英バークレイズCEOが退任、「性犯罪で起訴の米富豪との関係」を当局が指摘

画像提供, Getty Images
英金融大手バークレイズは1日、ジェス・ステイリー最高経営責任者(CEO)の退任を発表した。これは英規制当局が、性的人身取引罪で起訴された米富豪と、ステイリー氏の交友関係を指摘したことを受けてのもの。ステイリー氏は自身の突然の退社につながった調査結果に「大きな衝撃を受け、怒り、動揺している」という。
イギリスの金融行動監視機構(FCA)とイングランド銀行健全性監督機構(PRA)は、14歳少女などの性的人身取引罪で起訴され、米ニューヨークで勾留中に死亡した米富豪ジェフリー・エプスティーン被告とステイリー氏の関係が、当初の見立てより密接であったかどうか調査していた。
バークレイズによると、10月29日にFCAとPRAから暫定調査結果が知らされたという。
「これらの調査結果と、異議を申し立てるつもりだというステイリー氏の意向を考慮し、取締役会とステイリー氏は、同氏の退任で合意した」と、同行は説明した。
そして、ステイリー氏の同行での成功を称えつつ、「規制当局は全プロセスを終えていないことから、同行が暫定調査結果についてこれ以上コメントするのは適切ではない」と付け加えた。
ステイリー氏に近い関係者は、同氏は今回の調査結果に驚いていると話している。
エプスティーン被告との関係についてステイリー氏が取締役会で説明した内容と、規制当局が確認した証拠との間に矛盾が認められたことが、今回の退任につながったとみられる。
<関連記事>
ステイリー氏はエプスティーン被告について、自分が数年勤務した米大手銀行JPモルガンの重要顧客で、そのために定期的に連絡を取り合っていたと説明。自分たちのやりとりは、あくまでも職業上のものだったと、ステイリー氏は主張している。
規制当局は2人が交わした電子メールの量や内容から、両者の関係は純粋に仕事上のものというよりは親密だったと判断した様子が、BBCの取材から明らかになっている。しかしバークレイズ側は、ステイリー氏がエプスティーン被告の犯罪行為を目撃あるいは承知していたかについて、今回の報告書は明らかにしていないと説明している。
エプスティーン被告は2008年に司法取引で、未成年を売春に勧誘・斡旋(あっせん)したという量刑の比較的軽い罪について有罪を認めた。
(編集部注・ Jeffrey Epstein被告の姓は、日本語メディアで「エプスタイン」と表記されることもありますが、BBCでは当人を知る関係者たちの発音に近い「エプスティーン」と表記しています)
ステイリー氏はバークレイズとの契約に基づき、12カ月分の給与計240万ポンドと、年間12万ポンドの年金手当などを受け取る。
後任には、規制当局の承認を得た上で、世界市場部門責任者のC・S・ヴェンカタクリシュナン氏が就任する。
エプスティーン被告とのつながりは
規制当局はステイリー氏の元雇用主から、2人の電子メールのキャッシュメモリを入手した後、ステイリー氏の調査を開始した。
妻と2人の子どもがいるステイリー氏は、バークレイズに入行する以前はJPモルガンの幹部を務めていた。エプスティーン被告はJPモルガンの顧客だった。
エプスティーン被告はビル・クリントン元米大統領やドナルド・トランプ前米大統領など、富裕層や権力者との接触を深めていた。
米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏は、同被告と一緒に過ごしたことを「大きな過ち」だと語った。同じく超富裕層の、米投資会社アポロ・グローバル・マネジメント共同創業者レオン・ブラック氏は、同被告との関わりを理由に同社を離れた。

画像提供, Reuters
ステイリー氏の主張
63歳のステイリー氏は、エプスティーン被告との関係は仕事上のもので、2013年頃から連絡が「減っていった」としている。規制当局は電子メールでより友好的な関係が確認できるか調べた。
ステイリー氏は昨年、「自分は(エプスティーン被告)のことをよく知っていると思っていたが、そうではなかったのは明らかだ。今知っている内容を踏まえて振り返ってみればもちろん、ジェフリーと関わったことを深く後悔している」と述べていた。
ステイリー氏は退任についてまだ公にコメントしていない。ロイター通信は、英規制当局の今回の調査結果を自分が争うことで、バークレイズに迷惑をかけたくないという、内部メモを確認したと報じた。
それによるとステイリー氏は、「バークレイズの物語の次の章を一緒に見届けることはできないが、皆さんの成功を陰ながら応援していると知ってもらいたい」と書いていたという。

画像提供, Reuters
FCAとPRAは昨年、エプスティーン被告との関係について、ステイリー氏がバークレイズ側に説明した内容を調査すると発表した。
バークレイズ側は当時、ステイリー氏がエプスティーン被告が死亡した後に、同被告との関係について自主的に特定の幹部らに説明を行ったと明らかにしていた。
調査結果の内容はまだ公表されていないが、金融サービス、ハーグリーヴス・ランズダウンの上級投資・市場アナリストのスザンナ・ストリーター氏は、ステイリー氏に批判的な内容なのは明らかだと指摘する。
「詳細は明らかになっていないが、規制当局は2人の関係には明らかに透明性を欠いた部分があると考えているようだ」と、ストリーター氏は述べた。「ステイリー氏は異議を申し立てる見通しだ。このため、バークレイズの取締役会は明らかに、長引く調査からバークレイズを遠ざけようとしている」
ステイリー氏はバークレイズ在籍中、今回以外にも規制当局の調査に直面している。
2018年には、米国事業における上級幹部の任命に懸念を示した内部告発者の身元を暴こうとしたとして、FCAとPRAから罰金64万2430ポンド(約9500万円)の支払いを命じられた。同氏がその後も職に残れたのは幸運なことだったと、当時周囲で言われていた。









