イギリス、ウクライナ難民受け入れ制度発表 住居提供の家庭に月5万円超の謝礼
ジョセフ・リー、ヴィクトリア・リンドリア、ジョージ・ボウデン(BBCニュース)

イギリス政府は13日、ロシアによるウクライナ侵攻から逃れてきた人の滞在先として、一般家庭を開放する難民受け入れ制度を発表した。難民を受け入れた家庭には月350ポンド(約5万4000円)の謝礼を支払うという。
イギリスのマイケル・ゴーヴ住宅・コミュニティ・地方自治相はBBCに対し、この制度を使えば数万人がイギリスへ避難できるようになると説明。自分自身も、難民に部屋を提供するかもしれないと述べた。
しかし英支援団体「難民評議会」は、戦争で心に傷を負った人をどの程度支えられるのかと懸念している。
最大野党・労働党は、答えが出ていない問題があるとし、政府の危機対応が「後手後手すぎる」と非難した。
英政府が発表した「ホームズ・フォー・ウクライナ」制度では、イギリス市民が難民の個人や家族を指名し、少なくとも6カ月間、自宅または別の物件に無料で滞在してもらえるようにする。
この制度による難民受け入れを希望する人は、14日開設予定のウエブサイトで意思表示できるようになる。
ゴーヴ氏は13日放送のBBC番組「サンデー・モーニング」で、ロシア政府に近いことを理由に英政府が制裁対象にしたオリガルヒ(財閥)の資産を、「人道目的」で利用することを検討したいと説明。ただし、イギリス国内で差し押さえたロシア財閥の邸宅などを、ウクライナ難民の保護に使うには、「かなり高い法的ハードル」があると述べた。さらに、制裁が解除されればこの措置も無効になるとした。
英企業の難民雇用も
英小売り大手セインズベリーやマークス・アンド・スペンサー、モリソンズなどの英企業が、ウクライナ難民を雇用したいと申し出ている。
英アパレル大手「ASOS(エイソス)」は、ウクライナの高い技術工学のスキルを呼び込みたいとしている。石鹸を販売する「LUSH(ラッシュ)」は、従業員としての受け入れ枠を確保する方針という。
ウクライナのヴァディム・プリスタイコ駐英大使は13日、英首相官邸のあるダウニング街で開かれた集会で、ウクライナへのさらなる支援や、武器や人道援助の提供を呼び掛けた。
新制度の内容は
難民を受け入れる地方自治体には、支援サービスのための追加資金として難民1人当たり1万500ポンド(約160万円)が支払われる。就学年齢の子供たちを受け入れた場合は増額されると、レベルアップ・住宅・コミュニティー省は説明した。
ロシアの侵攻により、これまでに250万人以上がウクライナから脱出している。国連によると、第2次世界大戦以降で最も急拡大している難民危機だという。
英政府は難民危機に対する対応の速さと規模をめぐり、与党議員からも批判を受けている。
ゴーヴ住宅相はBBCに対し、戦争から逃れてイギリスでビザを取得したウクライナ人の数は現在3000人に上ると述べ、政府の対応を擁護した。

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現在、イギリス政府の「ウクライナ家族制度」の申請対象になっているのは、親族がイギリス国内で暮らしている難民のみ。イギリスに滞在できるビザはほかにもあるが、ウクライナ国内の申請センターは閉鎖されている。
今回発表された新制度では、難民の受け入れスポンサーとなる人たちは事前に難民と面識がある必要はなく、人数制限もない。新制度を利用するウクライナ人には3年間の滞在許可のほか、就労や公共サービスを利用する権利も与えられる。
ゴーヴ氏はBBCに対し、「1週間以内に」第一陣が到着し、「数万人」のウクライナ人がイギリスの家庭に引き取られるかもしれないとの見通しを示した。
申請はオンラインでの受付となる。スポンサー希望者の身辺調査と、難民の保安検査(セキュリティチェック)がそれぞれ行われる。スポンサーには月350ポンドの「謝礼」が支払われる。
ウクライナ難民を自宅で受け入れるつもりか尋ねられると、ゴーヴ氏は「そのつもりだ」、「自分に何ができるかを探っている」と答えた。
「私自身について細かい説明は避けますし、いくつか対応が必要なこともありますが、答えはイエスです」と、ゴーヴ氏は付け加え、自分も難民受け入れのスポンサーになる意向を示した。
新制度の後期段階には、慈善団体や教会などの組織も難民のスポンサーになれるというが、開始時期は未定。
新制度は「不十分」との指摘も
英国内の難民や亡命希望者を支援する慈善団体である難民評議会は、ウクライナから逃れた人々がさらなる「お役所的ハードル」に直面することを懸念しており、政府が発表した制度は不十分だと指摘した。
正式な難民認定あるいは亡命制度を通じた、人道的理由による滞在許可を申請すれば、ビザは不要となり、申請者とその扶養家族はイギリスに5年間滞在できるようになる。また、就労や就学、給付金申請の権利も与えられる。
労働党のサー・キア・スターマー党首は英スカイ・ニュースに対し、政府によるビザ制度の整備スピードは「遅すぎるし、(範囲が)狭すぎてあまりに意地悪」なものだと語った。そして、政府は必要な支援について地方議会に相談していなかったと付け加えた。
「率直に言ってここ数週間、難民問題についてイギリスは恥ずかしい状況だった」
野党・自由民主党の党首、サー・エド・デイヴィーは、ウクライナ難民に対する政府の対応について、プリティ・パテル内相を解任すべきだと述べた。
デイヴィー氏は、「内相が見せた無能さや無関心さ、あまりに非人道的な行いは、助けを必要とする人々をかくまってきたという誇らしい歴史を持つイギリスにはふさわしくない」と、北部ヨークで開かれた春の闘会議で語った。
政府報道官はデイヴィー氏の発言を受け、「こうした非難は事実ではない」とし、2015年以降、同国は「ほかのどの欧州諸国よりも安全かつ合法的ルートでより多くの難民を(イギリスに)新たに定住させている」との主張を繰り返した。
BBCリアリティ・チェック(ファクトチェック)が今週報じたように、政府側の一部の主張は事実だが、その全体像は全く異なる。2015年以降、いくつかの欧州諸国はイギリスよりはるかに多くの難民を受け入れている。

スコットランド自治政府とウェールズ自治政府の両首相は、政府宛ての書簡で、「スーパー・スポンサー」として難民を支援することを申し出た。
欧州連合(EU)はウクライナ人にビザなしで3年間の居住を認めている。しかしイギリスは、安全保障対策として入国規制が不可欠だとしている。
アイルランドのミホル・マーティン首相は、BBC番組「サンデー・モーニング」で、同国は5500人のウクライナ難民を受け入れたが、入国時のセキュリティチェックは行っていないと述べた。
こうした中、英アカデミー賞の授賞式に出席した英俳優ベネディクト・カンバーバッチ氏や俳優スティーヴン・グレアム氏など複数の著名人が、ウクライナへの支援を表明している。











