ウクライナ東部で軍と分離独立派の緊張高まる、ロシア高官が介入の可能性を示唆

Ukraine's President Zelensky visits troops in the Donbas region or Ukraine

画像提供, Getty Images

画像説明, ウクライナ・ドンバスに駐留するウクライナ軍を視察するウォロディミル・ゼレンスキー大統領

ロシア政府高官は8日、ロシアが支援する分離独立派とウクライナ軍との間で緊張が高まっている問題について、ウクライナが分離独立派への全面的な攻撃を開始した場合はロシアが介入し、ウクライナ東部のロシア語話者の住民を助ける可能性があると警告した。

ウクライナ東部ではウクライナ軍と分離独立派が衝突。ロシアはウクライナとの国境で軍備を増強している。

こうした中、ロシアのドミトリー・コザク大統領府副長官は、ロシア軍が自国民を「守る」ためにウクライナ問題に介入する可能性があると述べた。

「すべては争いの規模次第だ」

また、事態がエスカレートすれば、ウクライナにとって「終わりの始まり」がやってくる、「足元ではなく顔面を撃たれる」ことになると警告した。

アメリカとドイツは共に、ウクライナ東部の緊迫に懸念を示している。

なぜウクライナとロシアの緊張が高まっているのか

ロシアはウクライナ国境に駐留する部隊を増員しているが、脅威と受け止めるべきものではないとも主張している。

ホワイトハウスのジェン・サキ大統領報道官は、ロシア部隊の数がウクライナ東部での紛争が始まった2014年以降で最多となっているとし、「深く憂慮すべき」状況だと述べた。

ロシアは具体的な人数は明らかにしていないが、ウクライナ軍は同国国境に、ロシア軍が3月末時点で約2万人を動員したと主張。ソーシャルメディア上の動画には、ロシアの列車が重火器を同地域に向けて移動させている様子が映っている。

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ウクライナ・ドンバスでのウクライナ軍と、ロシアの後ろ盾を受ける反政府勢力との衝突もここ数カ月で増えている。

8日には新たにウクライナ軍兵士1人が死亡し、今年の死者数は合わせて25人となった。昨年1年間ではウクライナ軍兵士50人が死亡している。

一方、反政府勢力はこの日、ウクライナ軍がドネツク市郊外の村に14発の迫撃砲を撃ち込んだ際、戦闘員1人が死亡したと発表した。

Map of eastern Ukraine
画像説明, ロシア(RUSSIA)とウクライナ(UKRAINE)の位置関係。青色がウクライナの分離独立派が支配する地域 出典:ウクライナ国家安全保障・国防会議

事態の深刻さを示す動きはほかにもあり、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は8日、「事態がエスカレートしている現場」を視察。「ドンバスでのこの困難な時期に、兵士たちと共にある」ことを示すために同地域を訪れた。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は8日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話で会談し、ロシアの軍備強化を和らげることで「緊張を鎮める」よう求めた。

この会談でプーチン氏は、ウクライナが同国東部の状況を煽っていると非難した。

ロシア政府高官はほかに何と?

ロシアのコザク大統領府副長官は首都モスクワで、現在の分離独立派が置かれた状況を、1995年に旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナのスレブレニツァで約8000人のイスラム教徒が犠牲になった虐殺事件になぞらえて語った。

「大統領が言うように、スレブレニツァ(の虐殺)と同じことが起きているのなら、我々は彼らを守りに行かなくてはならないだろう」

プーチン大統領は2019年、ウクライナが保証なしにドンバスの完全な支配権を取り戻した場合、ロシア語話者の住民がスレブレニツァのような大虐殺に遭うかもしれないと、初めて示唆した。

しかし、そのような残虐行為が計画されているとの報告はない。

コザク氏は反政府勢力について、「百戦錬磨の部隊」で構成されているため、当面はウクライナ軍に対抗できるとした。

事の背景

現在の紛争は、2014年3月にロシアが一方的にウクライナ南部のクリミア半島を併合したことがきっかけとなった。

一方的な併合により、西側諸国との間に大きな軋轢(あつれき)が生じ、、欧州連合(EU)とアメリカはロシアに制裁を科した。

その1カ月後には、ロシア語話者が多いドンバスの反政府勢力が、ドネツク地方とルハンスク地方を占領した。

西側諸国や欧州連合(NATO)はロシアが国境を越えてウクライナに軍隊を送り込んでいると非難したが、ロシア側は兵士は「ボランティア」だと主張している。

ゼレンスキー氏は和平実現を掲げ、ウクライナ大統領に就任。昨年7月には停戦することで合意したが、ウクライナ軍と反政府勢力は互いに合意違反行為が行われていると非難を繰り返している。

この紛争により、これまでに推定1万4000人が死亡している。