米大衆紙のバイデン親子記事、SNSが表示制限 ツイッターCEOは自社対応批判

Joe Biden and the New York Post logo

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米大統領選に出馬している野党・民主党のジョー・バイデン候補とその息子に関する米大衆紙の記事について、フェイスブックとツイッターが表示を制限した問題で、トランプ陣営や与党・共和党だけでなく、ツイッターのドーシーCEOも自社の対応を「容認できない」と批判した。

ツイッターは14日、米大衆紙ニューヨーク・ポストの記事について、リンクが「安全でない可能性がある」と表示し、ユーザーが記事リンクをツイートできないようにした。その理由については後から、記事内に「ハッキングによって得られた内容」が含まれているからだと説明した。

同様にフェイスブックも、問題記事がニュースフィードで拡散されるのを制限した。これは、記事内容が意図的に事実と異なる情報操作かどうかを第三者がファクトチェックして判断するための時間を確保するのが目的で、「通常の手続きだ」と説明した。

とはいえ、読者に人気の一般大衆紙の記事がこういう扱いを受けるのは、きわめて異例だ。

11月3日の大統領選を目前にした今回のツイッターとフェイスブックの対応によって、ソーシャルメディアには偏向や検閲が存在するという批判が再燃している。

「容認できない」

ルーパート・マードック氏経営のニューズ・コープ傘下にあるニューヨーク・ポストの記事には、バイデン前副大統領の息子、ハンター・バイデン氏が送ったり受け取ったりしたものだとされるメールのスクリーンショットが含まれており、個人のメールアドレスを読み取ることができた。

そのほか、ハンター氏のきわめて個人的な写真も使用していた。この写真は、2019年4月にコンピューター修理店に持ち込まれたラップトップ・コンピューターから取り出したものだと同紙は書いている。

持ち主はパソコンを回収しなかったものの、修理店がハードドライブの内容をコピーし、このコピーをトランプ氏の弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏に提供したのだという。記事によると、ジュリアーニ氏がこれを同紙に提供した。

また、かつてトランプ氏の選対委員長や戦略担当だったスティーヴ・バノン被告(別件の詐欺罪で起訴)が9月の時点で同紙に、このハードドライブの存在を伝えたのだという。

ツイッターは14日、この記事のリンクを投稿できないようにした。投稿しようとすると、「このリンクは危険な可能性があるとツイッターか当社パートナーが特定したため、この要求を完了できません」というエラーメッセージが表示された。

ツイッターは、ニューヨーク・ポスト記事の内容を話題にしてツイートすることは利用規則違反ではないものの、メール・アドレスなど個人情報が記載されていたほか、「ハッキング」によって入手した情報を暴露したからだと、記事の表示制限の理由を説明した。

この記事を個人的にダイレクト・メッセージで送信することもできなかった。記事リンクをクリックしようとしたり、すでにツイートされた記事をリツイートしようとすると、リンクが「危険な可能性がある」という表示が出た。

これについてツイッターのジャック・ドーシーCEOは、なぜこうして介入したのか、ツイッターとしてもっと早く説明すべきだったと認めた。

「@nypost記事に関する我々の対応についての情報発信は、よろしくなかった。そしてURL(サイトのリンク)をシェアするツイートやDM(ダイレクト・メッセージ)を、説明ゼロでブロックしたのは、容認できない」と、ドーシー氏はツイートした。

ツイッターは、「自分たちのルールをこうして適用する際には、もっと分かりやすく説明するためさらに努力が必要だと承知している」と認めた。

共和党が多数を占める連邦議会上院の司法委員会は20日にも、この件についてドーシー氏を証人として公聴会に喚問するか採決する。

すでに共和党の委員7人が、喚問に賛成すると話している。

テキサス州選出のテッド・クルーズ議員は、「主要メディアの報道をこのように検閲するなど見たことがない。巨大IT企業は一線を超えた。責任を取る必要がある」と批判した。

バイデン陣営の反応は

ニューヨーク・ポスト紙の記事は、2015年4月のメールに関する内容だった。それによると、ウクライナのエネルギー企業ブリスマの顧問が当時、バラク・オバマ政権の副大統領だったバイデン氏との面会を仲介してくれたハンター氏に感謝している。

ただし、記事はこの面会が実際に行われたものか証拠を示していない。バイデン氏の選挙対策陣営は、そのような会談はなかったとしている。

ハンター・バイデン氏は2014年、父バイデン氏が副大統領だった当時、ブリスマ社の役員に就任した。その後、2019年に辞任している。

バイデン陣営は、「当時のジョー・バイデンの公式日程を確認した。ニューヨーク・ポストが言うような会談は、いっさい行われていない」と説明した。

「(トランプ大統領の)弾劾手続きの最中に行われた報道機関による調査や、共和党が主導する2つの上院委員会の調査でさえ(この調査は共和党の同僚議員に「正当なものではなく」政治的な動機によるものだと批判されていた)、同じ結論に達した。ジョー・バイデンはウクライナに対してアメリカの公式な外交を担当しており、問題行動は何もとっていないというのが、その結論だった」と、バイデン氏の広報担当、アンドリュー・ベイツ氏は述べた。

「トランプ政権関係者が宣誓をした上で、こう証言している」とベイツ氏は強調した。

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大統領報道官のアカウント一時凍結

ツイッターの対応によって、ソーシャルメディアはリベラル寄りで反保守で偏向しているという主張が盛り上がっている。

トランプ米大統領は、「(バイデン親子が)怪しいと示す記事をフェイスブックとツイッターが削除したのは、ひどい話だ」とツイートした。

トランプ氏はさらに支持者集会で、ホワイトハウスのケイリー・マケナニー大統領報道官の個人アカウントがニューヨーク・ポスト記事の内容をツイートし、「真実を報告した」せいで、ツイッターに凍結されたのだと述べた。

ツイッターは、確かに個人アカウントの凍結解除のためこの投稿を削除するようマケナニー氏に伝えたと認めている。

Kayleigh McEnany and Donald Trump

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画像説明, トランプ陣営はマケナニー報道官のアカウントが凍結された証拠としてスクリーンショットを投稿した

トランプ氏はさらに、ソーシャルメディアなどの利用者が投稿する内容についてウエブサイトの運営会社の法的責任を制限する法律の規定について、撤廃するようあらためて呼びかけた。

トランプ氏はかつて、ソーシャルメディアの運営各社が投稿内容を制限するならば、各社は出版社と同じように扱われるべきだと述べている。

ニューヨーク・ポスト側は、ソーシャルメディア各社がバイデン陣営をひいきして応援していると批判。「フェイスブックやツイッターはメディア・プラットフォームではない。どちらもプロパガンダ機関だ」と社説で非難した。

下院司法委員会の共和党議員団による公式ツイッターアカウントは、自分たちのウエブサイトにニューヨーク・ポスト記事の写しを掲載したと投稿し、サイトのリンクを共有するよう呼びかけた。

ツイッターは今では、このリンクの投稿も制限している。

<分析> 虚偽情報をめぐる戦い――マリアナ・スプリング、虚偽情報・ソーシャルメディア担当記者

2つの戦局が激化した。1つは、米大統領選を目前にした虚偽情報とソーシャルメディアの戦いだ。

政治的な虚偽情報や介入に対策をとるようツイッターやフェイスブックへの圧力はかねて高まっていた。しかし今回の件は、ソーシャルメディアが果たしてどこまでやるべきか、あるいはやってはならないのかについて、大きな疑問を投げかけた。

メインストリームな報道機関による情報の拡散を、ツイッターがこれほど包括的に制限したのは初めてのことだ。

一方のフェイスブックにとってはそれほど斬新なことではない。フェイスブックでは以前から、内容の信憑性(しんぴょうせい)に疑問のある記事の拡散を遅らせ、客観的なファクトチェック担当が事実確認する時間を確保していた。

2つ目の戦局は、ソーシャルメディア各社(特にツイッター)とトランプ大統領の間の戦いだ。

トランプ氏とその支持者たちは、巨大IT各社が右派の意見を封じているとかねて批判してきた。今回の件は、その声にとって燃料となる。

ツイッターのドーシーCEOは今回の対応について、記事内の個人情報と、ハッキングされた情報に関する自社規則が理由だと説明した。

けれども、同社がその理由をただちに説明しなかったことから、共和党はツイッターに激怒し続けている。