ペロシ米下院議長宅で夫襲撃の男、殺人未遂や誘拐未遂で訴追

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アメリカ司法省とカリフォルニア州サンフランシスコの検察は10月31日、米政界の実力者、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)と夫ポール氏(82)の自宅に押し入り、ポール氏に重傷を負わせた男を、殺人未遂や連邦政府職員の家族への暴行など、複数の罪状で訴追した。男はペロシ議長への誘拐未遂罪にも問われることになった。
司法省とサンフランシスコ地検によると、デイヴィッド・デパピ容疑者(42)は28日未明、サンフランシスコ市内にあるペロシ夫妻の自宅に押し入り、夫ポール氏をハンマーで襲い、重傷を負わせた。ペロシ議長を探して「ナンシーはどこだ」と叫びながら、犯行に及んだ疑い。
警察は犯行動機を捜査中だが、「無作為の行動ではなかった」としている。
司法省は、容疑者を連邦法違反2件で訴追。連邦職員の公務への報復としてその家族を襲撃した罪については、有罪になった場合、最高30年の禁錮刑が言い渡される可能性がある。ペロシ議長の誘拐未遂でも訴追され、この最高刑は禁錮20年。
サンフランシスコ地検はこれに加え、殺人未遂や高齢者虐待など6件の罪で訴追。罪状はさらに増える可能性があるという。
ブルック・ジェンキンス地方検事は、犯行は「政治的な動機によるもの」のようだとして、容疑者は「平行して複数の罪状で起訴されることになる」と説明した。
司法省によると、容疑者は逮捕時にテープ1巻、白いロープ、2本目のハンマー、複数の結束バンドを所持していた。ペロシ下院議長を人質に取り、自分に「うそをついた」場合は「彼女の膝頭」をたたき割るつもりだったと、容疑者は供述しているという。
こうしてペロシ議長が負傷した場合、連邦議会に入る際には車いすを必要とすることになり、それは他の政治家へのメッセージになるはずだと、容疑者は警察に話したという。
ポール氏は頭蓋骨を骨折し、右腕と両手に重傷を負った。ペロシ議長は事件当時、東海岸のワシントンにいたが、事件を知り、夫ポール氏が搬送された病院に急いだ。
ペロシ議長は31日夜に声明を発表し、病院スタッフに感謝したうえで、「ポールの容体は順調に改善しています。回復にはこれから長い時間がかかるはずです」と述べた。
捜査関係者によると、容疑者はペロシ議長のほかにも複数の政界幹部を襲撃対象にしたリストを作成しており、今回の事件以外にも襲撃を計画していた可能性がある。BBCがアメリカで提携するCBSニュースに、捜査筋が話した。
デパピ容疑者は現在、サンフランシスコの留置施設に勾留されており、11月1日に出廷する予定だ。
警察への通報は28日午前2時23分。調べによると、男はガラスの扉を割って侵入したとみられている。
ポール氏は事件後、警察に対して、見たことのない男が寝室に侵入してくるまで自分は寝ていたと説明した。トイレに行く必要があると男に伝え、そこにあった携帯電話から緊急通報番号「911」にかけたという。
現場に急行した警官たちは、ポール氏と容疑者がハンマーをつかんでもみあっているのを発見。容疑者がハンマーを奪い、ポール氏を攻撃したという。警官たちが容疑者を取り押さえ、ハンマーを取り上げたところ、ポール氏は意識を失い床に倒れていたという。
メリーランド州ボルティモア出身のペロシ氏は、1987年からサンフランシスコを地盤に下院議員を務め、地元と首都ワシントンを行き来している。2007~2011年と2019年1月以降、下院議長として、大統領権限の継承順位2位にある。
来月8日の中間選挙を前に、全米各地の民主党議員らと、資金集めや選挙活動を続けていた。
夫のポール氏は、ベンチャーキャピタル会社の創業者で億万長者。生まれ育ったサンフランシスコで、主に暮らしている。
夫妻は1963年に結婚し、5人の子供がいる。ペロシ氏は、ポール氏の投資による資産もあわせ、最も裕福な下院議員の1人となっている。

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アメリカでは今月8日、連邦議会の上院の一部と下院の全議席が改選対象の中間選挙が行われる。その直前に、大統領権限の継承順位2位の下院議長をねらった襲撃事件が起きたことから、政治的暴力の悪化が懸念されている。
議長宅襲撃からまもなく米政府は、「イデオロギー的な怨恨(えんこん)」を動機にした人間が、選挙の候補や選挙職員に対して「過激主義による暴力」を働く「危険が高まっている」として、全国の捜査機関に注意喚起した。
BBCは、デパピ容疑者の名前で作成されたブログやウエブサイト、ソーシャルメディアのアカウントを確認。そこには、反ユダヤやホロコースト否定の内容が大量に掲載され、極右ウエブサイトや「Qアノン」といった陰謀論への言及も多く書き込まれていた。
容疑者はこのほか、2020年米大統領選に関してすでに広く否定されている不正選挙の主張や、極右や過激主義に一般的な主張を多数書き込んでいた。
議長宅襲撃後、事件の内容についてもさまざまな虚偽の主張が、インターネットで拡散されている。










