ウクライナ首都、侵攻に備える ロシアはシリア志願兵受け入れへ ウクライナ侵攻16日目

ウクライナ侵攻開始から16日目の11日、ロシア軍は攻撃対象の都市を拡大した。首都キーウ(ロシア語ではキエフ)への進軍も続けている。ロシア政府はシリアから志願兵を受け入れる方針を示した。一方で、侵攻を「戦争」と呼ぶことも禁止されているロシア国営メディアでは、政府方針を疑問視する意見が放送された。
首都制圧作戦の準備本格化か
米人工衛星会社マクサー・テクノロジーズは、首都キーウ北西の複数カ所で出火の様子を撮影したと発表した。ホストメルのアントノフ空港や、モシュンの住宅地で炎が見えるという。
同社は、モシュン各地で被弾の跡が確認できるとして、攻撃の被害が広範囲に広がっていると指摘した。

画像提供, Maxar Technologies / Reuters

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マクサー社によると、キーウ近郊に集まり停車していた長大なロシア軍車列は「ほとんどが分散し、再配備された」ことが衛星画像から分かるという。これはキーウ制圧作戦の再開ではないかと懸念されている。
長さ数十キロに及んだ車列は、キーウ北西のアントノフ空港近くに長くとどまっていたが、その一部は空港周辺の町村に移動。ほかはさらに北へ移動し、砲撃が開始できる態勢にあるという。

キーウ市内で取材するBBCのジェレミー・ボウエン中東編集長によると、市内各地ではバリケードが築かれ、土嚢(どのう)が積まれ、ロシア軍の侵入に備えている。

首都を誰がどう掌握するのかが、この戦争の政治的帰結にとって決定的な意味を持つだけに、「プーチン氏と将軍たちは作戦を見直し、部隊を再配備し、決して敗北を受け入れないのは確かだ」と、ボウエン記者は書いた。
一方で、記者が首都で取材を続けるこの1週間で、キーウは防戦態勢を強化。当初はコンクリート・ブロックを置いていただけの検問所に、今では本格的なバリケードが築かれている。市内の溶接所が急きょ大量生産した対戦車障害物が、要衝に置かれている。

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キーウは、複数の主要幹線道路を石畳の細かい通りが結ぶ大都市で、ほとんどの建物には大きな地下室がある。そのため、この街で市街戦が始まる事態になれば、数カ月にわたる可能性があると、ボウエン記者は言う。



中部や西部でも攻撃
11日にはこれまで比較的安全だった中部ドニプロも攻撃され、靴工場と集合住宅、保育園が空爆された。
現地で取材するBBCのサラ・レインズフォード東欧特派員によると、ドニプロはこれまで他地域から避難してくる人たちにとって安全圏だった。
西部ルツクや南西部イヴァノフランキウスクでも、軍の飛行場が空爆された。ルツクの市長によると、飛行場への空爆でウクライナ兵が少なくとも4人死亡した。


英国防省の国防インテリジェンス分析によると、ロシア軍は11日、ルツクとイヴァノフランキウスクに空爆と砲撃を展開。ウクライナ空軍の「徹底抗戦」に遭っているロシア軍は、ウクライナ軍の支配地域への攻撃は(相手の脅威圏外から発射する)「スタンドオフ」式発射装置に頼らざるを得ない状況だという。
国防省はまた、ロシア空軍は地上部隊の進軍援護のため、無誘導型の砲弾を使っていると指摘した。「このような武器は精度が比較的低く、無差別に攻撃する。そのため、民間人の被害が出る可能性が一気に拡大する」という。
ロシアの将軍3人が戦死

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複数の西側当局者は、ロシア軍の少将がウクライナで戦死したと確認した。ロシアの将軍がウクライナで死亡するのは、これで3人目という。
西側当局は将軍の名前を明らかにしていないが、ウクライナ軍はロシア東部軍管区第29軍の司令官、アンドレイ・コレスニコフ少将が戦死したと発表していた。
軍事アナリストたちは、将軍クラスの軍司令官が戦場そのものや戦場近くにいるのは、ロシア軍の作戦が予定通りに進んでいないことの現れかもしれないと指摘していた。
シリアの志願兵受け入れ=プーチン氏
こうした中でロシアのウラジーミル・プーチン大統領は11日、連邦安全保障会議で、ウクライナ東部でロシアが支援する武装勢力と共に戦いたい外国志願兵がいるなら、受け入れると発言。「(ウクライナ東部)ドンバスの人々を助けたいと志願している人がいるなら、しかも無償でいいならなおさら、我々と途中で合流して紛争地帯に行く手助けをしよう」と述べた。
セルゲイ・ショイグ国防相は、ロシア軍と共に戦う意欲のある志願兵が中東に1万6000人いると、会議で述べた。
これについてアメリカ政府関係者たちは、市街戦に優れたシリア兵が含まれるかもしれないと指摘。ただし、そうしたシリア兵は単なる「大砲のえじき」になるだけではないかと、有用性を疑問視する軍事アナリストたちもいる。
一方で、ウクライナ軍と共に戦うため、外国からの志願兵が次々とウクライナ入りしている。イギリス軍の元兵士や現役兵士も含まれる。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、すでに1万6000人の外国人が「国際部隊」に参加するため志願してきたと話している。
ロシアが中東出身の志願兵を使うというロシア政府の発表については、「シリアからのごろつき」が「外国に人殺しに来る」と非難した。

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ゼレンスキー氏は現地時間12日深夜零時過ぎには、「ロシアの侵略者の行動は(「イスラム国」の)テロリストの行動に等しいものになる」とフェイスブックに投稿した。
ロシア軍、メリトポリ市長を拉致か
ロシア軍が占領する南東部メリトポリでは、イヴァン・フェデロフ市長が拉致されたとする情報が広がっている。ベラルーシの反政府系メディア「NEXTA(ネフタ)」も、市長が市内の建物から連れ去られる現場だという映像をソーシャルメディアに投稿した。
BBCが動画を検証した結果、拡散している動画は、メリトポリ中心部の勝利広場にある噴水を映している防犯カメラの映像のようだが、映っている人物がフェデロフ市長かは確認できない。

ウクライナのアントン・ヘラシェンコ内務省顧問は、フェデロフ市長が頭にビニール袋をかぶせられ、市内の「危機センター」から連れ去られたと述べている。
ロシアはこれについてコメントしていないが、ウクライナ外務省は「戦争犯罪」だと非難している。
第3次世界大戦は避ける=米大統領
こうした中、アメリカのジョー・バイデン大統領は11日、アメリカは北大西洋条約機構(NATO)の領土は徹底的に守るものの、ウクライナ国内でロシアと戦争するつもりはないと、あらためて言明した。
「NATOとロシアの直接対決は、第3次世界大戦だ」とバイデン氏は述べた。
バイデン氏は、ロシアと直接交戦するために米軍を派遣することはあり得ないと、侵攻当初から繰り返している。バイデン政権はこの間、ロシアに対する金融制裁や原油禁輸措置などを実施。11日には、ロシア産アルコール類の禁輸を発表した。

ロシア国営テレビに侵攻批判の声

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ロシア政府はウクライナ侵攻を「戦争」と呼ぶことを禁止し、ロシア軍について当局が「フェイク(偽物)」とみなす情報拡散を禁止している。国営テレビはウクライナについて政府の公式見解のみを放送しているものの、11日には「アフガニスタンよりひどくなる」などと侵攻を疑問視する意見が放送された。
英字紙モスクワ・タイムズによると、「ロシア1」テレビの人気政府系トーク番組で、ゲスト出演者の研究者セミヨン・バグダサロフ氏が「アフガニスタンよりひどくなるものに、また入る必要があるのか」として、「(ウクライナには)もっと人がいるし、武器の扱いも進んでいる」と述べた。
同様にゲスト出演していた映画監督カレン・シャハナザロフ氏も、「キエフのような街を奪うなど、なかなか想像できない。いったいどういう光景になるのか」と述べた。
番組司会者のウラジーミル・ソロヴィエフ氏はプーチン大統領の忠実な支持者として知られ、欧州連合(EU)は「ウクライナにきわめて敵対的で、ロシア政府を礼賛している」として制裁対象している。
プーチン氏古巣のスパイ機関に動揺か
BBCのゴードン・コレラ安全保障担当編集委員によると、未確認情報ながら、ロシア連邦保安庁(FSB)の幹部2人が自宅軟禁状態に置かれたという情報がある。
FSBは、プーチン大統領がかつて所属したソ連国家保安委員会(KGB)の後継組織。
情報によると、軟禁された1人はウクライナ作戦を担当する第5局のトップ、セルゲイ・ベセダ大佐。ウクライナでクーデターを引き起こし親ロ傀儡(かいらい)政権を樹立する作戦を策定したものの、ウクライナ国内の抵抗のレベルを読み違えたと、ロシア政府内で批判されている可能性があるという。
FSB幹部の拘束について最初に伝えたのは、ロシア情報機関に関する有数の専門家、アンドレイ・ソルダトフ氏とイリナ・ボロガン氏。両氏は、「開戦から2週間たって、プーチンはついに自分は誤った情報を与えられていたのだと気づいたのかもしれない。大統領を激怒させたくない第5局は、本人が聞きたがっている内容だけ提供したのかもしれない」と指摘する。
インターネットではこれまでに、FSB関係者によるとされる匿名報告書が広く拡散しており、FSBによるとされる悲観的な戦況分析や、FSBが厳しい状況にある様子が伝えられている。これも内容の真否は確認できていないが、複数の専門家が本物に思える内容だとしている。
加えて、開戦前からアメリカを始めとする西側諸国がロシアの作戦を事前に察知し、次々とインテリジェンスを事前に公表していたことから、ロシア政府は自分たちの通信が傍受されている、あるいは政府幹部に西側の潜入スパイがいるなどと疑っている可能性が高いと、コレラ編集委員は指摘する。
さらに、開戦直前の連邦安全保障会議でプーチン氏が、セルゲイ・ナルイシキン対外情報局(SVR)長官を公然と叱責し、辱めたことからも、普段は人目に触れないロシアのスパイの世界が大きく動揺しているのがうかがえると、コレラ編集委員は書いている。











