ヒジャブ外れた状態で競技、クライミング女子選手の帰国をイランで大勢が歓迎

Elnaz Rekabi

画像提供, @iwsports

画像説明, スポーツクライミングのイラン代表エルナズ・レカビ選手

イランのスポーツクライミングの女子選手が国外の大会で頭髪を覆わない状態で競技し、注目されている。イラン女子代表のエルナズ・レカビ選手(33)は16日、韓国・ソウルで開催されたアジア選手権で頭髪を覆うスカーフを着用せずに出場した後、19日に帰国した。

レカビ選手はスカーフなしで出場した試合後、家族や友人と連絡が取れなくなり、帰国が早まったと報じられたが、本人はこれを否定した。

レカビ選手が19日早朝に帰国すると、テヘラン空港では数百人が選手を歓迎し、空港ターミナルの外で手拍子をしながら「エルナズはヒロイン」とたたえた。大勢に抱きしめられ、複数の花束を渡された選手を、家族が出迎えた。選手は黒い野球帽とパーカーのフードで髪を隠していた。

Elnaz Rekabi is interviewed by Iranian media at Tehran's international airport on 19 October 2022

画像提供, BORNA NEWS AGENCY/EPA

画像説明, 韓国から帰国したレカビ選手は国営メディアの取材に「緊張している」と答えた(19日、テヘラン空港)

ソウルでの大会で、レカビ選手は頭髪を覆うヒジャブなしで競技に臨んだ。後に選手は、ヒジャブが「勝手に外れてしまった」のだと、インスタグラムで説明。帰国時にもテヘラン空港で国営テレビの取材に、同様の説明をした。

多くの人はこの説明は、選手が身の安全のために致し方なくしたものだと受け止めている。

イランでは女性は頭髪をスカーフで、両手両足をゆるやかな衣服で、それぞれ覆うよう法律で定められている。女性アスリートは国外でイラン代表として競技する際にも、この規則に従わなくてはならないとされている。

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テヘラン空港で国営テレビの取材を受けたレカビ選手は、なぜ試合でスカーフが外れていたのかについて、「女子ロッカーにいたら、いきなり試合に出るよう言われた。予想もしていないことだった」と説明。「急いで靴を履き、装備を調整したので、ヒジャブをするべきだったのにつけるのを忘れた」と、帰国前の18日にインスタグラムに書いた説明と同じ内容を口にした。

自分がポニーテール姿で競技する様子の動画に対して「極端な反応が一部であった」ため、「ストレスを感じているし緊張している」とも選手は述べ、「おかげさまで無事に健康なままイランに戻ることができた。イランの人たちを混乱させ、心配させてしまい、すみませんでした」と話した。

ヒジャブなしで試合に出場後、家族や友人と連絡がとれなくなり、予定より早く帰国したという報道については否定し、「そういうことではなく、予定通りイランに戻ってきた」と述べた。

レカビ選手は同様の説明を18日の時点でインスタグラムに投稿していた。BBCペルシャ語のラナ・ラヒムプール記者によると、選手の言葉遣いが圧力を受けて書かされたものに思えると大勢が指摘していた。

国外の大会でスカーフを着けずに競技したことのある複数のイラン女子選手は、自分も政府当局に圧力をかけられ、レカビ選手と似た謝罪を強制されたと話す。中には、イラン帰国を諦めた選手もいる。

イラン系イギリス人の俳優ナザニン・ボニアディさんはBBCに対して、「国営テレビによるエルナズ・レカビの取材を見て私は、イランから何千、何万と出てくるのに慣れ切ってしまっている、うその告白のことしか考えられなかった。イラン当局は、政府に批判的な一切の声などないと立証するため、圧力をかけて告白を強制する」のだと話した。

米ニューヨークを拠点とするイラン人権センターのハディ・ガエミ氏は、レカビ選手が「自分の自由と安全を危険にさらした」と指摘。「それ以来、彼女の勇敢な市民的不服従の行動を隠蔽(いんぺい)しようとする政府から、激しい圧力をかけられている」と述べた。

「女性の権利と人権を支持するすべての人は、いま彼女を応援し、イランの政府による真実の隠蔽を許してはならない」とも、ガエミ氏は強調した。

File photo showing Elnaz Rekabi wearing a hijab as she competes at the indoor World Climbing and Paraclimbing Championships in Paris on 14 September 2016

画像提供, AFP

画像説明, レカビ選手は、2016年9月にパリで開かれた屋内の大会では、ヒジャブを着けて競技に臨んだ

国際オリンピック委員会(IOC)は、レカビ選手の状況について知って以来、国際スポーツクライミング連盟 ( IFSC ) やイラン・オリンピック委員会(NOC)と緊密に連絡を取り合っているという。

三者会議を開いた結果、「レカビ選手は一切の罰を受けることなく、今後も訓練と競技を続けると、IOCとIFSCは(NOCから)はっきりと保証された」と、IOCは発表した。

「IOCはIFSCとイランのNOCと連携しながら、今後引き続き事態を注視し続ける」ともしている。

レカビ選手は16日に出場したアジア選手権にポニーテール姿で登場した。その姿を捉えた動画が拡散されると、レカビ選手はイランの女性たちが率いる反政府デモの新たな象徴として支持された。

イラン国内で続く抗議行動は、スカーフの巻き方が緩く、髪の毛を覆うよう女性に義務づけた法律に違反したとして、クルド系女性のマサ・アミニさん(22)が9月13日に道徳警察に逮捕され、その後に死亡した事件がきっかけとなっている。

アミニさんは警棒で頭を殴られたと報じられたが、警察はこれを否定。死因は心臓発作だったと主張した。

情報筋は17日、BBCペルシャ語に対し、レカビ選手からイラン当局者と一緒にいると聞かされた後、家族や友人はレカビ選手と連絡を取れなくなったと話した。また、レカビ選手がパスポートと携帯電話を没収され、ソウル市内のホテルを2日早く出発したとも報じられた。

イラン大使館はレカビ選手はアジア選手権終了後にソウルを離れたとし、同選手に関する「あらゆるフェイクニュースやうそ、偽情報」を強く否定するとした。