ゼレンスキー氏、解放された街ヘルソン訪問 「長く困難な道のり」が待ち受けていると

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は14日、ロシア軍が撤退した南西部ヘルソン州の州都ヘルソンを訪問した。ヘルソン市はロシア軍の支配から解放されたものの「長く困難な道のり」が待ち受けていると、ゼレンスキー氏は述べた。一方で面会した兵士たちに対し、ウクライナは「前進」しているとも語った。
ヘルソン市を訪問したゼレンスキー氏は、主要な行政庁舎に国旗が掲げられる中で、ウクライナ国歌を歌った。
「我々は平和のための準備ができている。しかしその平和とは、我が国全体のための平和だ」とゼレンスキー氏は述べた。「我が国全体が(ウクライナの)領土だ。(中略)だからこそ我々はロシアの侵略行為と戦っている」。
また、自分たちは「一歩一歩」ウクライナの「占領されたすべての場所に向かって進んでいる。もちろん困難が伴う。これは長く困難な道のりだ」と述べた。

戦略上の要衝ヘルソンを失うことは、ロシアにとって大きな後退と言える。しかし、ロシア政府は、同市はロシアの領土のままだと主張している。
侵攻開始から数週間後の3月にロシア軍に占領されたヘルソン州は、9月に実施されたロシアへの編入の是非を問う「住民投票」で不法に併合された4州の1つだ。
ヘルソン市は、ロシア軍が唯一占領した州都だった。
市内に残された親ロシア派の看板や断続的に続く砲撃は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が完全に軍を撤退させたわけではない事をうかがわせている。

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住民を前に演説
ゼレンスキー氏ヘルソン市内の広場で、ウクライナ国旗を振ったり肩にかけたりしている群衆を前に演説した。
ゼレンスキー氏は北大西洋条約機構(NATO)とそのほかの同盟国による支援に感謝を述べ、アメリカから提供された高機動ロケット砲システム「ハイマース」が大きな違いをもたらしたと付け加えた。
ウクライナ軍が次に前進するのはどこかと問われると、「モスクワではない。(中略)我々は他国の領土に興味はない」と答えた。
ヘルソンがスイカの名産地であることから、「スイカが欲しくて」ヘルソンに来たと冗談を飛ばす場面もあった。いまではスイカはウクライナで抵抗のシンボルとして親しまれている。
解放されたほかの地域とは異なり、ヘルソンは比較的被害が少ない。ロシア政府はここで、占領が正当なものであるかのように見せようとしていた。
8カ月にわたるロシア軍の抑圧的な支配から脱し、市内の商店では今週からウクライナ通貨フリヴニャが使えるようになった。住民はこれまでロシア通貨ルーブルでの取引を余儀なくされていた。
ロシア軍の占領下でも営業を続けていた食料品店の従業員は、ロシア兵が「ただでビールを飲みに来ていた」と証言した。断ると「私たちを殺しに戻ってくる」とロシア兵に言われたという。

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ロシアの反応
ゼレンスキー氏のヘルソン訪問を受け、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官は「この件についてコメントしない」とした上で、「この領土(ヘルソン)はロシア連邦の一部だ」と付け加えた。
アレクサンドル・グルシュコ外務次官は、ロシアは和平交渉の前提条件としての軍隊の撤退には同意しないと述べた。
ロシアのインタファクス通信によると、グルシュコ氏は「そのような条件は受け入れられない」と述べ、こう続けたという。
「我が国の大統領は協議する用意があると繰り返し言っている。しかしこの協議は当然ながら、現地の状況を考慮したものでなければならない」
ゼレンスキー氏は先に、ロシア軍が手放したヘルソンの複数の地域で、当局が400件以上の戦争犯罪を発見したとしていた。
BBCはこうした戦争犯罪疑惑を検証できていない。
ロシア政府は自軍が意図的に民間人を標的にしている事実はないとしている。
祝賀ムード広がるも「まだ終わっていない」
ロシア軍の撤退後、ヘルソンは祝賀ムードに包まれたが、ウクライナ政府は「まだ戦争が終わったわけではない」と警告している。
BBCのジェレミー・ボウエン国際編集長は街の雰囲気について、歓喜と安堵(あんど)に満ちていたが、同時に恐怖感もあったと報告している。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ロシアを過小評価するのは「間違い」だと警告。オランダ政府関係者との協議で、「今後数カ月は困難な状況になるだろう」と述べた。
「この冬にウクライナを寒くて暗い状態のままにしておくことが、プーチンの狙いだ。だから我々はこのままやり遂げなければならない」
国連総会、ロシアに賠償要求の決議を採択
こうした中、国連総会は14日、ウクライナ侵攻を続けるロシアに損害賠償を要求する決議を賛成多数で採択した。
日米英など94カ国が賛成し、ロシアや中国など14カ国が反対、73カ国が棄権した。決議に拘束力はないが、政治的な重みがある。
決議は、ロシアが「国際的に不正な行為の法的結果をすべて負担しなければならない。これには、そのような行為による損害などへの賠償が含まれる」としている。
過去4回の国連決議もロシアの侵攻を批判している。















