ロシア軍、チョルノービリ原発から撤退=ウクライナ原発公社

Chernobyl nuclear power plant

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画像説明, ロシア軍に占拠されて以降、チョルノービリ原発の安全性への懸念が浮上していた

ウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムは3月31日、ロシア軍が占拠していた北部チョルノービリ(ロシア語ではチェルノブイリ)原子力発電所から撤退したとの報告を受けたと発表した。

エネルゴアトムによると、現在はチョルノービリ原発の敷地内に「部外者」はいないと、同原発のスタッフが話したという。

この発表に先立ち、同社はロシア軍が一部の集団を残してベラルーシ国境に向けて移動したと述べていた。

ロシア軍の撤退の動きについては、米国防総省の高官が3月30日に指摘していた。

同28日には、原発作業員が多く住むスラヴチチの市長が、街からロシア軍が撤退したと発表した。

ロシア軍はウクライナ侵攻を開始した2月24日にチョルノービリ原発を占拠した。

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ロシア兵が被ばくか

エネルゴアトムは31日の声明で、「今朝、侵略者たちはチョルノービリ原子力発電所から撤退する意向を表明した」と説明した。

また、ロシア部隊がチョルノービリ原発の立ち入り禁止区域内の最も汚染されている場所で塹壕(ざんごう)を掘り、「かなりの線量」の放射線を浴びたとする報告についても認めた。ベラルーシで治療を受けている人もいるという未確認情報もある。

ロイター通信は原発作業員の話として、ロシア兵の中には自分たちが放射線量が高い場所にいることを知らない者もいたと伝えた。

一方でロシア軍は、原発を占拠した後、原発での放射線量は正常範囲内に収まっていると主張していた。

国際原子力機関(IAEA)は声明で、これらの情報が事実かどうか確認できていないと述べた。

IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は、数日以内の原発への使節団の派遣について、ウクライナ当局と緊密に協議中だとしている。

停電や職員の健康めぐり懸念

ロシアはここ数日、首都キーウ(ロシア語でキエフ)周辺のウクライナ北部での活動を縮小し、東部ドンバス地方に戦力を集中させるとしている。チョルノービリはキーウの北に位置する。

しかし、北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は3月31日、ロシア政府は軍を撤退させるのではなく、ドンバス地方での作戦に向けて部隊を再編し、再補給し、攻撃を強化するために軍を再配置していると指摘した。

「同時に、ロシアはキーウやほかの都市への圧力を維持している。そのため、さらなる攻撃が予想される。さらに多くの苦しみをもたらすことになる」

軍事的成果を追求するロシアの目的に変化はないと、ストルテンベルグ氏は付け加えた。

2月24日にロシア軍に占拠されて以降、チョルノービリ原発の敷地内では停電が発生したほか、多くの職員が数週間にわたり施設内に閉じ込められるなど、さまざまな懸念が生じている。

1986年に世界最悪の原発事故が起きたチョルノービリ原発はすでに停止中だが、完全に放棄されたわけではなく、今も監視保安作業を常に必要としている。使用済み核燃料も、敷地内で冷却されている。