英外相との会談に「失望」とロシア外相、「冷戦表現の中止」求めた英外相 ウクライナ情勢

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ウクライナをめぐるロシアの動きに西側諸国が警戒を強める中、イギリスの政治家も外交での解決に動いている。10日には、リズ・トラス外相がモスクワでセルゲイ・ラヴロフ外相と面会し、ロシアに「冷戦のレトリック」の使用をやめるよう求めた。これに対しラヴロフ外相は、共同記者会見でトラス氏との会談には「失望した」、「ロ英関係は近年最低」だと述べるなど、よそよそしい展開となった。
一方、ボリス・ジョンソン英首相はブリュッセルで北大西洋条約機構(NATO)の事務総長と会談。その後、ポーランドを訪問し、ウクライナやNATO加盟国への支援を約束した。このほか、ベン・ウォレス英国防相が11日にロシア入りする予定となっている。
ロシアはウクライナとの国境に兵10万人以上の部隊を集結させている。最近では13万人規模に増えているという西側当局の情報もある。ロシアはさらに、友好国のベラルーシと合同軍事演習を開始しているほか、来週にはアゾフ海と黒海でも演習を予定している。
西側諸国は侵攻の可能性があると警戒を強めると同時に、緊張緩和に向けた外交努力が続けられている。
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「ロ英関係は近年最低の状態」
トラス外相は会談でラヴロフ外相に対し、「ロシアは冷戦時代のレトリック(表現)を使うのをやめれば、国連安全保障理事会の常任理事国としての地位を高められるし、欧州の安全保障改善のためにNATOと有意義に協議することもできるはずだ」と指摘。ロシアが「有意義な議論」に参加すれば、欧州の安全保障は強化されると訴えた。
一方で、「ウクライナ国境に10万人超の部隊がいること、ウクライナの主権と地域的統合が脅かされている事実を、私たちは無視できない」と述べ、「根本的に、ウクライナで戦争が起きれば、ロシアとウクライナの人たちにとって、そして欧州の安全保障にとって、大惨事となる」と警告した。
トラス氏は会談後、ラヴロフ氏からウクライナに侵攻する「計画はない」と告げられたと説明。これについては、「言葉に行動が伴うかを見る必要がある」と述べ、ウクライナ国境の部隊や兵器を撤去するべきだと話した。
その上で、ウクライナ危機の解決に向けて努力を重ねると共に、「イギリスとNATO加盟国があらゆる可能性に備えることが重要だ」、「現時点ではロシアの姿勢は非常に脅威だ」と述べた。
トラス氏はさらに、ロシアの外相を18年間務めているラヴロフ氏が、「現状を作り出した問題の多くに関わってきた」当人だと指摘。その上で、「正しい外交協議」が必要だと話した。
イギリスの外相によるモスクワ訪問は4年ぶり。

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「聞く耳を持たず」
一方のラヴロフ外相は、トラス氏との会談について、「お互いに相手の言うことを聞いているようで聞いていない状態だった。我々が詳しく説明しても、(イギリス側は)聞く耳を持っていなかった」と語った。
「(イギリス側は)事実関係をよく承知していないか、あるいはわざと無視しているかだ」とも、外相は批判した。
また、ウクライナをめぐる状況を悪化させているのはロシアではなく西側諸国だと批判を重ね、イギリスとロシアの関係も「ここ数年で最低の状況になっている」と話した。
NATOに対するロシアの懸念について譲歩はあったかという質問には、「ロシアの領土からロシアの部隊を撤退させろ」という要求しか聞いていないと答えた。
ロシアの地理について英外相は
「ロシアの領土からロシア軍を撤退させろ」というこの件をめぐっては、会談でラヴロフ氏がトラス氏に「ひっかけ」の話題を振る場面があったと、ロシア紙コメルサントが伝えている。
それによると、トラス氏はウクライナ国境からの部隊撤退を重ねて要求し、ラヴロフ氏はロシア軍部隊がロシア領内にいるまでだと反論していた。
続けてラヴロフ氏は、「ロストフとウォロネズ地域について、ロシアの主権を認めますよね?」とトラス氏に質問。これにトラス氏が「決して認めない」と答えたという。
このやりとりに駐ロ英大使のデボラ・ブロナート氏が割って入り、「この両地域はロシア領なのだと、トラス氏に丁寧に説明した」とコメルサントは報じた。
在ロ英大使館はこの会談後、「ラヴロフ氏はウクライナのことを話しているのかと思ったが、当該地域はロシアの主権下にあると私は明示した」というトラス氏の声明をロシア語でツイートした。
トラス氏がロストフとウォロネズを、親ロシア派が実効支配するウクライナ東部ドネツクとルハンスクと間違えた可能性がある。
「非常に大きな賭け」

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この日、ブリュッセルでNATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長と会談したジョンソン首相は、ロシアとウクライナの関係について、欧州のここ数十年で「最大の安全保障危機」における「最も危険な瞬間」だと述べた。
また、「強力な抑止力」と「粘り強い外交」で危機を乗り越えられると期待しているが、「非常に大きな賭け」だと話した。
ストルテンベルグ事務総長との共同記者会見でジョンソン氏は、ロシアがウクライナ侵攻を決定したとは思っていないが、イギリスの情報機関は「引き続き厳しい状況と見ている」と述べた。
ウクライナへの支援を軍事面も含めて拡大するかとの質問には、「これ以上何が提供できそうか、検討していく」と答えた。
イギリスはこれまでにウクライナで2万人の兵を訓練し、対戦車ミサイルを供給したほか、同国の海軍やエネルギー業界も支援している。
ジョンソン氏は今回、イギリス国内で警戒待機する英兵を、さらに1000人増やすと発表。ただし、NATOはウクライナへの派兵には消極的だとも強調した。
ジョンソン氏はその後、ポーランドの首都ワルシャワに移動し、マテウシュ・モラウィエツキ首相と会談。記者会見で、「欧州の集団安全保障のために、ポーランドは非常に重要な位置にいる」と語った。


ジョンソン首相は1月、ロシアへの圧力を強めるため、東欧への英軍派兵の倍増を提案するか検討していることを明らかにした。これを受け、ポーランドには新たに英海兵隊第45コマンド(歩兵)部隊から350人が派兵され、すでに駐留している小規模機甲部隊の約150人に加わっている。
また、エストニアに駐留させている英兵を900人から2倍にするほか、南欧に配備している空軍ジェット機を派遣し、地中海の東側に駆逐艦と哨戒艦を送り込む予定。
イギリスは10日、ロシア企業などを対象とした新たな制裁も発動している。







