イスラエル、パレスチナにワクチン5000回分を供給へ

A Palestinian medical worker collects a swab sample from a boy to be tested for the coronavirus disease (COVID-19), in the southern Gaza Strip

画像提供, Reuters

画像説明, ガザ地区では新型コロナウイルス検査は始まっているが、ワクチン接種は開始されていない

イスラエルは1月31日、新型コロナウイルスのワクチン5000回分を、パレスチナに供給する方針だと発表した。同自治区の最前線で働く医療従事者が接種する。

イスラエルは世界で最もワクチン接種事業が進んでいる国のひとつだが、同国が占領しているヨルダン川西岸とガザ地区のパレスチナ人には接種が行われていない。

国連の人権高等弁務官事務所は、占領地でワクチン接種を実施する責任は、イスラエルにあると指摘している。

これに対しイスラエルは、これまでの合意にワクチン接種は含まれておらず、パレスチナ側からも要請はなかったとしている。イスラエルからパレスチナへのワクチン供給は初めてとなる。

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米ジョンズ・ホプキンス大学の集計では、イスラエルではこれまでに64万人が新型ウイルスに感染。死者は4700人超に上っている。ヨルダン川西岸とガザ地区では16万人近くが感染し、1833人が亡くなっているという。

イスラエルは米ファイザーと特別なワクチン供給契約を結んでいる。イスラエルは重要な医療データをファイザーに提供する見返りに、先行してワクチンを手に入れている。その結果、人口当たりのワクチン接種率で他国を引き離している。

これまでに人口の20%近くに当たる約170万人が2回の接種を完了した。1回目を受けた国民は300万人以上に上る。しかし、イスラエルはなお全国的なロックダウンを継続している。

ベニー・ガンツ国防相は31日、イスラエルがパレスチナ自治政府にワクチンを提供すると発表した。パレスチナ側からのコメントはない。

パレスチナ自治区の状況は?

パレスチナ自治政府が管理するヨルダン川西岸(人口約270万人)でも、イスラム組織ハマスが占領するガザ地区(180万人)でも、ワクチン接種は始まっていない。

パレスチナの保健当局によると、ワクチン供給について協議が始まっているものの、接種開始のめどは不透明だ。

パレスチナはさらに、世界保健機関(WHO)の途上国向けワクチンプログラム「COVAX」を通じたワクチン供給にも期待しているものの、これも開始時期は不明だ。

すでにロシア製のワクチンが数千回分到着しているというが、これがどこに提供されたかは分かっていない。

パレスチナの接種事業の責任はどこに?

イスラエルはパレスチナのワクチン接種について、1993~1995年に結ばれたオスロ合意が責任分担の根拠になると主張している。

オスロ合意は正式な和平条約が結ばれるまでのヨルダン川西岸とガザ地区の統治方法を定めているが、これによると占領地区の公衆衛生はパレスチナ自治政府の担当だとイスラエルは主張する。

一方パレスチナ側は、感染症対策などではイスラエルはパレスチナに協力すべきだと、オスロ合意は定めていると反論している。

国連は、占領地についてはオスロ合意など個別の合意よりも、ジュネーヴ諸条約が優先されるという立場で、ガザ地区とヨルダン川西岸のパレスチナ人にワクチンを公平に供給する責任がイスラエルにあるという見解を示している。

しかし、感染症対策の責任を含め、イスラエル占領地の扱いについて国際法上の議論は尽きない。

イスラエルによるワクチン接種事業では、国内のアラブ系市民や、併合された東エルサレムに住むパレスチナ人も対象となっている。

世界保健機関は1月29日、「ワクチン・ナショナリズム」が発生していると警告。「パンデミックを終わらせる助けになるツールそのものが、世界の不平等を拡大するかもしれない現実の危機」が迫っていると述べた。