米FOXニュースの看板キャスター降板、解雇か CNNも有名司会者を解雇

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米ケーブルテレビ局FOXニュースは24日、看板キャスターの降板を発表した。本人は「また月曜に」と最後の番組を締めくくっていたため、解雇とみられている。一方、米CNNの有名司会者も同日、いきなり解雇されたと明らかにした。
FOXニュースは声明で、タッカー・カールソン氏(53)と「別々の道を行く」ことで合意したと発表した。今月21日夜に放送された番組「タッカー・カールソン・トゥナイト」が、カールソン氏の最後の出演となったという。平日午後8~9時のゴールデンタイムに放送されてきたカールソン氏の番組は、米ケーブルテレビで最高の視聴率を確保していた。後任司会者が決定するまで、暫定的な代理司会者が何人か交代で番組を担当する見通し。
FOXニュースの声明は、降板の理由を説明していない。
24日夜の放送ではニュース・キャスターが、カールソン氏の退任を伝え、「ネットワークに尽くしてくれたことに感謝」すると述べた。
FOXニュースの決定はいきなりだった様子で、局の看板を長年務めたキャスターの退任につきもののお別れのあいさつなどは特になかった。
米ジャーナリストのアーロン・ルーパー氏がツイッターに投稿した動画クリップでは、21日夜の番組を、カールソン氏が「ではまた月曜日に」と締めくくっている様子が見える。
カールソン氏は保守派視聴者の間で絶大な人気を誇るだけでなく、アメリカ政治の動きにも影響力を持った。2016年開始の「タッカー・カールソン・トゥナイト」はしばしば、保守派にとって何が重要な課題なのかを提示し、それがひいては共和党にとっての政策課題となっていた。
カールソン氏は番組で、移民問題や犯罪対策、人種やジェンダーなどさまざまな問題について、保守的かつ大衆的な立場から、リベラルな考え方を激しく攻撃した。
米調査会社ニールセンによると、3月27日~4月2日の米ケーブル視聴率で上位10位の番組のうち1位から4位までが、「タッカー・カールソン・トゥナイト」の放送だった。
平均的な1回の視聴者数は300万人以上で、カールソン氏は司会者としてFOXニュースで最高の視聴率を得ていた。
カールソン氏は番組など公の場ではしばしば、ドナルド・トランプ前大統領を支持し、その考え方に賛同していた。ただし、内々ではトランプ氏を批判することもあったとされる。
投票機メーカーのドミニオン・ヴォーティング・システムズは、2020年米大統領選をめぐるFOXニュースの報道によって名誉を傷つけられたとFOXニュースを訴えていた。FOXニュースは当時、ドミニオン社の投票機がトランプ氏に不利に細工されていたと繰り返し伝えていた。ドミニオン社側は、訴えの中でカールソン氏の番組が自社の名誉を繰り返し傷つけたと主張した。
この裁判資料としてFOX関係者のメールなどが公表され、カールソン氏は番組ではトランプ氏を支持し、ドミニオンなどが加担した「不正選挙」だと繰り返していたものの、社内メールではトランプ氏のことが「激しく大嫌い」だと書いていたことが明らかになった。ただし2週間前にも、カールソン氏はトランプ氏をインタビューしている。
ドミニオンによる訴訟について両社は今月18日、和解に達したと発表したばかり。FOXはドミニオンに、7億8750万ドル(約1060億円)の和解金を払うことになった。
さらにFOXニュースとカールソン氏については、元番組プロデューサーで、ゲスト出演者を確保する担当だったアビー・グロスバーグ氏が、社内で性差別的な扱いを繰り返し受けて権利を侵害されたとFOXやカールソン氏ら同社関係者を提訴。カールソン氏が職場で、「悪辣(あくらつ)な性差別的ステレオタイプ」にもとづく行動を繰り返していたと主張している。
この訴えに対してFOXニュースは反訴し、グロスバーグ氏の主張を「徹底的に反証していく」姿勢を示している。
カールソン氏はFOXニュースの司会者になる前は、CNNやMSNBCで番組を持っていた。2005年に人気コメディアンで人気政治コメディ番組「ザ・デイリー・ショー」の当時の司会者だったジョン・スチュワート氏とCNNの番組で討論し、「君がここでやっていることはアメリカを傷つけている」と厳しく批判された後、CNNを離れた。その後は、共和党関係者と共にニュースサイトを立ち上げていた。
FOXニュースの株価下落
FOXニュースの親会社で、「メディア王」とも呼ばれるルーパート・マードック氏が所有するFOXコーポレーションの株価は、カールソン氏降板の発表から、ニューヨーク株式市場で3%以上下落した。
最近では、ドミニオン社との和解発表の直後も同程度下落したが、その後は速やかに回復していた。
カールソン氏降板によるFOXニュースへの経済的な影響としてはほかに、ケーブル各社がFOXニュースの配信に対して支払う「キャリッジ・フィー(配信料)」をめぐり、今後の価格交渉で、FOXに対する値引き圧力がかかる可能性がある。
CNNの人気キャスターも

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一方、米CNNの著名ニュースキャスター、ドン・レモン氏(57)は24日、CNNから「解雇」され「ぼうぜんとしている」とツイッターで発表した。自分の代理人からいきなり解雇を知らされたとして、「経営陣の誰かが直接話をしてくれる配慮もなかった」と書いた。
CNNで17年間キャスターを務めてきたレモン氏は直近では、内容を刷新したばかりの朝の番組で司会をしていた。
CNNのクリス・リヒト会長は声明で、「CNNとドンは別の道を行く。ドンは永遠にCNNの家族の一員だ」と述べた。
CNN広報はツイッターで、「今朝の展開に関するドン・レモンの発言は不正確だ」とレモン氏のツイートに反論。「経営陣と話し合う機会を与えられたにもかかわらず、代わりにツイッターで声明を発表した」としている。
レモン氏は今年2月、共和党から米大統領選に出馬すると発表したニッキー・ヘイリー元国連大使(51)について「全盛期の年齢とは言えない」と番組で発言し、広く批判された。レモン氏はこの発言についてまもなく謝罪している。
ほかにもレモン氏については、女性同僚への差別的な言動があったと報道されたものの、本人はこれを否定している。
他方で米紙ニューヨーク・タイムズは、19日の番組でレモン氏が、共和党から大統領選に出馬しているヴィヴェク・ラマスワミ氏と、アメリカにおける黒人の歴史と銃保有権の関係について激しく議論したことが、CNN経営陣の判断に影響した可能性を指摘している。







