【解説】 中国で多発する学校襲撃事件 背景に何があるのか
ルパート・ウィングフィールド=ヘイズ、BBCニュース(バンコク)

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中国広東省で10日、刃物を持った男が幼稚園を襲撃し、3人の子どもを含む6人が死亡する事件があった。動機はほとんど分かっていない。
この襲撃は報復だとのうわさが流れている。殺された成人の1人が過去に、襲撃者の子供を車ではねたというものだ。しかしそれでは、子供3人と教師1人を含む6人が殺害された理由が説明できない。
こうした犯罪は意味のないものに思える一方で、悲しいほど共通点もみられる。
1990年代、中国ではこうした事件はほぼまったく耳にしなかった。子供が悲惨な目にあっていなかったということではない。あっていた。
2001年3月、江西省の学校で爆発が起き、子供41人が亡くなる悲惨な出来事があった。捜査の結果、この学校は爆竹工場としても稼働しており、子供たちが安価な労働力とされていたことが明らかになった。
この悲劇は中国を震撼させた。子供たちが搾取され、安全が無慈悲に無視されていた事実に、多くの人が戸惑い内省した。しかし、この子供たちの死は事故だった。
そして2010年ごろから、何かが変わり始めた。この年、刃物による襲撃事件が立て続けに発生し、合わせて17人の子供が死亡した。
これは全く違う事態だった。子供たちは、最大限の痛みと怒りを引き起こすために、故意に標的にされたのだった。
温家宝首相(当時)は事件現場を訪れ、ただちに学校の警備強化を呼びかけた。また、このような犯罪の根源となっている「社会的緊張」に対処しなければならないと述べた。
「社会的緊張」とは、興味深い言葉の使い方だ。これは、一見、無意味に見える犯罪に理屈があることを示唆している。

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これ以降、中国ではこの種の襲撃事件が劇的に増えた。犯人はほぼ全てのケースで男性で、最大限の怒りを引き起こすのが目的だった。
2018年、雲南省の学校で男性が教室に立ち入り、生徒らに向けて腐食性の化学物質をまき散らす事件があった。幸いにも死者はなかったが、50人が病院に運ばれ、何人かは重傷を負った。
化学物質を購入し、調合し、綿密に計画を立ててこうした襲撃におよぶ、その理由はいったい何なのか。
これは中国に限った現象ではない。
日本では2019年、不満を抱えた40代の男性が京都市のアニメ制作会社の玄関にガソリンをまき、火をつける事件があった。この火災で若いアニメーターら36人が亡くなった。そのほとんどが女性だった。男性は警察に、自分のアイデアが盗用されたとして、この制作会社に仕返ししたかったのだと語ったとされる。
専門家らは、こうした事件を起こすのはほとんどが男性で、ある種の人物像に当てはまると指摘する。
自分たちが社会の一員だとは感じておらず、社会に対して怒りと憤りを抱いているような人たちだという。
そして、センセーショナルで暴力的な犯罪を起こすことで、自分たちの存在を誇示するとともに、自分たちが憎んでいる社会に痛みと苦しみを与えるのだという。
別の要因も影響か
だが中国ではほかにも、こうした事件が増加している要因があるかもしれない。
中国は過去20年間で類まれな社会的・経済的変遷を遂げた。中央集権的な社会主義国家から超競争的な自由市場経済に移り変わり、大金持ちになった者もいれば、もうけ話に縁がなかった者もいる。
中国の人々は今、「恋人が欲しければいい車を持て、妻が欲しければまずマンションが必要だ」と冗談を言う。
しかしこれは冗談などではない。
低収入や失業中で社会的地位の低い男性は、結婚相手を探し当てる見込みがほとんどない。こうした状況は新型コロナウイルスのパンデミックでさらに悪化した。ロックダウンによって数百万人もが何カ月間も自宅に閉じ込められ、若年層の失業率は20%前後の状況が続いた。
中国には今、多数の人を標的にした襲撃事件を表す言葉がある。「報復社会(社会への報復)」だ。10年以上前に最初の「報復社会」攻撃を引き起こしたともいわれる社会状況は、悪化の一途をたどっている。






