【米大統領選2020】 両候補の主張をファクトチェック 第1回大統領候補討論会

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11月3日の米大統領選に向けた初の候補同士のテレビ討論会が29日夜、オハイオ州クリーヴランドで行われた。3回予定されている討論会の初回は、ドナルド・トランプ米大統領とジョー・バイデン前副大統領が90分にわたり、新型コロナウイルスや経済、法と秩序、人種問題などについて、激しい応酬を重ねた。
BBCリアリティー・チェック・チームが、両候補の発言の一部について、ファクトチェックを行った。
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トランプ氏: 「我々はアメリカ史上最高の経済を築いた」
判定: いいえ。米経済が今より好調だったことは過去にもある。
トランプ氏は、新型コロナウイルスの感染拡大以前のアメリカ経済について「アメリカ史上最高の経済を築いた」と述べた。
さらに、歴史的な経済成長、記録的に低い失業率を実現し、何百万人ものアメリカ人を貧困から脱出させたと主張した。
確かに、新型ウイルスのパンデミック以前、アメリカ経済は好調だった。それは、オバマ政権から続いていた傾向だ。ただし、今よりはるかに力強かった時期はほかにある。


バイデン氏:「この国の人口は世界の4%だが、死者は20%だ」
判定:おおむね正しい。ただし、新型コロナウイルスによる死者数を人口比で見ると、アメリカより被害の大きい国がいくつかある。
バイデン氏は、トランプ氏のパンデミック対応を批判し、「この国の人口は世界の4%だが、死者は20%だ」と述べた。
数字を見るとそれはおおむね正しい。アメリカの人口は約3億2800万人で、世界人口77億人の4%超だ。

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米ジョンズ・ホプキンス大学の集計(日本時間30日午後3時現在)によると、新型ウイルスによるアメリカの死者は20万5966人。世界全体の死者数は100万6493人。
この集計では、アメリカの死者数は世界の約20%に相当する。ただし、国によって感染者や死者の集計方法はかなり異なる。
29日現在で人口10万人あたりの死者数がアメリカよりも多いのは、多い順からペルー、ベルギー、ボリビア、ブラジル、チリ、スペイン、エクアドル、イギリスとなっている。

トランプ氏: 郵便投票が増えると「見たことのないような不正」につながる
判定: 大規模な不正が起きる証拠は複数の研究で見つかっていない。ただし、個別の小規模な不正は過去にあった。
トランプ氏は郵便投票が増えれば、「見たことのないような不正」が起きると述べた。
新型ウイルスのパンデミックのため、多くの有権者は混雑する投票所を避けて投票用紙を郵送するとみられている。
大統領は繰り返し、これは大規模な不正につながると警告している。
ノースカロライナ州やニュージャージー州で最近あった事例を含め、過去に個別の小規模な不正はあった。

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米司法省は今月、ペンシルヴェニア州で「軍関係者9人の投票用紙が廃棄」されており、そのうち7人分が「ドナルド・トランプ大統領候補に入れたものだった」と発表している。
ただし、こうした個別の事案はあるものの、広範囲で大規模な不正の証拠は複数の調査でも得られていない。
ニューヨーク大学のブレナン正義研究所による2017年調査では、アメリカで起きる不正投票の割合は0.00004%から0.0009%だという。

バイデン氏: 「(アメリカでは)1億人に既往症がある」
判定: これについて確証は得られていない。
国民医療保険のないアメリカでは、民間医療保険に加入する際、持病や既往症があると加入できない場合がある。
この点をめぐり両候補は、アメリカで既往症のある人数について言い争った。
バイデン氏は、1億人に既往症があると述べたものの、トランプ氏はその数字は「まったくの間違いだ」と反論した。
では実際はどうなのか。確かな答えはない。
米保健福祉省によると、高齢者ではない国民のうち、5000万人から1億2900万人が何らかの持病を患っている。
推定人数は組織によって異なる。超党派の政策団体「アメリカ進歩センター」は、65歳未満の1億3500万人に持病があるとみている。

バイデン氏: パンデミックの前にアメリカの「製造業はひどく落ち込んだ」
判定: 経済統計によるとそれは正しくない。
バイデン氏は、パンデミック以前からアメリカの製造業はすでにひどく落ち込んでいたと述べた。
確かにパンデミックはアメリカの製造業に打撃を与えた。今年8月の時点で、国内製造業の雇用は2017年のトランプ政権発足時より23万7000人分、減少していた。

しかし、パンデミックが起きるまで、トランプ政権は3年間で50万人分近い製造業の雇用を増やしていた。

トランプ氏:「ワクチンまであと数週間だ」
判定:認可済みワクチンが10月末までに実用可能になっている可能性は「とても、とても低い」と、米ワクチン開発計画の科学主任は言う。
トランプ氏は、アメリカで新型コロナウイルスのワクチンが使えるようになるまでわずか「数週間」だと述べた。しかし、米政府のワクチン開発計画の科学主任、モンセフ・スラウイ博士は、10月末までに認可済みワクチンが準備できる可能性はごくわずかでしかないと発言している。
一方で、アンソニー・ファウチ米国立アレルギー・感染症研究所所長は、安全で効果的なワクチンをアメリカが開発できたか分かるのは今年11月か12月だと予測している。
ファウチ博士は今月、上院公聴会で来年4月までにはすべてのアメリカ人が接種できるだけのワクチンが用意できるかもしれないと証言した。

バイデン氏: 「トランプのおかげで薬代が下がった人などいない」
判定: 処方薬の平均月額は2018年8月から1年間でわずかに下がり、また上がり始めた。
バイデン氏は、トランプ大統領のおかげで「薬代が下がった人などいない」と述べた。
しかし、アメリカの日用品価格を調べる労働省の消費者価格指数(CPI)によると、処方薬の平均月額は2019年8月の時点で前年同期比0.3%安くなっていた。

12カ月間でアメリカの薬価が下がったのは、1973年以来初めてだった。次の1年間で平均薬価は1.5%上昇したものの、トランプ政権での平均の上昇率はオバマ政権よりも低い。
ただしCPIは、大勢の患者が使用し価格が安い薬も含むため、薬価を計る方法として必ずしも最も信頼できるものではない。新薬や、処方されることの少ない、そのため高価で価格上昇も大きい薬は、CPIに含まれないことが多い。











