トランプ前大統領宅の家宅捜索に米共和党が猛反発

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米フロリダ州にあるドナルド・トランプ前米大統領の邸宅を連邦捜査局(FBI)が8日に家宅捜索したことについて、マイク・ペンス前副大統領をはじめ野党・共和党の関係者が猛反発し、司法長官による説明を求めている。大統領経験者の自宅に対する強制捜査は前例がない。
フロリダ州パームビーチの自宅「マール・ア・ラーゴ」に対するFBIの家宅捜索は、トランプ氏自身が8日夜にソーシャルメディアで公表した。複数の消息筋が報道陣に、捜索があったことを明らかにしているものの、司法省による発表はまだない。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、捜査筋の話として、FBIは押収品を複数の箱に入れて運び出したと伝えた。FBIは捜索開始の少し前にトランプ邸を警護するシークレットサービスに連絡し、8日午前10時ごろに捜索令状を執行。玄関を無理やりこじ開ける必要はなく、捜索は同日午後には終わったという。
トランプ氏の次男エリック・トランプ氏は、マール・ア・ラーゴでのFBIの捜索について、国立公文書館の記録の取り扱いに関する捜査に関連したものだと、米FOXニュースに話した。パームビーチにいるトランプ氏の側近も、家宅捜索は大統領の記録に関するものだと、匿名を条件に米CBSニュースに話した。トランプ氏本人は当時、ニューヨークのトランプ・タワーにいたという。
トランプ氏は政府の機密書類をホワイトハウスから持ち出し、マール・ア・ラーゴで保管していたという疑いがもたれている。
大統領に関係する記録を保存する政府機関の国立公文書館は2月、トランプ氏の公文書の取り扱いについて司法省に捜査を依頼していた。
トランプ氏と共和党は
トランプ氏は9日、政治献金を募る支持者へのメールで、自分と他の共和党関係者が当局の標的にされているのは、自分の政治的影響力と「あらゆる世論調査で自分が圧倒的であること」が理由だと書いた。「連中はまたしても共和党と私を阻止しようとしている」とトランプ氏は書き、「この無法ぶりと政治的追求と魔女狩りは、実態を明らかにして食い止めなくてはならない」とも述べた。
トランプ氏が影響力を維持している野党・共和党は、FBIの捜索は政治的な動機によるものと非難し、メリック・ガーランド司法長官からの説明を求めている。
共和党トップのケヴィン・マカーシー下院院内総務はツイッターで、「もうこれで十分だ。司法省は、政治的に武器化されて、耐え難い状態に達した。共和党が下院を取り戻したあかつきには、ただちに同省を監査し、事実に沿って、徹底的に洗い出す」、「ガーランド司法長官、自分の書類を保存して、予定表を空にしておくように」と書いた。

他にもトランプ氏を支持する共和党議員の間には、FBIの解体や、予算取り消しを求める声もあった。
トランプ政権で副大統領だったマイク・ペンス氏は、なぜ捜索令状が執行されたのか「全面的な説明」を求めた。ペンス氏はツイッターで、「アメリカの歴史で、合衆国の大統領経験者の自宅が強制捜査されたことなどない」と書いた。ペンス氏は2024年大統領選への出馬を目指しているとされており、これまでトランプ氏からさりげなく距離を置いてきた。
同様に2024年大統領選に共和党から出馬するとされ、トランプ氏と予備選で争う可能性のあるフロリダ州のロン・デサンティス州知事は、強い調子で家宅捜索を非難。「現政権は政敵に対して連邦当局を武器化して駆使しており、マール・ア・ラーゴへの強制捜査は、またしてもそれがエスカレートしたものだ」と述べた。州知事は「現政権」に「regime」という単語を使用。これは独裁政権などについて使われることが多い。
2019年1月から2020年3月まで、トランプ政権の首席補佐官代行だったミック・マルヴェイニー氏は、BBCに対して、自分が補佐官だった時は、大統領の資料はすべて適切に保管するように念を押していたと述べた。
「何もかも保存するよう、法律で定められている。文字通り、すべてだ。メモ帳から、大統領が目を通した新聞まで。とても重大な内容のものから、ささいなものまで。たとえば、ボリス・ジョンソン(英首相)と会食した際のメニューとか」と、マルヴェイニー氏は述べた。
「(当局が)探しているのがそれだけなら、こういうテクニカルな法律違反だけなら、(今回の家宅捜索は)司法省によるとてつもないやりすぎだ」
「その一方で、バイデン政権への政権移行妨害という非常に重大な違法行為に何かしら結びついていて、たとえば極右関係者や議会襲撃の当事者とのやりとりなど、(トランプ氏が)マール・ア・ラーゴに何か書類を残していると司法省が考えているなら、それはとても深刻だ」
民主党の反応は
与党・民主党からは、トランプ邸への家宅捜索を歓迎する声が出たものの、司法省に情報提供を求める意見もあった。さらに、むしろトランプ氏の支持基盤がこれでかえって勢いづくのではと懸念する声もある。
ホワイトハウスのカリーン・ジャン=ピエール大統領報道官は9日の定例会見で、ジョー・バイデン大統領はFBIから事前に家宅捜索について知らされていなかったし、「公の報道で知った」のだと述べた。
「大統領は説明を受けていなかったし、(捜索が行われると)知らなかった。ホワイトハウスではだれも、事前に知らされていなかった」と報道官は述べ、バイデン氏は大統領として、司法省の独立性を守るため、大いに努力を重ねてきたのだと強調した。
「バイデン大統領は、法の支配を信じている」と、報道官は述べた。
民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、自分が最初にFBIによる「訪問」について知ったのは、自分の携帯電話でニュースを見た時だったと話した。
その上でペロシ氏は、家宅捜索令状の発表を通じて、捜査当局が何を探していたのか判明するよう期待すると述べた。
「令状を得るには、正当な事由が必要だ」とペロシ議長は米NBCニュースに話した。「そして、法律を超越した者など誰もいない。合衆国の大統領だろうが、大統領経験者だろうが」。

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マール・ア・ラーゴのあるパームビーチを所管するデイヴ・アロンバーグ郡司法長官は、「これを機に大勢がトランプ氏の周りに集まって応援するだろうから、トランプ氏にとってこれは非常に役立つはずだ」、「トランプ氏はこれを使って再び、自分は殉教者だと力説するだろう」と述べた。

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トランプ氏に対するその他の調べ
連邦下院の特別委員会は、2021年1月6日に起きた連邦議会襲撃事件に関連して、トランプ氏がどのように襲撃にかかわったかを調べている。下院に捜査権限はないが、調査で判明した内容を司法省に付託する可能性がある。
- 司法省は、2020年大統領選の結果を否定するトランプ氏の言動を調べている。
- ジョージア州フルトン郡の検察官は、2020年大統領選での同州の結果について、トランプ氏とその関係者が介入しようとしたかどうかを捜査している。
- トランプ氏はかねて、詐欺や資産価値の粉飾、性的加害や名誉棄損など、複数の行為について訴えられたり、非難されたりている。。トランプ氏はいっさいの不法行為を否定している。









