「息子は父親に会いたがる」 オレナ・ゼレンスカさん、戦争が家族に与えた影響をBBCに語る
ヤルダ・ハキム、マッテア・ブバロ、BBCニュース

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の妻、オレナ・ゼレンスカさんが、BBCのインタビューに応じ、ロシアによる侵攻が家族に与えた影響について語った。
私的な内容に踏み込んだインタビューでゼレンスカさんは、自分の子供たちが先行きが見えない中で暮らし、将来への展望を描けないことがつらいと語った。
また、家族の団欒(だんらん)の時間が失われたことにも触れた。
「少し自己中心的なことかもしれませんが、私がそばにいてほしいのは夫であって、歴史的な人物ではないのです」と、ゼレンスカさんは話した。
「それでも私たちはしっかり、強く生きています。気持ちを強く持っていますし、体も丈夫です。みんなで一緒に、この事態を乗り越えられる。そう確信しています」
2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した際、ゼレンスカさんは子供たちと共に数カ月にわたり、非公開の場所に隠れていた。
侵攻当初の気持ちについてゼレンスカさんは、「常にアドレナリンの勢いを感じていた」と説明。時にがたつにつれて、自分を落ち着かせ、「この状況の中で」生活し始めなくてはならない、その「必要がある」のだと気づいたという。
昨年5月になって、開戦から初めて身を潜めていた場所を離れ、公の場所に出た。それ以来、元脚本家のゼレンスカさんはスポットライトを浴び続けている。各国を飛び回り、首脳に会い、演説をしている。
「私たちは夫と一緒に暮らしていません。家族は離れ離れです」と、ゼレンスカさんはBBCに語った。
「会う機会はあっても、そうしょっちゅうは会えません。会いたくても会えないことのほうが多い。息子は父に会いたくて、寂しい思いをしています」
しかし、先の見えない戦時下の生活が、子供たちの気持ちに負担を与えているという。
「子供たちが何も計画しないのは、見ていてつらいです。2人とも、まだこんなに若いのに。娘は19歳です。その年代の若者なら、旅行をしたい、新しい経験をしたい、新しい感覚を味わいたいと夢見るものですが、娘にはその機会がありません」
「自分自身に許される時間には限界があります。そういうもので、私たちはその限界の中で何とか生きようとしています」
ゼレンスキー大統領とゼレンスカさんは高校時代に出会った。その後、ゼレンスキーさんは俳優として、ゼレンスカさんは脚本家として、コメディー集団やテレビの制作会社で一緒に働いた。
ゼレンスカさんは、夫が現在のような「歴史的人物」になるとは夢にも思っていなかったと話す。そして、夫を恋しく思うし、夫として自分のそばにいてほしいと語った。
ゼレンスカさんは、自分がそのように夫と一緒にいたいと願うのは「自己中心的」かもしれないとしつつ、ゼレンスキー大統領は「本当にこの戦争をやり抜くエネルギー、意志力、インスピレーション、そして頑固さ」を持っていると述べた。
「私は彼を信じていますし、支持しています。彼には力がたっぷりある。私の知るほかの誰が今の彼の立場だったとしても、現状はもっと大変だったでしょう。彼は本当に強くて粘り強い人です。そして粘り強さこそ、今の私たち全員に必要なものです」
大統領夫人としてのゼレンスカさんはこのところ、戦争によって心理的な影響を受けた国民の支援に注力している。また、メンタルヘルス(心の健康)や心の回復力、粘り強さに注目したイベントをキーウで開く準備を進めている。イギリスの著名俳優・作家で、メンタルヘルスについて精力的に活動するスティーヴン・フライ氏が、一緒にこのイベントを共催している。
「誰かに活力や希望、助言を与えられれば、あるいは私自身の姿を通じて、私たちは生きて、働いて、前に進むのだと、そのお手本になれればいいと、本当に思います」と、ゼレンスカさんは語った。
「誰にも未来は分かりません。何より、21世紀に欧州の真ん中でこんな戦争が、こんな残酷なことが起こるなんて、誰も想像できませんでした。こんな流血の戦争が起きるだなんて。なので私も、自分が今の立場に立つなんて、思ってもいませんでした」
ウクライナ国民は明日も分からなければ、未来に自信も持てないが、希望は持っている。ゼレンスカさんはそう話した。
「私たちは勝利に向けて、大きな希望を抱いています。けれども、それがいつになるかは分かりません。そして、こうして長い間待ち続けることで、絶え間なくストレスにさらされている。私たちはその負担も強いられています」










