小惑星の衝突で死亡した恐竜? 脚の化石発見の米最新研究が話題に
ジョナサン・エイモス科学担当編集委員

研究者たちの前に、素晴らしく保存状態の良い恐竜の脚が置かれた。
皮膚が完全に残っている状態のこの化石は、米ノースダコタ州タニスの発掘現場で見つかった、さまざまな発見のひとつだ。
しかし、この化石の素晴らしい点は、その保存状態だけでない。タニスの恐竜は地球に巨大な小惑星が衝突した日に死亡し、地中に埋まったのだと、研究者たちは主張しているのだ。
小惑星が衝突した6600万年前のその日に、恐竜の時代が終わり、哺乳類(ほにゅうるい)の時代が始まったと考えられている。
しかし、衝突前の最後の数千年間に相当する地層からは、化石がほとんど見つかっていない。衝突そのものを経験した標本が見つかれば、それはきわめて稀有な事例になる。
BBCは3年にわたってタニスの発掘現場を取材してきた。サー・デイヴィッド・アッテンボローの解説と共に、イギリス国内では4月15日に放映する予定だ。
番組に登場する発見の多くは、初めて一般公開される。
タニスではこの脚の化石のほかにも、衝突後に空から降ってきた断片を吸い込んだ魚の化石も見つかっている。
木の棒に貫かれた状態のカメの化石、小さな哺乳類やその巣、トリケラトプスの皮膚、翼竜の卵に残っている胎児、そして、衝突した小惑星そのものの断片と思われるものも発見されている。
タニスでの発掘を主導する英マンチェスター大学の大学院生、ロバート・デパルマ氏は、「ここで何が起きたのか、その一瞬一瞬を教えてくれるような、多くの発見がある。まるで映画の中の出来事を見ているようだ。岩石柱や化石を見ると、その時代に戻ったような気がする」と話した。
チョウザメのエラ
宇宙から飛来した全長約12キロの岩石が地球に衝突し、最後の大量絶滅を引き起こしたという説は、現在では広く受け入れられている。
衝突地点は、ユカタン半島沖のメキシコ湾だと特定されている。タニスからは約3000キロ離れているものの、この衝突エネルギーは非常に大きく、被害も広範囲に及んだ。
ノースダコタ州の化石発掘現場は、混沌としている。
残されている動物や植物は、想像を絶する地震によって引き起こされた川の水の波によって、堆積物の中に巻き込まれてしまったようだ。その結果、水生生物が陸上生物と混在している。

この絡まりあった化石の中にいたチョウザメとヘラチョウザメが、調査の鍵だ。エラには小さな粒子が詰まっていたが、これは衝突によって飛び出した球状の溶岩が、地球のあちこちに再び落下したものだという。その粒子が川に墜落した際に、チョウザメが吸い込んだとみられている。
この粒子とメキシコの小惑星衝突地点は、化学的に結びついている。放射年代測定でも合致するという。さらに、化石として残っていた木の樹脂から回収された粒子のうち2つには、地球外から来たことを示唆する小さな包有物が含まれていた。
英マンチェスター大学のフィル・マニング教授は、「小さなガラス球の中に内包物があることに気づいたので、オックスフォード大学近郊のダイヤモンドX線シンクロトロン(円形加速器)で化学分析を行った」と述べた。マニング教授は、デパルマ氏の博士課程の指導教員を務めている。
「その結果、その物質を化学的に分解し、組成を特定することができた。研究のあらゆる証拠、あらゆる化学データから、それが恐竜の時代を終わらせた小惑星衝突の一端だということが強くうかがえる」
「ほとんど即死状態」
タニスの存在とその主張は、2019年の米誌『ニューヨーカー』初めて公になった。これは当時、騒動になった。
科学界では通常、新しい発見はまず、学術雑誌上で発表することが要求される。タニスの発掘については現在、いくつかの査読付き論文が発表されているが、発掘チームは、化石の抽出や準備、描写といった綿密なプロセスを経て、さらに多くの論文を発表すると約束している。
BBCは番組制作のため、外部コンサルタントを招き、多くの発見について調査を行った。
ロンドンの自然史博物館のポール・バレット教授は、前述の脚の化石を調べた。バレット教授は、鳥盤類という(大半が草食の)恐竜の専門家だ。
「これはテスケロサウルスだ。この恐竜が属するグループは、皮膚の状態について記録がこれまで得られていない。それがこの化石を見ると、トカゲのようなうろこを持つ生物だというのが、決定的に分かる。同時代の肉食生物とは異なり、羽毛はなかった」と、バレット教授は説明した。
「また、脚があっという間に引きちぎられたように見える。脚に病気の痕跡はなく、明らかな病理学的特徴もなく、噛み跡や欠損した部分など、脚を食べ荒らされた痕跡もない」
「つまり、この恐竜はほとんど即死したのだと考えるのが妥当だろう」

大問題となるのは、この恐竜が本当に小惑星衝突の日に、その激変の影響を受けて死んでしまったのかどうかだ。タニスの研究チームは、発掘された堆積物中の脚の位置から、その可能性が非常に高いとみている。
もし実際にそうだとすれば、これは大変な発見だ。
しかし、英エディンバラ大学のスティーヴ・ブルサティ教授は、この考えには懐疑的だという。今のところは。
BBCの外部コンサルタントでもあるブルサティ教授は、この発見がもっと査読された論文で論証されるべきだと指摘。また、きわめて特殊な専門性を持つ古生物学者が現場に入り、独立した評価をすることを望んでいる。
ブルサティ教授によれば、例えば衝突前に死んでいた生物が当日の衝撃によって掘り起こされ、再び埋まったために、同時期に死んだように見えている可能性もあるという。
「エラの中に粒子があった魚、これは確実に小惑星のしるしだ。しかし、他の主張については、まだ陪審員に提示されていない多くの状況証拠があるはずだと思う」
「一部の発見に関して言えば、恐竜たちが衝突当日に死んだのか、それとも数年前だったのか、そもそもそれは大事なことなのだろうか。翼竜の卵の中に翼竜の赤ちゃんがいる化石など、北アメリカでは他に例がない。何もかもが小惑星に関連している必要はない」


翼竜の卵が特別だというのは、疑う余地がない。
現代のX線技術では、卵の殻の化学的性質や特性を調べられる。翼竜の卵の殻は固いというより革のような状態だった可能性があることから、翼竜の母親が、カメのように砂や堆積物に卵を埋めていたことも示唆されている。
また、X線トモグラフィー(断層影像法)を使えば、翼竜のひなの骨をほぼ抽出し、それを印刷して、ひながどのような姿をしていたかを復元することもできる。デパルマ氏はすでに、これを実行した。
この翼竜の赤ちゃんは、おそらくアズダルコ科の一種であると考えられている。アズダルコ科の翼は、成長すると全長10メートルにもなる。
デパルマ氏は先に、アメリカ航空宇宙局(NASA)のゴダード宇宙飛行センターで、タニスの発掘に関する特別講演を行った。5月にはマニング教授と共に、5月に開催される欧州地球科学連合総会で、最新のデータを発表する予定だ。
「Dinosaurs: The Final Day with Sir David Attenborough」は、BBC Oneで4月15日に放送予定(イギリスのみ)。アメリカPBSネットワークの科学シリーズ「Nova」でも、年内に放送予定







