元NATO軍事委員長がチェコ大統領に 西側とのつながり強化
ロブ・キャメロン(プラハ)、マリア・ザッカロ(ロンドン)、BBCニュース

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チェコで28日に大統領選の決選投票が行われ、退役将軍で元北大西洋条約機構(NATO)軍事委員長のペトル・パヴェル氏(61)が、アンドレイ・バビシュ前首相に勝利した。
パヴェル氏の得票率は57.6%だった。2017~2021年にチェコの首相だったバビシュ氏は、結果発表後すぐに敗北を認めた。
現職のミロシュ・ゼマン大統領は、3月に退任する予定。
パヴェル氏は結果発表後、真実や誠実、敬意、謙虚といった価値観が勝ったのだと述べた。
「チェコ国民の大半がこの価値観を共有している。今こそこの価値観を『城』と政治に戻すべきときだ」
チェコの大統領府はプラハ城に置かれている。パヴェル氏の支持者らは、1989年11月に共産党政権が崩壊したビロード革命で使われたスローガン「ハヴェルを城へ!」にちなみ、「パヴェルを城へ!」と叫んだ。
チェコの大統領職はほとんど儀礼的なものだが、影響力は大きい。首相や中央銀行総裁を任命するほか、外交方針に関与できる。
ウクライナ支援も争点

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今回の決選投票は、大衆主義者で少数独裁的な政治を行ってきたバビシュ氏か、リベラルな民主主義政治を掲げるパヴェル氏かの2択だと目されていた。
パヴェル氏はチェコを欧州連合(EU)やNATOに留めおきたい考え。ロシアのウクライナ侵攻に関しては、ウクライナへの軍事支援を強く支持していた。2015年から2018年には、NATO軍事委員長として、加盟30カ国で構成する軍事機構のトップを務めていた。
一方のバビシュ氏は今週初め、NATO加盟国が攻撃された場合、その国を守る義務を果たすつもりはないと示唆して批判を浴び、撤回を余儀なくされた。
バビシュ氏はテレビ討論会で、「私は平和を望み、戦争は望まない」として、「どんな状況でも、我々の子供や、女性の子供たちを戦争に送るわけにはいかない」と述べていた。
西側の一員
ヴァーツラフ・ハヴェル氏は、革命後に共和制となったチェコの初代大統領。チェコのEUやNATO加盟を強く後押ししてきたパヴェル氏は、ハヴェル氏の精神を引き継いでいると言われている。
パヴェル氏の大統領選出により、チェコが西側の一員となることがあらためて確認されたと受け止められている。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、パヴェル氏の当選を祝福し、「我々、欧州の価値観への強い寄与」を歓迎した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領やコソヴォのヴィヨサ・オスマニ大統領も、ソーシャルメディアでパヴェル氏を祝った。
同じく西側寄りでリベラル派のズザナ・チャプトヴァ・スロヴァキア大統領は、結果が発表された数時間後にチェコを訪れ、パヴェル氏と対面した。
偽情報と殺害予告

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選挙中、両陣営は鋭く対立した。殺害予告や偽情報の拡散も、選挙戦に影を落とした。
先週には、ロシアのヤンデックスのサーバーを使った偽のウェブサイトや電子メールが、「パヴェル氏死亡」という偽情報を拡散した。パヴェル氏はツイッターでこれを否定しなければならなかった。
バビシュ氏はこの偽情報を非難。自身も匿名の殺害予告を受けたため、数日前から全ての対面の選挙活動をとりやめていた。
バビシュ氏率いる「ANO」の事務所では、職員が笑顔を浮かべていたものの、落胆の色は明らかだった。
バビシュ氏は記者団に対し、パヴェル氏の勝利を祝福するとともに、ネガティヴ・キャンペーンを行ったことを否定した。
また、ツイッターにいる大勢の反対派への返答として、「バビシュのいない世界をお迎えください。バビシュのことは忘れて、バビシュなしで生きてみてほしい」と語った。
「バビシュを憎みながら朝を迎え、バビシュを憎みながら眠りにつくのはやめよう」






