抗議デモ規制の警察権限拡大する法案に抗議、暴力沙汰に 英ブリストル

Police with batons

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画像説明, 抗議デモ規制拡大に抗議するデモで、警官隊とデモ隊が衝突した(21日、英南西部ブリストル)

英イングランドとウェールズで抗議デモを警察が規制する権限を拡大する内容を含む大型法案の審議が下院で始まったことを受け、英南西部ブリストルで21日、抗議デモがあり、警官隊とデモ隊が激しく衝突した。警察は22日までに8人を逮捕しており、さらに逮捕者は増える見通しだとしている。

英下院は政府提出の「警察、犯罪、量刑と裁判所法案」を審議中。抗議集会の経路選定など事前準備において警察の裁量範囲を拡大し、デモが公共の治安や社会生活を深刻に乱すと判断した場合は集会を制限できるなど、警察の権限を拡大する内容の法案になっている。

昨年の人種差別に対する抗議で起きた銅像の破損のような行為も、最長10年の実刑で罰せられる可能性が生じる。

この法案(bill)を廃案にする(kill)よう求める「Kill the Bill」デモが21日にブリストルであり、数千人が参加。警官隊との衝突で警官21人が負傷した。

地元警察はすでに、6人を暴力的に治安を乱した疑いで逮捕。2人を、武器の違法所持の疑いで逮捕している。さらに、道端の防犯カメラや警官のボディカメラなどで得られた現場映像を詳しく精査しており、逮捕者はさらに増える見通しだとしている。

警察によると、負傷した警官の1人はあばら骨が折れて片方の肺に穴があいた。腕の骨にひびが入った警官もいるという。地元の警官組合は、警官への暴力の一部は「殺人未遂行為に近い」ものだったと批判した。

「犯罪者が隠れていた」

エイヴォン・サマセット警察のアンディー・マーシュ本部長は、法案に抗議するための集会が、「犯罪的な破壊行為」をするために集まった「過激派にのっとられた」と批判。「抗議に集まった3000人のうち、約400~500人の凶悪な犯罪者が隠れていた」として、警察側が暴力行為のきっかけを作ったわけではないと述べた。

市内の警察署前で行われた集会は当初、法案に平和的に抗議するためのものだった。だが、午後5時半ごろから「暴力的な方向」に切り替わり、抗議者が警察署の屋根によじ登ったり、群衆に花火を投げ込んだり、壁に落書きをしたりしたという。

さらに12台の警察車両が破壊され、2台には火がつけられたという。

エイヴォン・サマセット警官連合は、警官たちが中にいる車両にも火をつけようとした者たちがおり、「それは殺人未遂に近い」、「そのような暴力行為は容認できない」と非難している。

Thousands walk through the streets of Bristol

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画像説明, デモ規制の警察権限を強化する法案に抗議する数千人が市内を行進した(21日、ブリストル)
The protest began peacefully before later turning violent

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画像説明, 抗議集会は当初、平和的なものだった。警察署の前で座り込んだ人たちの中には、「私たちの沈黙はあなたたちの権利ではない」とプラカードを掲げる人もいた
Police and the front line of protestors clashing

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画像説明, 警察署前で法案に抗議するデモ隊と警官隊がもみ合いになった
Firework set off in crowd

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画像説明, 夕方になると抗議者の一部が警察署の屋根に上り、壁に落書きをし、群衆の中に花火を投げ込んだ
Firework set off next to police

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画像説明, 抗議者や警官たちの近くで発火した花火
Police van on fire

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画像説明, デモでは警察車両に火がつけられた
A protester smashes the window of Bridewell Police Station

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画像説明, 警察署の窓を割る抗議者
Protesters watch a police van burn

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画像説明, 警察署の前で炎上する警察車両
BBC
画像説明, デモでは警察車両に火がつけられ、花火や発炎筒も使われた

ボリス・ジョンソン英首相は、市民には抗議する権利があるものの、暴力的な光景は「容認できない」と批判。抗議者は「平和的かつ合法的に抗議するべきだ」と述べた。

抗議の対象になっている「警察と犯罪」法案を議会に提出したプリティ・パテル内相は下院で、ブリストルの抗議を「無政府的」で「暴力的」だと述べた。

内相はまた、警官に衝突した少数の人たちは「犯罪的な暴漢のような態度」で、大勢の命を危険にさらす「無秩序」な行動に出たと批判。「市民を守るために自分を危険にさらした勇敢な警官たち」をたたえた。

「法案をごり押ししている」

ブリストルのマーヴィン・リース市長は、デモで暴力行為に及んだ抗議者たちを「革命の妄想を体現しようと」しており、「身勝手」だと非難した。

市長はさらに、今回の暴力沙汰でブリストルの街が前より危険な場所になってしまったと憂慮。暴力行為に加担した抗議者が実際にブリストル市民なのか、それとも各地のデモを観光客のように渡り歩く「プロテスト・ツーリスト」なのかと疑念を示した。

一方で、法案への抗議集会に参加した大学生のリアナ・プルーイットさんは、「デモ主催者にしっかりきちんとデモを企画し実施するのを許さないから、こういうことになる。しっかりしたデモを認めなければ、過激派や騒ぎたいだけの連中がそれに乗じて混乱を引き起こしてしまう」と話した。

「それに、もし政府がパンデミックの最中に抗議集会を認めたくないなら、どうして国民にしっかり点検させずにこの重大法案をごり押ししているのか」とも、プルーイットさんは述べた。

BBC
画像説明, デモの翌日、建物の壁から落書きを消す市職員たち

BBCのトム・シモンズ内政担当編集委員によると、現場では警官の人数よりデモ隊の方が多数だったため、警察はその場で現行犯逮捕を強行してさらに騒ぎを大きくするよりも、隊列を崩さずに後日の捜査のための証拠集めを優先した。

「その結果、危険な印象が残った。混乱がこのまま収まらないのではないかという感覚だ。これは2011年にイングランド各地で暴動が相次いだ際の、初期の感覚に似ている」と、シモンズ記者は指摘している。