イスラエルの探査機、民間初の月面着陸に失敗
レベッカ・モレル科学担当記者(BBCニュース)

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イスラエルの無人月面探査機がエンジントラブルに見舞われ、民間として初めての月面着陸に失敗した。
イスラエルの探査機「べレシート」(ヘブライ語で「はじまり」の意味)は、2月22日に米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられた。
ベレシートは月面への軟着陸を試みたものの、降下する際に技術的な問題が発生した。
これまでに旧ソ連、アメリカ、中国の政府機関が月面着陸に成功しており、イスラエルは4カ国目となることを目指していた。
今回のプロジェクト発起人で、主要出資者でもあるモリス・カーン氏は、「成功しなかったが、努力したのは確かだ」と述べた。
「月への到達を実現できたことは本当に素晴らしいと思う。我々は誇りに思っていい」
イスラエル・テルアビブにある管制室から見守っていたベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「1回目で成功しなかったのなら、また挑戦すればいい」と激励した。

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約7週間かけて月を目指したベレシートは、月面から15キロ離れた軌道まで接近した。
着陸を試みる段階でベレシートとの通信が途絶え、司令部では緊張が高まった。その後、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)のオファー・ドロン氏が「我々は残念ながら着陸を成功させられなかった」と述べ、探査機に問題が生じたと発表した。

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イスラエル国民もベレシートの月への飛行を見守った。
ドロン氏がエンジンの停止を告げると、司令部にはどよめきが起こったが、「エンジンを回復させるために探査機をリセットしている」とドロン氏は述べた。
数秒後にエンジンが回復すると拍手が起こった。直後に通信が途絶え、ミッションは失敗に終わった。
イスラエルの民間団体「スペースIL」とIAIによる共同プロジェクトの費用は約1億ドル(約111億円)で、将来の低予算の月面探索へ道を切り開いた。

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月に到達するまでなぜ何週間もかかったのか
月までの平均距離は38万キロで、通常は数日で移動できる。
ところがベレシートはその15倍以上の距離を約7週間かけて飛行した。その理由はコスト面だ。

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ベレシートは、月までの完璧な軌道に入るまでロケットから分離しないという方法ではなく、米スペースX社の「ファルコン9」に同じく搭載されていた通信衛星などと共に、上空で分離され地球を周回する軌道に入った。
地球を周回後、途中で月に向かう軌道に切り替えて月面着陸を試みた。
複数の衛星などと共にロケットに相乗りすることで、打ち上げ費用を抑えることができた。その一方で、探査機はより複雑な飛行ルートをたどらなければならなかった。

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ベレシートは月の表側、北緯28.0度、東経17.5度を中心に広がる「晴れの海」と呼ばれる月の海近くに着陸し、高解像度カメラによる撮影や、磁場に関する調査を行なう予定だった。また、地球から月までの距離を正確に測定するため、米航空宇宙局(NASA)の測定器も搭載していた。

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低コストの月面探査をめぐっては、2007年から2018年までの間、民間による月面探査を競うコンテスト「Google Lunar XPRIZE」が開催された。賞金は2000万ドル(約22億円)だったが、探査機を月に着陸させ高解像の画像を撮影するなどの課題を達成したチームは現れなかった。







