香港市民、「アップルデイリー」を「爆買い」 編集幹部の逮捕受け大増刷

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香港で18日、民主派新聞「蘋果日報(アップルデイリー)」を買おうと市内各地で市民が行列した。香港警察は前日、同紙の編集幹部を逮捕したり、編集局を家宅捜索したりしている。
18日のアップルデイリー第一面には「戦い続ける」というメッセージが掲げられていた。同紙の1日の発行部数は通常約8万部だが、この日は50万部を発行した。まとめ買いする人も出て、市内の販売スタンドの中には売り切れるところもあった。
同紙はこれについて、香港の人たちが自分たちの新聞を「買爆」したと伝えている。
香港警察は17日、香港国家安全維持法(国安法)に違反したとして、同紙の編集局長と他の幹部4人を逮捕。編集局を家宅捜索し、コンピューターやハードディスクを押収した。加えて、同紙に関連する企業3社の資産を凍結した。
アップルデイリーを創刊したメディア界の大物、黎智英(ジミー・ライ)氏(73)はすでに、無許可の集会に参加した罪などで実刑判決を受けている。
17日に逮捕された羅偉光・編集局長と親会社「壱伝媒(ネクスト・デジタル)」の張剣虹CEOは、国安法のもとで訴追された。ほかに逮捕された陳沛敏・副社長、張志偉・執行編集長、壱伝媒の周達権COOの3人については、警察は引き続き取り調べ中だとしている。
18日夜に保釈された陳氏は警察署前で報道陣に対して、同僚2人が訴追されたのは悲しいと述べつつ、アップルデイリーのスタッフがこの日の新聞を発行したのが誇らしいと話した。
アップルデイリーは前日の家宅捜索の様子をフェイスブックで中継していた。コンピューター数十台が押収された中、18日付の新聞発行のため編集作業を続けるスタッフを、他の競合メディアの記者たちが見守った。
「戦い続ける」という一面の見出しは、羅編集局長が手錠をかけられ連行されながらスタッフにかけた言葉。同紙は読者へのメッセージでも、「夜明けのために戦い続ける」と呼びかけている(英語版はこちら)。

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繁華街の旺角地区では、早版を待ち受ける大勢の市民が早朝から行列した。AFP通信によると、新聞スタンドのオーナーは「いつもは60部くらい売るけど、今日はもう1800部売った」と話した。
アップルデイリーによると、中には応援のため「一度に10部や100部」をまとめて買い、カートや車で運んでいく人もいたという。
3部を買ったスティーヴン・チョウさんは、「完璧なメディアなどないが、(アップルデイリーは)香港で独自の発信をするメディアだ。好きじゃなくても、アップルデイリーが存続して発信を続けるのは必要だし大事だと思う」と話した。
発行会社など関連会社の資産が凍結された状態で、同紙がいつまで発行を続けられるか不透明だ。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のルパート・コルヴィル報道官は18日、警察が新聞の編集局を家宅捜索したことは「報道の自由に対する、今まで以上にぞっとするメッセージ」だったと批判した。
「香港当局には、市民的及び政治的権利に関する国際規約の締約国としての責任を尊重し、基本法に沿って、とりわけ表現の自由を尊重するよう求める」と、報道官は強調した。

<解説> 反骨の精神を示した……が、いつまで続く?―――マーティン・イップ、BBC中国語(香港)
「朝食にアップル」と、友人がインスタグラムに投稿した。「早朝にりんごをかじった」と別の友人も書いた。香港の若者たちは次々に、アップルデイリーの紙面を見せびらかした。
新聞スタンドの人たちは、いつもの客層とは違う若者たちが大勢、この日のアップルデイリーを買いに来たと話してくれた。
そして年長の人たちも、それぞれ自分流に行動した。元朗地区に住む年金生活者は、新聞スタンドから10部を買って、道行く人たちに配った。「アップルデイリーを応援したいし、香港の報道の自由を応援したいから」だという。
同紙の執行編集長、張志偉氏は記者たちに「戦い続ける」よう呼びかけた。しかし、政府に銀行口座を凍結された状態では、経営が難しくなる。やがて、販売店からの集金さえ難しくなるかもしれない。
長期的には、批判の多い国安法のもとで会社と編集幹部が有罪になれば、解散させられる可能性もある。
香港の李家超保安局長は17日、アップルデイリーを7月1日までに発行不能にするつもりかと記者に質問された。7月1日は香港の中国返還の日だ。
「もし法律によって権限が与えられ、それが効果的で合法なら、我々はそのようにする」と李氏は答え、国家安全保障に対する脅威とみなすあらゆるものには「可能な限り厳しい措置」で対応すると述べた。
7月1日までもう2週間もない。











