「レイプだとは知らなかった」 合意なく避妊具外すステルシング、被害者の体験

レイチェル・ストーンハウス、ニュースビート記者

Couple with condom

画像提供, Getty Images

イギリス在住のジェマさん(仮名)は2年前、ある男性と性行為をした際、知らない間にコンドームを外されていた。

イギリスでは、性行為中に相手の合意のないまま避妊具を外す「ステルシング」は、法律上レイプに相当する。しかし、実際に起訴が成功したのはたった1回、2019年の事件だけだ。

ジェマさんはBBCラジオ番組「ニュースビート」の取材で、「自分に起きるまで、ステルシングについて何も知らなかった」と話す。

「彼がしたことに気づいたのは行為が終わってからで、とても混乱したし怖くなった」

「モーニングアフターピルを飲んだけれど、翌月に生理が来なかったので、妊娠検査を受けた」

検査の結果、妊娠が判明した。ジェマさんは衝撃を受けた。

「中絶なんてたった50ポンドだと言われた」

「本当に腹が立ったし、動揺して、混乱した。大ごとだと思ってこの男性にメッセージを送ったけれど、中絶なんてたったの50ポンド(約7500円)だと言われた。でも妊娠は、私の人生を一変させてしまった」

「最終的には中絶を選んだけれど、そう決めるのは本当に大変だった。赤ちゃんは欲しかったけど、正しい状況じゃないと分かっていたので、悩みまくってしまった」

ジェマさんは警察に届け出たものの、この事案はそれ以上進展しなかった。

「これはレイプだと気づいて、妊娠したから警察に行ったのに」

警察はこの男性と話をしたものの、「私の言い分を彼が否定した」ため、証拠不十分となったという。

mid shot picture of Arabella - the main character in I May Destroy You
画像説明, BBCのテレビドラマ「I May Destroy You(私はあなたを滅ぼすかもしれない)」はステルシングの問題を取り上げ、話題となった

ステルシングの問題は昨年、BBCのテレビドラマ「I May Destroy You(私はあなたを滅ぼすかもしれない)」の放映後、イギリスで大きな話題となった。

このドラマの第4話では、主人公の1人のアラベラが男性と性行為をした際、この男性が彼女に気づかれないようにコンドームを外すエピソードが描かれた。多くの女性同様、アラベラもポッドキャストでこの話題を耳にするまで、それがレイプだとは知らなかった。

「これは明確なレイプ」

性暴力被害者支援の慈善団体「レイプ・クライシス」のケイティー・ラッセル氏は、このところステルシング被害を「頻繁に」耳にするようになったと話す。

「最近頻繁に起きるようになったのか、みんな注意して、話題にするようになったから耳にする機会が増えたのか、どちらなのか判断しづらい」

ラッセル氏はまた、「ステルシング」という言葉による弊害もあると語った。

「これは比較的新しい言葉で、意味を知っている人には使いやすいが、そうでない場合は誤解を生むこともある」

「実際にはこれは明確なレイプなので、(ステルシングという言葉によって)事態が矮小化されているということもある」

「ステルシングとは、合意のないまま勝手に避妊具を取り外すことだと、はっきり明確にする必要がある。ちょっとしたことでも、いたずらでもないし、出来心だからと許されることでもない。相手の人生や健康そのものに有害な影響を与えかもしれない、深刻なことだ」

ステルシングは強姦事件として記録される。そのため、レイプ・クライシスからも警察からも、実際の発生件数のデータは得られなかった。

イギリスの全国警察本部長評議会(NPCC)の報道官は、「我々は常に、こうした出来事を通報あるいは交番に届け出るよう呼び掛けている」と述べた。

Edem Barbara Ntumy

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画像説明, エデム・バーバラ・ヌツミさんはステルシング被害にあったものの、捜査の長期化を恐れて通報しなかったという

エデム・バーバラ・ヌツミさんも、ステルシング被害者の1人だ。

ニュースビートの取材でエデムさんは、「カジュアルにつきあっている相手がいて、その人が、セックスの最中に私の許可なくコンドームを外した。その時に問い詰めたけど、そんなことしていないと否定して、激しく反発してきた。なので、それ以上その人と話すのはやめた」と話した。

「通報しても自分が望む結果にはならないと思ったから、それもしなかった」

「レイプ事件の捜査が長引くことをよく知っている。端末をすべて押収されるし、解決までに時間がかかるし、そういうことには関わりたくなかった」

イギリスでは過去5年で、レイプの通報件数が増加した一方、裁判に至る件数は半分以下に減っている。

英検察庁はニュースビートに対する声明で、「我々はぜひともレイプ事件の起訴件数を増やすつもりでいる。正義を勝ち取る被害者はあまりにも少なく、現状を変えるために努力している」と述べた。

「折り合いをつけた」

エデムさんは現在、性の健康に関わる仕事に就いており、刑事司法制度とは別に、ステルシング事件を記録する仕組みが望ましいと考えている。

「ステルシングはたくさん起きていると思うし、被害者が必ずしも警察に関与させずに被害を報告できる方法があるべきだと思う」

「私は自分の経験に折り合いをつけた。恋愛関係にある相手とのことではなかったから、性感染症にかかっていないかどうかが、当時の自分には一番大事だった」

「気軽な関係で、複数の人とセックスをしている時こそ、お互いの境界線を尊重して、安全を確保するのがとても重要。だからステルシングをされて頭にきた」

Kate Parker

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画像説明, 弁護士のケイト・パーカー氏は、性交渉の合意こそ性教育の基礎だと語る

弁護士のケイト・パーカー氏は、若者に性行為の同意について教える「スクールズ・コンセント・プロジェクト(学校同意計画)」の会長を務めている。パーカー氏によると、ステルシングが法律上は強姦に当たると知ると、多くの人はとても驚くのだという。

「当事者がコンドームを使ったセックスにのみはっきり同意した場合、それを外すのは合意から外れている。だから犯罪になる」

パーカー氏は、ステルシングをめぐる議論は、互いの境界線を尊重することについての幅広い対話にもつながると指摘。セックスにおける同意について、学校の教育カリキュラムに含めるべきだと思うと話した。

「性行為や恋愛関係に関する教育はすべての学校で行われているものの、同意については選択制になっており、全く教えない学校もある」

「しかし、同意こそ性教育の基礎だというのが私の見解だ。同意を教えなければ、若者に正しい教育をしたとは言えないと思う」

「ステルシングは人の一生を壊す」

ジェマさんにとって、ステルシングで受けた影響は非常につらいものだった。彼女もまた、ステルシングに関する教育を増やしてほしいと考えている。

「事件のあと、家にいるとそこで起きたことを思い出してしまったので、引っ越しをしなくてはならなかったし、乗り越えるためにセラピーも必要だった」

「ステルシングは人の一生を壊しかねないので、この問題について教育する必要がある」