BBC司会者のトランプ批判、「指針違反」判断の詳細が明らかに

Naga Munchetty

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英BBCは27日、朝の情報番組「ブレックファスト」司会者のナガ・マンチェッティ氏による、アメリカのドナルド・トランプ大統領への批判的なコメントを編集指針違反とした理由について、追加の詳細情報を公表した。

パキスタン系のマンチェッティ氏は、今年7月にトランプ大統領が、自分を批判する有色人の女性下院議員に対して、「もといた国へ帰れ」といった主張を繰り広げたことを報じた際、大統領の発言は「人種差別」などと批判。これがBBCの指針違反に当たると、同局の苦情対応ユニットが結論付けていた。

BBCは声明で、同局の編集指針では「発言した個人について、あるいはその動機について、BBCジャーナリストが私見を述べることが(中略)認められていません。今回これに当たるのが、トランプ大統領に関する発言です」と説明。

さらに、「視聴者からの苦情内容を一部認めたのは、こうした理由からです。発言者の動機を判断するのは、視聴者がすべきことです」と声明は述べた。

BBCの声明はさらに、トランプ大統領の発言は「人種差別的だと広く非難されており、我々はこれについて幅広く報じた」としている。

苦情を寄せた視聴者への手紙によると、BBCは、トランプ大統領の「動機」や、大統領の発言がもたらす「影響を推測」するマンチェッティ氏のコメントは、「同局の指針で認められている範ちゅうを超えていた」と説明していた。

BBCはこの手紙で、公の政策について記者の個人的意見を「視聴者が判別できるようであってはならない」とも書いている。

BBCニュースは、マンチェッティ氏がなんらかの措置や処分は受けていないことを確認している。

番組内のやり取り

BBCは7月17日放送の「ブレックファスト」のやり取りの全容を公表した。

マンチェッティ氏がトランプ大統領を批判したのは、大統領支持者のインタビューが流れた後のこと。

共同司会者のダン・ウォーカー氏は「帰れ」発言について、「これこそ一番分かりやすい発言だと僕は思った。誰が言ったのかは思い出せないが、女性が、人生の中で何度ももといた場所へ帰れと言われたことはあるが、大統領執務室にいる人物から言われたことはないと言ったときです」と述べた。

マンチェッティ氏はこれを受けて、「私は有色人の女性として、もといた場所へ帰れと言われるたびに、こうした発言は人種差別に深く根付いたものだと感じてきました」と発言した。

さらに、「今ここで誰かを非難はしないけど、特定の表現が何を意味するのかは、分かるものです」と述べた。

Donald Trump

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するとウォーカー氏は、「あなたはここで自分の意見を言っているわけじゃないけど、こうした言葉を投げかけられたことのある立場として、どういう気持ち? トランプ氏の口からこの言葉を聞いてどう思った?」とマンチェッティ氏に尋ねた。

これに対しマンチェッティ氏は、「本当に腹が立った。猛烈に。こういった立場にいる人が、境界ギリギリのこうした表現を使ってもいいと思っていることに、この国の大勢が本当に激怒すると思う」と答えた。

「では、トランプ氏がこういう物言いをすることで、他の人が同じような発言をすることが正当化されてしまうと思う?」とウォーカー氏が続けると、「ええ、ええ」とマンチェッティ氏は述べた。

ウォーカー氏が「これは、トランプ氏が自分の地位を固めるための、周到な戦略のように思える」と述べると、「関心を集めるためだけに使う言葉ではない(中略)責任の伴う地位にあるのだから」とマンチェッティ氏は付け加えた。

Dan Walker

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画像説明, ダン・ウォーカー氏は2016年、ビル・ターンブル氏の後任として「ブレックファスト」の司会者に就任した

マンチェッティ氏への支持を表明

苦情対策ユニットがマンチェッティ氏の発言は指針違反だとの判断を示すと、同氏には支持を表明するメッセージが集まった。

英野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、BBCの判断を「とんでもない」と批判。「誰かに『もといた場所へ帰れ』と言うのは、人種差別だ。ナガ・マンチェッティ氏は事実を述べた。マンチェッティ氏は自分が受けた人種差別の経験を共有した。こうした発言が、編集指針に抵触するなど、あり得ない。BBCはこの驚くべきとんでもない判断について説明しなければならない」とツイートした。

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私見を持つことは「正当」だが……

BBCの苦情対策ユニットは、マンチェッティ氏が自分の人種差別的な経験や、人種的マイノリティーの人がもといた国に帰れと言われるといった人種差別的文脈を反映して、ウォーカー氏に答えるのは「完全に正当」なことだとしている。

一方で同ユニットは、マンチェッティ氏は、トランプ氏が発言した動機や影響を批判的に推測したと指摘。「そのような判断は、視聴者がすべきことだ」と問題視した。

BBCは書簡で、判断理由について「当然の公平性を確保するために、あらゆる問題に完全な中立が必要だというわけではありません。民主主義の根本原理から距離をおくべきだというわけでもありません。大統領の発言は人種差別的だと広く受け止められたし、イギリス国内では、支持政党を問わず非難されていました」と説明した。

「マンチェッティ氏は、共同司会者からコメントを求められた。同氏には、この問題について強い思い入れを持つほどの正当で個人的な理由がありました。そのため、我々の見解では、同氏には『もといた国に帰れ』といった発言へ個人的な反応を示す権利がありました。同氏自身の経験にも深く関わる問題であると同時に、一般的に人種差別的だと解釈される表現なので」

さらに、「一方で、共同司会者とのやり取りの終盤で、『私は私見を述べるためにここにいるのではない』と認めたにも関わらず、マンチェッティ氏が、大統領の発言をめぐる動機や影響に関する推測について、直接的で批判的なコメントをしたことも明らかです。我々は、この発言は、こうした状況下に編集指針が認める範ちゅうを逸脱していると判断しました。よって、あなた(視聴者)の苦情を認めます」とBBCの苦情対策ユニットは、視聴者に書いた。

BBC広報は、マンチェッティ氏は取材に対応できないとしている。