英女王の夫フィリップ殿下が死去 99歳

イギリスのエリザベス女王(94)の夫、エディンバラ公フィリップ殿下が9日、死去した。99歳だった。英王室が発表した。
王室バッキンガム宮殿は「女王陛下は深い悲しみとともに、愛する夫エディンバラ公フィリップ殿下の死を発表した」、「殿下は今朝、ウィンザー城で安らかに亡くなった」と述べた。宮殿は半旗を掲げ、エディンバラ公爵の死去を発表する声明文を宮殿前に掲げた。
フィリップ殿下は1947年、エリザベス王女(当時)と結婚した。王女は5年後に女王に即位。以降、殿下はイギリス君主の配偶者として、史上最も長い年月を過ごしてきた。
今年2月にロンドン中心部のキング・エドワード7世病院に入院したが、3月に退院していた。
また、別の病院(聖バーソロミュー病院)で既往症の心臓病の手術を受けていた。

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国葬にはせず
王室の典礼を司る紋章院は、フィリップ殿下の葬儀について、ウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂で執り行われると発表した。新型コロナウイルスの感染流行を受け、通例とは異なる形式になるという。
国葬とはせず、国民が別れを告げられるような遺体の公開安置もしないという。
ただし、「伝統と殿下の遺志に従って」、遺体は葬儀までウィンザー城内に安置されると、紋章院は明らかにした。
紋章院はまた、「残念ながら、一般の人には葬儀に関連するすべての行事について、参列や参加しないようお願いする」との声明を出した。
国全体の悲しみ
フィリップ殿下は1921年6月10日、ギリシャのコルフ島に生まれた。
父親はギリシャ王ゲオルギオス1世の息子で、ギリシャとデンマークのアンドレオス王子。母親はバッテンベルク家のルイ王子の娘で、ヴィクトリア女王のひ孫のアリス王女。ヴィクトリア女王の子孫として、エリザベス女王とは遠縁に当たる。
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英海軍の士官候補生として第2次世界大戦で従軍。地中海でイタリア艦隊との戦いに参加した。日本の降伏時には東京湾上で、英駆逐艦ウェルプで勤務していた。
1947年にエリザベス王女と結婚。戦後は英護衛艦マグパイの艦長を務めた後、妻エリザベス王女が1952年に女王に即位すると共に軍務を退いた。
夫妻は4人の子どもと8人の孫、10人のひ孫に恵まれた。長男のウェールズ公チャールズ皇太子は1948年に誕生。次いでアン王女が1950年に、ヨーク公アンドリュー王子が1960年に、ウェセックス伯爵エドワード王子が1964年に生まれた。
BBCのニコラス・ウィッチェル王室担当編集員は「本当に国全体にとって悲しい時」を迎えたとし、「もちろん、73年間連れ添った夫を失った女王にとっては、とりわけ悲しい時だ」と述べた。
また、フィリップ殿下は「女王の治世の成功に多大な貢献をした」とウィッチェル記者は説明。「女王が果たす役割の重要性を絶対的に忠実に確信していたし、女王を支えるという自分自身の責務の重要性も完全かつ忠実に信じていた」と述べ、「そうした関係や結婚の確かさがもたらす重みこそ、女王の統治の成功にとって不可欠だった」と指摘した。
ジョンソン首相らが追悼
ボリス・ジョンソン首相は「(フィリップ殿下は)数え切れないほどの若者に生きる勇気を与えた」と述べた。
また、「フィリップ殿下はここイギリスと英連邦、そして世界中であらゆる世代の人に愛された」とした。
さらに、君主の配偶者の役割を英国史上最も長く務めたことをたたえるとともに、第2次世界大戦を戦った残り少ない生存者の1人だと言及した。
「殿下はその戦いから奉仕の道徳観を身につけ、戦後の前例のない変化に適用し続けた」
「馬車レースの優れた御者だった殿下は、同じように巧みな手綱さばきで王室と王制の舵取りをしてくださった。そのおかげで、王室が今なおイギリス国民の均衡と幸福の要であり続けることは、議論の余地がありません」と、首相はたたえた。

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イングランド教会の最高指導者、カンタベリー大主教のジャスティン・ウェルビー氏は、フィリップ殿下について、「自分自身ではなく他人の利益を常に優先していた。そうすることで、キリスト教の奉仕精神を見事に例示していた」と述べた。
スコットランドのニコラ・スタージョン自治政府首相は、フィリップ殿下の死去に「悲しんでいる」とツイッターで表明。
「個人的で心からのお悔やみ、さらにスコットランド政府とスコットランドの人々のお悔やみを、女王陛下とその家族に申し上げる」と記した。
最大野党・労働党党首のサー・キア・スターマーは、イギリスが「並外れた公共の奉仕者」を失ったと述べた。また、「女王に対する並外れた献身と愛情」が特に、人々の記憶に残るだろうとした。
市民が花束を次々と
バッキンガム宮殿では半旗が掲げられ、門にはフィリップ殿下の死去を知らせる文書が設置された。
9日午後には多くの人が、追悼の意を表すために同宮殿の外に足を運び、ラッパスイセンやチューリップ、バラなどの花を次々にささげた。
ロンドン・ピムリコに住むリア・ヴァーマさんは、自転車で宮殿の門まで来て、花と「安らかにお休みください、公爵」と書いた手紙を置いた。
「ものすごく悲しい。私たちの国にとって大きな変化の始まりになると思う。公爵がいなくなり、女王の統治はもうあまり長くないかもしれない」
ヴァーマさんにとって、フィリップ殿下は「理解しづらいくらい古めかしい安定の象徴だった。揺るぎない堅実さもたらす基盤のような存在だった」という。

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フィリップ殿下死去のニュースが広まるにつれ、ウィンザー城の門の外にも大勢が続々と集まった。近くに住む小さな女の子も花束をささげた。
花に添えられたカードの1つには、「ご冥福をお祈りします、フィリップ王子」と書かれていた。
女王に対して深い哀悼の気持ちを示すカードもあった。













