる映像が出回り、ギリシャ政府は国際的な批判にさらされた。